2019. 6.20開催 @ベルサール汐留

Ansible Automates Tokyo 2019 イベントレポート

個人の枠を超えて、組織で実践する自動化にフォーカスしたイベント、Ansible Automates Tokyo 2019が2019年6月20日、ベルサール汐留(中央区)で開催された(主催:レッドハッ株式会社)。当日は、レッドハットから組織で取り組むための自動化の概念である「自動化2.0」の紹介があったほか、お客様事例やパートナー企業などのセッションを通じて、明日から始められる自動化のヒントを提供。350名を超える参加者の熱気につつまれ、数々のセッションが繰り広げられた。

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session 1

Ansibleによる自動化2.0の世界
〜1人からはじめてチームへ展開するためのプラクティス〜

中島 倫明
レッドハット株式会社
テクニカルセールス本部ソリューションアーキテクト
中島 倫明

Ansibleは「DXを支えるDevOpsの実現」「オートメーションによる働き方改革」「高コスト体質からの脱却」「セキュリティ・ガバナンスの強化」の4つの文脈で活用されている。国内の導入事例では、アプリケーションのリリース作業の90%の工数を削減したとの報告もあり、その効果は抜群だと中島は語る。このように大幅な効果を上げるために目指すべき状態として、「自動化2.0」を提唱した。

従来からITインフラにおいても自動化に取り組むユーザーは多いが、利用するツールがシステムや使う人によってばらばらになってしまっており、サイロ化を招いており、結果的に自動化が組織全体に浸透しなかった。一方で、Ansibeは、自動化のつくり方と実行方法の2段階で標準化を実現する。自動化の実行方法を標準化するキーワードとして「サービス化(機能化)」を進めることで、「自動化2.0」の世界を実現することができると語る。さらに、サービス化された「小さな機能を連結して大きな機能をつくり、効率化やプロセス改善を図るのが、『自動化2.0』の目指すところです」と自動化を組織全体で取り組むために重要なポイントを語った。

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session 2

Ansible TowerによるNW作業の自動化
SSL証明書更新の工数99%カット

長谷川 寛 氏・大沼 康之 氏
ソフトバンク株式会社
IT本部 ITインフラ統括部 IT基盤開発部 インフラ開発課
長谷川 寛 氏
IT本部 ITインフラ統括部 IT基盤部 データセンターネットワーク課
大沼 康之 氏

ソフトバンクは、社内ネットワークとサーバを設計・構築しているチームから2人が登壇。約3400店舗をつなぐ大規模システムは、種類も台数が多く存在する。「M&Aに伴い、業務、インフラ、システムも拡大するなかで、Half & Twice戦略で半分のコストで生産性を2倍に、つまり社員1人当たり4倍の生産性が必要となり、業務の自動化が避けられないこととなっていました」と長谷川寛氏は打ち明ける。いったん内製で自動化を進めたはいたが、多くの課題が残った。そこで検討したのがAnsibleである。12名のチーム全員が研修を受け、資格を取得し、実装準備を進めていった。

「Ansibleで何を自動化するか? 最初のスコープはサーバ証明書の更新作業となりました。Ansibleの実装が容易で、継続性もあり、工数削減効果が大きいと判断したためです。作業量が急増し、対策が急務だったことも大きい」と大沼康之氏は話す。自動化にあたっては、プロセスの標準化、構成管理情報との連携、適切な権限付与という3つのタスクを実施。手作業で0.5~2時間かかっていた作業が20~60秒に短縮され、想像以上の効果があった。今後はサーバ、ミドルウェアチームも活用しているAnsibleを統合し、インフラオーケストレーションの実現を目指すという。

session 3

令和に始めるオンプレのありかた
~簡単にインフラ自動化できる方法を公開~

八木 芳孝 氏
日本ヒューレット・パッカード株式会社
クラウドプラットフォーム統括本部 技術本部
八木 芳孝 氏

インフラ基盤の構築において何故、自動化が進まないのか。日本ヒューレット・パッカード(HPE)の八木芳孝氏は、その阻害要因として、「インフラエンジニアがコードを書けないこと」「インフラがYAMLを書けない、使ったことがないこと」「どこから自動化すればいいのかわからないこと」「システムがサイロ化して手に負えないこと」などを挙げ、これらの解決策として、HPEとレッドハットの協業パッケージ「あんしんAnsibleパック」を紹介した。

これはHPEのハイパー・コンバージド・インフラ(HCI)である「HPE SimpliVity」と「HPE Synergy」の2種 に Ansible Towerが事前セットアップされた状態で提供されるソリューションである。ここに追加して、トレーニングとワークショップ、サンプルPlaybookの提供を組み合わせたものを提供している。「HPE SimpliVity」、「HPE Synergy」いずれも従量課金サービスとして提供している。「平成の自動化は、自動化がサイロ化していて技術習得が大変でした。令和の自動化は、管理コンポーネントが少なく、シンプルに始められます」と八木氏は締めくくった。

session 4

Ansible Towerシステム導入のススメ
~通信業への導入実践から得た、自動化導入の提案・導入ポイント~

小西 智子 氏
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
情報通信第2本部 システム技術第2部
小西 智子 氏

「自動化の対象は、作業頻度が多いことや、作業難易度が低いこともそうですが、苦痛を感じる業務もぜひ自動化してほしい」。伊藤忠テクノソリューションズの小西智子氏はこう切り出した。通信キャリア向けシステム開発に携わる小西氏は、通信業界のシステムの課題を「早さ」「正確性・安全性」「膨大な設備」「多様性・柔軟性」の4つに大別。Ansible Towerがこれらを解決すると述べた。「Ansible Towerの最も優れた点は、他製品との親和性・連携です。単一製品ですべての要件を満たすのではなく、他製品との組み合わせで最適な自動化を実現します。Ansible Towerは自動化システムにおける重要な歯車です」と強調した。

また、自動化した後も課題は残り、「自動化する範囲を決めること」や「自動化した後のルールを決めること」が必要だと指摘。さらに「本当に自動化したかったことは何か?」を問いただし、「苦痛を感じている業務がないか探してほしい」と訴えた。「自動化後の課題は、実は全部チーム間のコミュニケーションの問題でもあります。企業間の枠を超えて、我々と一緒に自動化2.0に取り組みましょう」とエールを送った。

session 5

From One to Many
~個人から組織へのAnsible普及

ウォーカー・イアン 氏・永尾 唯 氏
株式会社JALインフォテック
ウォーカー・イアン 氏
永尾 唯 氏

AnsibleのPoCを終えて、実装フェーズに入ったJALインフォテック。個人での利用からいかに組織としての活用・普及に至ったのかを2人のスピーカーが披露した。「インフラを取り巻くさまざまな課題を解決するために、標準化、テンプレート化、自動化の3つの対応策を検討し、自動化についてはAnsible Towerを導入。2018年11月より本格自動化がスタートしています」。こう話すのはウォーカー・イアン氏。一方で、新たな課題も出てきた。エンジニアの知識不足や、コーディングルールの徹底、標準設計の見直しが必要になったことだ。

「すべての問題を解決するためには、エバンジェリスト集団の設立が必要と考えました。JALシステムの構築/維持管理作業の効率化を図るとともに、品質を向上させることを理念とした技術者集団『ATLAS』を発足させました」と永尾唯氏は説明する。技術集団『ATLAS』では、教育面の拡充に取り組んでおり、レベルごとにペルソナを策定し、必要な教育を社内で提供している。また、マニュアル・教育資料(コーディング規約)の作成にも注力した。「個から組織へのAnsible普及には、トップに働きかけ、ボトムアップ/トップダウンの双方で推し進めることが重要。そして、技術チームの結成が近道です。教育を拡充し、何よりやってみることです」と参加者に促した。

session 6

【特別講演】一人から始める開発現場での越境
Can we change the world ?

市谷 聡啓 氏
ギルドワークス株式会社 代表
市谷 聡啓 氏

イベントの最後は、アジャイル開発に関する活動を行っている、ギルドワークス代表の市谷聡啓氏が登壇し、著書『カイゼン・ジャーニー』の内容を題材に特別講演を行った。「カイゼンに立ちふさがる最大の障壁は、どうやって周りを巻き込むのかという問題です」と市谷氏。わかりやすく、目につく重大な問題は誰でも気づけるが、根底から考え直す問題には、しかるべき視座が必要。ゆえに問題を扱う温度差が生じ、「気づいていない問題」は、たいてい“ぼっち”になる。「障壁を乗り越えるには、『越境』が必要で、『越境のサイクル』を段階的に回し、周りを巻き込む作戦を取りましょう」と市谷氏は言う。

越境とは、状況を変えるために前提や役割を越えていく行動のこと。「①ふみだす」「②あらわす」「③まきこむ」という3つのステップがある。「自分は何者なのか?」という問いかけから始めて、まずは一人で「ふみだす」。次に、ふみだしたことを他者がわかるように伝える(あらわす)。さらに、他社を「まきこむ」ために、わかりやすい「入口」を用意する。ここで自分以外の2人目を巻き込むことができれば、“ぼっち”にはならない。「2人は最少にして最強の単位。ここから2週目をふみだすことができれば、巻き込む範囲はチーム、組織へと広がっていくはずです」。市谷氏はこう結んだ。

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