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リモートワークは Red Hat にとって新しいものではありません分散チームの導入歴は 20 年を超え、社員の 25% がリモートで働いています。言うまでもありませんが、オープンソース・コミュニティとの作業には、その性質上、E メール、IRC、Slack、その他のツールでしかやり取りしたことのない Red Hat 外部の人々と、初日からオンラインでコラボレーションを行う必要があります。Red Hat は、この長年の経験から、リモートコラボレーションとリーダーシップについて、たくさんのことを学びました。しかし、COVID-19 による危機を迎えて、Red Hat はリモートワークがしやすい分散型の企業から完全なリモート企業という、新たな段階へと進化しました。ここでは、オープンソースの精神に則り、Red Hat が得た知識や、今も取り組み中の課題をご紹介します。

つながる方法を変革する

私が仕事をする中で大切にしてきたことの 1 つは、人と 1 対 1 で話すとき、その人を 1 人の人間として見て、理解することです。私は「聞きながら話す」タイプで、一緒に働く人々からフィードバックを得るようにしています。すべての会議をいきなりオンラインに変更することは難題で、カメラを通じて関係や信頼を構築するのは困難です。多くの人々が馴染んでいたようなやり取りはできなくなり、コミュニケーションの時間も短くなるでしょう。

多くのリーダーにとって、新しいコミュニケーション・スタイルを身に付けるには、本腰を入れて取り組まなくてはならないでしょう。つまり、よくある「ノートパソコンのカメラで下から顔を写す」方法ではなく、時間をかけて快適な空間とビデオを準備する必要があり、人とつながることを意図して、同僚と同じ机を囲んで目を見て会話する状態にできるだけ近いビデオ会議を実現する必要があるということです。今、このような人とのつながりがこれまで以上に求められています。

1 人の人間として考える

ワークライフバランスを維持することは必要ですが、仕事と家庭生活は両方とも何かしら不便なやり方を強いられていると認めざるをえません。現在は普通の状況ではなく、通常の生産性とそれだけに集中できることを期待するのは理にかなっていません。Scott Berinat 氏による集団が共有する悲しみについての Harvard Business Review の記事はとりわけ示唆に富んでおり、リーダーは同僚への思いやりの気持ちを高めるための良いヒントを得られます。

リーダーは、仕事上の役割だけでなく、その人を一人の人間として考えなければならないと私は信じています。チームメンバーへの敬意を伝え、「出勤」できても消し去れない非常なストレスを抱えていることを理解することが重要です。

隔離は厳しいもので孤立する人もあり、終わりははっきりとは見えていません。グループとして個人として、できる限りチームメンバーと連絡をとってください。これはリモートワーカーにとっては普段から行うことが得策ですが、特に今のこの状況では大切なことです。今はいつもより支え合う気持ちがありがたく感じられます。会社にとって社員は仕事だけではなく人として大切だと理解してもらうことが重要です。

Red Hat のリーダーの中には、仮想オフィスアワーを設けて、チームメンバーが連絡したり、問題点を提起しやすいようにしている者もいます。オンライン「飲み会」を開催して、息抜きを楽しんでいるチームもあります。これは、チームが状況に適応し、同僚とのつながりを失わないようにチームをサポートしている Red Hat の取り組みの例です。

コミュニケーションを促進する

通常オフィス勤務をしているチームは、分散ワークに切り替えたときにコミュニケーションとコラボレーションを効果的に行うのに苦労するかもしれません。特に現在直面しているような、段階的に移行するための時間がほとんどない場合にその傾向があります。

リーダーができる支援として、コミュニケーションについてその期待値を設定し、仕組みを構築することができます。これは、チームがいつどのようにコミュニケーションを取るかを正確に定めるものではありません。支援するための 1 つの方法は、チームと会話することを促進し、「公式」のコミュニケーション手段と実践方法を定義して、チームメンバーや組織内のその他のグループが効果的にコミュニケーションできるようにすることです。

具体的には、チーム全体で特定のチャットシステムを使う、定期的なミーティングや状況報告を E メールで行うなど、期待値を設定します。これには職場の文化や業務が大きく影響します。

細部はリーダーやチームが決めればよいことですが、重要なことは、早い段階で着手して仕組みを構築し、必要に応じて調整することです。1 対 1 またはチームのミーティングを週に 1 回開催しているなら、必要に応じて毎日または週に数回に増やすとよいでしょう。あるいは、会社のチャットシステムでオンラインの時間を増やして、手早く打ち解けたコミュニケーションができるようにするのもよいでしょう。人々が不確かな状況にあるとき、コミュニケーションの明確なフレームワークを定義して、より安定した状態を作るように広く手を尽くすと、人々は安心し、落ち着けるようになります。

Red Hat では、リモート・コミュニケーションのための土台はほとんど固められています。Red Hat には、別のオフィスにいるメンバーで構成されたチームが多数あります。大勢のリモートワーカーを抱えるチームもあります。また、開発チームは世界中のオープンソース・コントリビューターとリモートでコラボレーションしています。

それでも、すべての Red Hat 社員を在宅勤務にし、Red Hat Summit をバーチャルイベントとして再キャストするうえで、Red Hat のリーダーたちは仕事に必要なすべての情報をチームに伝えることに努力を強いられています。

そのために行ったことの 1 つは、普段からリモートで働いている Red Hat 社員に、リモートワークのヒントを紹介してもらうことでした。多くのすばらしい提案が memo-list (Red Hat 社員に以前から使われているディスカッションリスト) に寄せられ、優れたヒントとアイデアを収集できました。

不確実な状況を切り抜ける

私たちは皆、不確実な状況で働かなくてはならず、すべての答えを持っているわけではありません。新しくリモートワーカーになった従業員からの急増する要求に必死で対応している組織があります。業界によっては、移動制限やソーシャル・ディスタンシングの影響で、ほぼ完全に事業が停止しています。今は、通常通り営業している企業はほとんどありません。

リーダーになるとは、目標と戦略を明確にチームに伝えることですが、人との距離が遠のき、組織に影響する要因が多すぎる今、この課題はますます難しくなっています。ほぼすべての計画がこの状況で影響を受け、終わりは見えません。また、この状況を切り抜けた後がどうなっているかも、はっきりとはわかりません。リーダーができることは、今手元にある最適な情報で行動し、今後復帰したときに備えておくことだけです。

リーダーには、不確実性を受け入れること、そしてチームも不確実性を受け入れられるようにサポートする能力が必要です。持ちこたえるための目的と目標をチームと設定し、必要に応じて計画と意思決定を調節し、更新できるようにしておきます。継続性を維持するために目的と目標は変更されないが、意思決定と計画は調節可能であり、チームとして新しい計画にすばやく切り替える能力が重要であることを、チームに理解させます。

ワークライフバランスを強調する

リーダーは、健全なワークライフバランスの模範をチームに示す責任があります。多くの人にとって、在宅で働くとなると仕事と個人の生活の切り替えが難しくなります。E メールをもう 1 本、仕事をもう 1 件片付けられると思っているうちに、気がつくと夜の 9 時で、家族には何をしていたのかと思われるはめになります。

することだけでなく、しないことを取り決めることも有益です。たとえば、勤務時間外に連絡するのは避けます (E メールも含む)。リーダーがいつも午後 10 時に E メールを送信しているなら、スタッフは自分も 10 時まで働くことが期待されていると思うかもしれません。子供の世話などの理由で仕事の時間が夜間になるなら、通常の勤務時間に送信するようにメールを設定し、「1 日中働いて欲しいわけではない」というメッセージを明確に伝えてください。

オフィスで働く場合と同様に、日中に休憩を取るように勧めてください。デスクで昼食を取らないようにということも助言します。可能なら、天気の良い日は外に出て外の空気を吸いましょう。

週に 2~3 日、または毎日リモートで働くことに慣れている人はたくさんいますが、今は状況が違います。ビデオ会議に子供が顔を出したり、家族の理由でスケジュール調整が必要になったりするのは、何の支障もなく、むしろ喜んで受け入れられる点をチームに理解させます。

成果を重視する

ほとんどの組織にとって、すべきことに対して常に時間が足りていません。ワークライフバランスの 1 つの意義は、果たすべき責任 (費やした時間ではなく) をチームに理解させ、どの程度が「十分」であるか知ることにあります。

エンジニアの場合、マイルストーンや納品物を明確にすることがこれに該当します。やろうと思えば取りかかれる機能追加やバグ対応は常にあります。仕事が順調に進んでいるかどうかをチームが把握できるようにしてください。コンピュータから離れてリフレッシュする時間を取れるということは、チームが良い仕事をしているということだと知らせてください。

オフィスにいた時間、コンピュータを使った時間、電話した時間が重要なのではありません。仕事で成し遂げた結果が重要なのです。リーダーにとって、優先度の設定がこれまで以上に重要になります。何をする必要があるか、何をすべきか、何を後回しにできるかを伝えます。

これは、細かな To-Do リストを作って提供するということではありません。メンバーが自ら重点を置く作業を判断して優先付けできるように、チームに背景情報を伝える必要があるということです。

サポートするために存在する

リモートワークの経験の多寡を問わず、COVID-19 による危機に直面する組織のリーダーはコミュニケーションスキルを磨き、チームが重要な業務に集中できるようサポートすることが求められています。

何よりも、チームにサポートを提供し、チームが成功できるよう支援するために私たちリーダーがいるということを、毎日チームメンバーに知らせて欲しいのです。これはリーダーにとって最も大切な仕事で、顔を合わせていてもリモート環境でも同じです。


Stefanie をはじめとする Red Hat リーダーが忌憚なき意見を交わす、リモートリーダーシップについてのパネルディスカッション (4 月 22 日午後 2 時 (EDT) に開催) をご覧ください


執筆者紹介

Stefanie Chiras is Senior Vice President of Partner Ecosystem Success at Red Hat, leading Red Hat’s global partner ecosystem engagement, and plays a critical role in increasing the understanding of the value of Red Hat's product portfolio within the ecosystem, defining the strategy for partnering with Red Hat for customer success. 

Prior to joining Red Hat in 2018, Chiras served as Vice President of Offering Management at IBM Cognitive Systems. As part of the Cognitive Systems brand team, she led worldwide business for the systems and software portfolios, AIX, IBM i, Linux, and the cloud stack. She has extensive experience in both business and technology, including technical roles that range from silicon technology to system architecture.

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