Red Hat Summit 2026 のお客様との座談会から得られた洞察
航空会社、公益事業、金融サービス、高等教育機関、政府機関など、さまざまな業界のプラットフォームエンジニアリングおよび運用部門のリーダーが Red Hat Summit 2026 に集まり、エージェント型 AI について率直な対話を行いました。Red Hat は実際に何が成果を上げているのか、リスクはどこにあるのか、そして現在、各チームがどのように価値を見出しているのかを明確にしたいと願っていました。
プラットフォーム管理から AI コラボレーションへ
座談会でのすべての会話の根底にあるのは、次のような質問です。プラットフォームが、単に管理する対象ではなく、チームと共に考える存在になったとき、それはどのような姿になるのでしょうか?
各チームは、2年前と同じ人員体制で、複雑で複数のクラスタからなる環境を運用しています。インシデントの診断、アラートの相関分析、修復の実行といった手作業によって、本来は中核となる開発に充てるべきリソースを消費しています。ある参加者は、その目標を率直にこう述べました。人員を 1 人も増やさずに、管理対象のクラスタ数を 2 倍にするという目標を率直に語りました。
必要とされているのは効率化だけではありません。真の課題は、日常業務が自動的に処理されるようになったとき、優秀な人材はどのような業務に取り組むべきか、ということです。Red Hat の座談会に参加したお客様は、すでにその一端を垣間見始めています。あるチームのエージェントは、既存のログやアラートでは検知できない、15 分ごとに密かにクラッシュするストレージドライバーを検出しました。そのエージェントは、詳細な診断サマリーとともに問題を報告し、担当者が次のステップを承認するまで、自らをブロック状態にしました。この対応により、解決が早まることはもちろんですが、プラットフォームとそれを運用する人々との関係も根本的に変化することになります。
IT の枠を超えた驚くべき投資対効果 (ROI)
最も説得力のある知見のいくつかは、参加者が、従来のインフラ分野以外で問題を解決するAI エージェントについて説明した際に得られました。
ある大学のチームは、学生向け財務サービス部門が連邦政府の助成金の受給資格がありながら既存のデータベース検索で見落とされていた学生を特定するのを支援できるようにするためにエージェントを導入しました。システムはすぐに 100 人以上の学生と、60,000 - 70,000 ドルの未請求の連邦助成金を特定しました。数週間前までは、このチームもこのような活用事例が可能だとは気づいていませんでした。
別の例として、ある政府機関は、市民が複雑な法的規制を理解し、出産、起業、転居などの主要な人生の節目に基づいて適切な共サービスを自動的に調整できるよう支援するエージェント型インターフェースを提供するという長期的なビジョンを説明しました。これにより、市民は数十もの分断されたポータルではなく、単一のインテリジェントなインターフェースを利用できるようになります。
最も注目を集めている組織は、ユースケースを拡大し、「業務向け AI」が意味するものに対する既成概念を広げている組織です。
人間による監視は不可欠
座談会での合意事項は明確でした。完全な自律性は選択肢ではありません。AI は非決定的であるため、核心となる課題はエージェントを信頼するかどうかではなく、人間が重要なアクションの制御を維持しつつ、エージェントが日常的なタスクを安全に加速できるよう、どのようにワークフローを構築するかという点にあります。 エージェント型ソリューションには、プラットフォームにネイティブに組み込まれた、明確で標準的なワークフローガバナンのスモデルが必要です。
最も共感を得たモデルは、エージェントをサイト信頼性エンジニア (SRE) のように扱うというものでした。エージェントはシステムを分析し、実行計画を策定し、調査結果と提案されたアクションをまとめたチケットを作成します。エンジニアがこれを審査し、承認して、エージェントは明示的に承認された内容のみを実行します。
あるチームは、AI スーパーバイザーエージェントが一連の特化型サブエージェントを監視する、監督型エージェントのアーキテクチャのテストから得られた教訓を共有しました。それによると、3 つのサブエージェントが連携して、本来は拒否されるべきアクションを承認するようスーパーバイザー AI を仕向けたという事例が紹介されました チームは被害が発生する前にこれを発見しましたが、そこから得られた教訓は明確でした。つまり、人間の介入なしに、AI が他の AI を信頼できる方法で統制することはできないということです。
この事例は、組織が導入初日からすべての環境に展開できる、「ガードレールサービス」や「Approval-as-a-Service」といった、コード化可能で使いやすいガバナンス機能に対する製品ニーズを示唆しています。
設計段階からの安全性
運用チームにとっての大きな焦点は、自律型ツールが誤りを犯した際の影響を封じ込めることです。リスクは、エージェントが破壊的なコマンド (rm -rf など) を試行することから、診断エージェントがリソース負荷の高いコマンドを繰り返し実行し、修正対象であるはずのクラスタを誤ってクラッシュさせることまで多岐にわたります。
これらのリスクを軽減するため、チームは厳格なリソース制限とすべてのアクションに対する完全な監査ログを備えたコンテナ環境でサンドボックスエージェントを使用しています。エージェントを、スキーマ検証済みのドキュメントストアや、許容される入力を厳密に制限するその他のシステムなどの決定論的なデータレイヤーと組み合わせることも、エージェントの動作を安定させるのに非常に効果的であることが証明されています。
障壁:賛同を得ること、監査証跡、および ROI
導入を遅らせている障害は、技術的なものよりも組織的なものが大部分を占めています。
社内の賛同を得ることは困難です。とくに、過去に過剰な期待を抱かせた自動化の取り組みに関わったチームにとってはなおさらです。信頼を築くためには詳細な監査証跡が不可欠であり (一部の地域では法的義務となっています)、組織はエージェントが何を行ったか、その根拠、および誰がアクションを承認したかを規制当局やリーダーシップに正確に示せなければなりません。その証拠がなければ、ガバナンスチームは原則としてこのテクノロジーを拒否することになります。
明確な ROI を実証することも同様に不可欠です。座談会に参加したすべてのチームが、予算を確保する前に価値を証明しなければならないというプレッシャーについて指摘しました。最も動きの迅速なチームは、小規模で可視性の高い概念実証 (PoC) から開始し、結果を文書化し、その証拠を利用してさらなる資金を獲得しています。学生への財務援助における 60,000 - 70,000 ドルの成果は、アラートノイズの削減と比べると、そのどちらも価値をもたらす場合でも、はるかに説得力のある予算交渉の材料となります。
主な調査結果
この座談会に参加した組織は、エージェント型 AI 導入のさまざまな段階にありますが、共通の課題に直面しています。最も進歩しているチームに見られる、いくつかの際立ったプラクティスは以下の通りです。
- 可観測性と自己修復から始める:ここは運用上の難点が最も大きく、価値への道筋が最も明確であり、スコープが限定されているためプロジェクトを管理しやすくなります。
- Day 1 から人による監視を考慮して設計する:デプロイ後にガバナンスを後付けすることはできません。承認ワークフロー、ブロック状態、監査証跡をアーキテクチャに直接組み込みます。
- エージェントをサンドボックス化する:コンテナ化された実行環境は必須です。これらはエージェントが安全に動作するために必要なガードレールを提供します。
- AI インフラストラクチャのコストを真剣に検討する:複数のチームが、GPU やクラウド推論のコストが予想以上に上昇し、場合によっては生み出される価値を上回っている状況について説明しました。 Red Hat OpenShift AI はまさにこの課題のために設計されており、企業がハイブリッド・インフラストラクチャ全体で GPU 使用率を最適化できるよう支援します。これにより、大規模な AI 運用のコストが拡張を阻む理由になることはありません。クラウド推論の費用とオンプレミスの GPU ハードウェアの両方が多額の設備投資を伴う環境では、その投資をより有効に活用できるプラットフォームを持つことが極めて重要です。
- 可視性の高いビジネス価値に焦点を当てる:勢いに乗っているチームは、プラットフォームエンジニアリングチームだけでなく、組織全体に価値をもたらすユースケースを見つけています。
エージェント時代のための Red Hat OpenShift
エンタープライズソフトウェアのあらゆる大きな波において、複雑な分散システムを大規模に管理可能にする基盤レイヤーが必要とされてきました。クライアント・サーバー時代には、JBoss のようなミドルウェアが主流でした。クラウドネイティブ時代においては、Kubernetes が主流となりました。エージェント型 AI 時代において、その役割を担うのが Red Hat OpenShift と Red Hat OpenShift AI です。
この座談会に参加したお客様は、マルチクラスタ環境で動作し、厳格なガバナンス境界内で意思決定を実行し、エンタープライズワークフローと統合し、ソブリンまたはハイブリッドインフラストラクチャ上で稼働する自律型エージェントを構築しています。これは、その場しのぎのツールでは確実に構築することはできません。企業がすでに信頼を寄せている、セキュリティを重視した一貫したオープンソース基盤が必要です。
OpenShift は単なるコンテナのオーケストレーターではありません。OpenShift は、エージェントフレームワーク、MCP サーバー、エージェントスキルライブラリ、ヒューマンインザループ (human-in-the-loop) ワークフロー、および GPU ワークロードを、企業がマルチクラスタ環境全体でデプロイ、管理、拡張できる基盤へと統合するプラットフォームです。
そのセキュリティ重視の基盤を確立するには、ポリシーと権限の制御、ID およびアクセス管理、アプリケーションとツールのガバナンス、ランタイムの安全性と監査、実行のサンドボックス化、データとコンテンツのガバナンス、ヒューマンインザループのライフサイクル管理といった、エージェント型ガバナンスのフルスタックに対応する必要があります。重要なのは、ID 確認と認証を後回しにできないことです。すべてのエージェントのアクションは認証され、特定の認可されたエンティティに帰属する必要があります。
OpenShift は AgentOps を通じてこれらの要件を満たします。AgentOps は、あらゆるモデル、アクセラレーター、クラウドでエージェントを運用するための、Red Hat AI によるフレームワークに依存しないアプローチであり、ガバナンスとセキュリティの各レイヤーに対応するガードレールが組み込まれています。これらは後から追加するオプション機能ではなく、エンタープライズ規模のエージェント型 AI を可能にする基盤そのものです。最初からこれを理解して対処する組織は、より迅速に行動し、より効果的に管理し、基盤構築にかける時間を短縮できるため、自信を持ってエージェント型 AI の未来へと進むことができます。
Red Hat OpenShift がエージェント型 AI の未来にどのように取り組んでいるかを確認する:
リソース
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執筆者紹介
Jaleh Reeves is a Senior Product Marketing Manager at Red Hat, focused on the marketing and positioning of Red Hat OpenShift self-managed editions.
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