「Red Hat アイデアソン 2021 Autumn Online」開催。
自由な発想から生まれた革新的なアイデアが導く
金融のオープンデータを活用したスマートなライフスタイル。

10月2日(土)、レッドハット主催による「Red Hat アイデアソン 2021 Autumn Online 金融×非金融編」が開催されました。様々な経歴や経験を持った参加者たちがオンライン上のスペースに集い、それぞれが提示したアイデアを自由闊達な議論を重ねながら練り上げていくアイデアソン。今回は、どのような独創的な“ビジネスの種”が誕生したのでしょうか。当日の模様をレポートします。

oVice Red Hat アイデアソン会場
オンライン上で初めて出会った参加者がチームを組んで、
アイデアをブラッシュアップ

 第2回目の開催となった今回のアイデアソンのテーマは「金融×非金融」、つまり、金融のオープンデータを使って実現するスマートなライフスタイルの創造です。近年、金融のオープンデータと全く異なる分野とを掛け合わせることで、より利便性の高いサービスが次々に創出されています。今回もさまざまな専門知識と経験、視点やアイデアを持った参加者たちがオンラインプラットフォーム「oVice」上に集い、チームを結成。コミュニケーションを重ねながら、それぞれのアイデアを深めていきました。

開かれた金融サービスで、新ビジネス創出のためのエコシステムが加速
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 はじめに、参加者がアイデア創出を促すためのヒントとなる、2つのインプットセッションが行われました。最初のセッションに登場したのは、デロイトトーマツコンサルティング合同会社 FSI Div.Digital Transformation & Innovation Directorの藤村聡氏です。「データを活用した新規ビジネス創出」と題された同氏のセッションでは、近年の金融業界におけるオープンデータ化の動向と、デジタル技術を活用した金融ビジネスの進化、そして他業種・業界の企業との連携について、海外の先進事例を交えながら解説されました。
藤村氏は、「近年、自前のチャネルで自前の商品・サービスを提供する“閉じた銀行”から、他社のチャネルや商品・サービスと連携する“オープンな銀行”、つまり、オープンバンキングへの変遷が起きています」と強調。他業種・業界の企業との連携によるエコシステムの推進や、金融機関自身がプラットフォーマーへと転じることで、新たなビジネス機会を獲得し、次なる成長を遂げていると訴えました。

金融×非金融による新ビジネス創出のキーワードは「顧客体験の強化」
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 2つ目のインプットセッションでは、レッドハット ソリューションアーキテクトの棚井俊が、先進的な金融機関による顧客体験の強化に向けた取り組みについて解説しました。
棚井は「これからの金融機関には、顧客一人一人のサービスが必要となる場面をとらえ、その時々に必要なサービスを提供することが求められています」と訴え、そのようなサービスを実現するためにはテクノロジーだけでなく、これまで金融機関がリーチできなかったセグメントに繋がっていくための、ビジネス上のエコシステムも重要と力説しました。

金融×非金融から連想されるキーワードに基づき、
参加者が自由にアイデアを創出
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 インプットセッションが終了し、いよいよアイデアソンの本番がスタート。オープニングラップアップに登場したレッドハットISVビジネス開発マネージャーの三島匡は「日本では、評価額が10億ドル以上の未上場のベンチャーであるユニコーン企業はまだまだ少ないのが現状です。ぜひ、明日のユニコーン企業を目指して、頭を柔らかくして楽しみながら、画期的なアイデアを生み出してください」と参加者に呼びかけ、最初のアイデア発散&チームビルディングが始まりました。
一般社団法人MA 理事の伴野智樹氏によるファシリティのもと、アイデアの発散からスタート。参加者はGoogleスプレッドシートに金融のオープンデータや、開放してほしい金融サービスに関するキーワードを書き出していきます。さらに他の参加者が、このキーワードから連想される、スマートライフに関するアイデアを加えていきます。そして、これらのキーワードとアイデアの掛け合わせからサービスのジャストアイデアを5つほど書き出した後、その中から最も議論したいアイデアを確定。このアイデアを基に参加者はチームを結成し、アイデアソンを進めていきます。

結成されたチームが、独創的なアイデアを発表

 そうして各チームは自己紹介やランチを挟みながらアイデアのブラッシュアップを行っていきます。メンバー同士の熱心な議論によるアイデアソンの後に中間発表が行われ、各チームの代表が約3分の持ち時間でアイデアを説明しました。
中間発表後、各チームによるアイデアソンが再開、さらに議論を重ねていくことで、アイデアを磨き上げていきました。そして最終的に出来上がったアイデアが発表資料にまとめられ、各チームによる成果発表が行われました。

5つのポイントに基づき、「最優秀賞」と「審査員賞」を選出

 成果発表後、審査員による審査会が行われました。審査の考慮ポイントは、「イノベーティブ」「社会へのインパクト」「実現性」「独自性」「有用性」の5つです。
はじめに審査員賞に選ばれたのが、チーム:お金の再配分による「最新技術で埋もれたアイデアを経済の活性化へ ~NFTを活用したドネーションプラットフォーム~」です。
審査員を務めた棚井は「日常生活で馴染みがあるようであまり意識されていない芸術に対してテクノロジーを用いてスポットライトを与える発想が面白く、また、芸術に関する活動が活性化することで、将来的な生活の豊かさにもつながるアイデアだと感じました」とコメントしました。

そして、最優秀賞に輝いたのが、チーム:スマートH2Nの「アクティブ節約ホーム ~金融×ユーティリティ×スマートフォーム~」です。

最優秀賞 スマートH2N「アクティブ節約ホーム ~金融×ユーティリティ×スマートフォーム~」

同じく審査員を務めた藤村氏は、「自宅をデバイスにする発想や、節約のナレッジをコミュニティ間で共有する発想がとてもユニークだと思いました」と評価しました。

受賞したチームのアイデアの概要は下記の通りです。

【最優秀賞/チーム名:スマートH2N】
テーマ:「アクティブ節約ホーム ~金融×ユーティリティ×スマートフォーム~」

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 光熱費の支出額データから自宅でのエネルギーの使い方の無駄をAIが判断、その度合いに応じて照明の照度や色を変えたり、スマートスピーカーによるアドバイスを行ったりすることで節約を促すスマートホームを実現するというアイデアです。既存の家計簿アプリのようなスマートフォンで通知したりWebで確認したりするのではなく、その住居に住んでいる人に対して、視覚や聴覚といったフィジカルな体験で節約の意識づけを可能としている点が大きな特長です。
また、地域の光熱費支払いのデータをオープンデータとして活用。支払いの平均データとの比較により節約のランク付けを行うことで、節約のモチベーション向上に繋げたり、上位者の節約ノウハウを教え合えるコミュニティ機能を備えたりしていることもユニークなポイントです。

【審査員賞/チーム名:お金の再配分】
テーマ:「最新技術で埋もれたアイデアを経済の活性化へ ~NFTを活用したドネーションプラットフォーム~」

埋もれた芸術性や技術、アイデアに対して、NFTの技術を活用し、お金をもっている企業、団体が献金することで経済を活性化していこうというアイデアです。芸術家や技術者に対する献金は、作者自身ではなく作者を支援する団体・企業に行われることがポイントで、さらにドネーションのためのプラットフォームを提供。口コミやSNSなどからデータを収集し、隠れた芸術家を見つける「トラッキング機能」や、スキルシェアリングによる芸術家の育成や気に入った作者に作品制作を依頼できる「マーケットプレイス機能」、NFTの技術を使った「献金機能」も提供します。デジタルの世界で展開することで物理的な制限にとらわれることなく世界中から参加ができること、NFTの利用により寄付金等の使いみちの履歴が分かることも特長です。

アイデアを実ビジネスへと育てていくため、
より厳しい視点を持つことに期待

 また、もう一人の審査員である、Coral Capital Partner & Chief Editorの西村賢氏は両チームに対して「サービスに対する市場の要求は厳しいものがあります。アイデアの発想に際しても、より厳しい視点をもってサービスレベルを上げていくことによって、利用者に対する説得力を高められるようになります」とアドバイスしました。

最後に日本マイクロソフト株式会社 エンタープライズ事業本部 通信メディア営業統括本部 インダストリーエグゼクティブの大友 太一朗氏による総評が語られました。大友氏は、「ビジネスモデルを考えるにあたっては、テクノロジーをベースにアイデアを検討するのではなく、“誰の困り事を解決するのか”という観点に常に立ち返ることが不可欠です。しっかりとユーザーの課題を捉えながら、どのような解決策を導いていくのか。そうした思考を磨いていくためにも、アイデアソンは有効な場となるものです」と訴えました。
さらに今回のアイデアソンの参加者からも、次のようなコメントが寄せられました。はじめにチーム:お金の再配分でリーダーを務めた近藤河生氏は、「普段、自分が考えてなかったようなアイデアがインタラクションにやり取りされ、とても刺激的な経験ができました」と話しました。同じく、チーム:スマートH2Nでリーダーを務めた橋爪香織氏も「他の人からの新しい情報や示唆を与えてもらえるアイデアソンはとても有意義なイベントです。『自分には人に披露できるようなアイデアがないから』と言って遠慮することなく、どんどん参加してほしいと思います」と訴えました。

Red Hatはオープンハイブリッドクラウドの世界を目指し、パートナー(ISV)を支援するためのプロジェクトである「Kubernetes Operator Project(KOP)」を展開しています。KOPは、コラボレーションの力を活用し安心・安全な品質のアプリケーションを世界中のビジネスに提供できるエコシステムをパートナーの皆様とともに創り上げていくものです。今回のアイデアソンでも、独創的なアイデアが次々に誕生しました。KOP活動の一環となるこのアイデアソンを通じて、ぜひコラボレーションの力を体験して頂きたいと思います。