現在、世界の電力の約3%を消費し、世界の温室効果ガスの約2%を排出しているネットワークに何らかのスイッチを入れて、ネットワークをよりサステナブルにすることができれば素晴らしいでしょう。そして、通信サービスのプロバイダーであれば、エネルギー効率を高めることでネットワークの運用コストを削減したいと考えていることでしょう。しかし、サステナビリティの目標を達成するには複雑かつ重層的な問題を解決しなければならず、通信業界の二酸化炭素排出量を削減するには、エコシステム全体が協力する必要があります。

多くのサービス・プロバイダーは、より良い成果を上げるために、人工知能(AI)を活用した高度なデータ分析に注目しています。ただし、AI はデータを供給することによって初めて能力を発揮します。また、従来のネットワーク、クラウドネットワーク、およびマルチベンダーネットワークのいずれにおいても、トラフィックパターンやエネルギー消費などの分野で十分に正確なデータを収集するという課題は、まだ解決されていません。 さらに、大規模な自動化を通じて、AI による推奨事項をネットワークのリアルタイム操作や関連ワークフローに変換するという課題もあります。そして、AI 自体が電力消費に大きく影響する可能性があるため、ネットワーク電力の最適化のために AI を使用する際には、非常に慎重になる必要があります。

現在でも、多くのサステナビリティプロジェクトが個別のネットワークドメインや課題に焦点を当てて、単独で実装されているため、このアプローチには限界があることが示されています。また、エネルギー効率の高い戦略の効果を最大化するには、高度なデータ分析やAI、自動化を使用するオープンプラットフォームを活用した、ネットワークドメインの全体にわたる、より総合的なアプローチが必要です。この投稿では、Red Hat がパートナーと積極的に取り組んでいるいくつかの取り組みを紹介しながら、統合アプローチを構成する要素の概要を説明したいと思います。

価値の最大化と消費電力の削減を実現するオープン 5G コア インフラストラクチャ

Red Hat、NEC、そしてIntel は協力して、電力コストと電力消費に関連する運用コストの削減に役立つオープン 5G コア インフラストラクチャを提供しています。現在、NECは、Intel® Infrastructure Power Manager for 5G Coreを使用して、Red Hat OpenShift上の NEC コンバージド 5G UPF(User Plane Function)機能の商用電力消費を、30%以上削減できるようになりました。 Intel® Infrastructure Power Manager for 5G Coreを使用することで、すべてのプロセッサーコアが適切なタイミングで適切な電力を供給するため、排出量とコストを最小限に抑えることができます。Red Hat、NEC、Intel が、5G ネットワークのサステナビリティと電力削減に貢献するために連携する様子については、こちらをご覧ください。

さらに強力な電力によってサステナブルな通話処理とパケット継続性を実現

昨年、私たちはRed Hat のオープンソース・テクノロジーと Arm® コンピュート・プラットフォームによって実現される、よりエネルギー効率に優れた5G および vRAN ソリューションを提供するための、Red Hat と Arm の提携を紹介しました

さらに最近では、NEC、Arm、そしてQualcomm Technologiesと協力して、NECのオープン仮想化無線アクセスネットワーク(vRAN)と 5Gコア製品が、エンドツーエンドで運用できることを実証しました。実証の際には、商業的に同等の環境を設定し、Red Hat OpenShift上で、Qualcomm® X100 5G RAN Accelerator CardsとArm Neoverse™ベースのCPUを使用しました。それぞれのテクノロジーを統合することで、電力とスペースを節約して、サービス・プロバイダーの RAN 展開の総所有コストを大幅に削減できる可能性がある、サステナブルな通話処理とパケット継続性を実証することができました。

Kepler と AI を使用して電力使用量を監視する

モデルのトレーニングと推論は、コンテナ、ポッド、ネームスペースのレベルで大量のエネルギーを消費します。 オープンソースプロジェクトのKepler(Kubernetes ベースのEfficient Power Level Exporter)は、幅広いプラットフォームにわたる電力消費メトリクスをキャプチャするため、システム管理者や開発者が電力使用量を理解し、最適化して、計画を立てるのに役立ちます。このRed Hatと IBM基礎研究所によって共同開発されたテクノロジーは、Red Hat OpenShiftによって電力監視に使用されており、CPUとグラフィックプロセッシングユニット(GPU)の両方によるエネルギー消費をキャプチャできるため、トレーニングや推論タスクのコンピューティング利用パターンに関するインサイトと、さらなる調整と最適化のための根拠を提供します。

Kepler は、エネルギーをより適切に管理するために必要なデータを、他のオープンソースプロジェクトやテクノロジーに提供する際に役立ちます。 その一例としては、分散環境において AI モデルのトレーニングジョブを追跡するために使用される、オープンソースプロジェクトのSusQLがあります。このプロジェクトでは、Kepler メトリクスを使用して分散トレーニングジョブの電力消費を集計し、消費電力に関するインサイトをクラスターレベルまで掘り下げます。

また、OpenShift上でAI対応アプリケーションを構築、トレーニング、デプロイ、監視するための MLOpsプラットフォームである、Red Hat OpenShift AI のような最適化モデル推論サービスも使用できるようになります。それと合わせて、消費電力を監視してエネルギー使用パターンを導き出すことができます。 また、これらのパターンをシステム構成やサービスプロビジョニングと関連付けて、ワットあたりの最適なパフォーマンスを推奨することができます。KeplerのようなツールをRed HatのAIポートフォリオに統合すれば、AI のサステナビリティを向上させられるようになるのです。

エッジでのエネルギー効率の良いAI分析

Red Hatは、サステナビリティを念頭に置き、将来に向けてよりスマートなソリューションを提供できるように、IOWN Global Forum内での活動に取り組んでいます。 最近では、Red Hat、NTT、富士通、NVIDIAが、AI分析サービス向けのNTTの高速データパイプラインを使用した、エネルギー効率の高いIOWN ベースのプラットフォームソリューションを実証しました。大規模なビデオカメラデータ分析のためのエッジでの AI 推論を最適化し、IOWNオールフォトニクネットワーク(APN)とデータセントリックインフラストラクチャ(DCI)をRed Hat OpenShiftに組み合わせて、大規模なAIデータ分析を提供することで、電力使用量の大幅な削減を実現することができました。

この連携によって、エッジでのビデオAI分析のユースケースにおいて、低レイテンシーを維持しながら消費電力を大幅に削減できることが実証されました。多数のカメラが接続されている場合でも、AIによるデータの集約と分析に必要なレイテンシーは、集中型クラウドの場合と比較して60%削減できることがわかりました。 NTTはRed Hat OpenShiftによるコンテナ技術を導入することで、AI分析処理を柔軟かつ容易に運用できるようになりました。 また、このソリューションがスマートシティでのビデオ AI 分析から、多数の分散センサーを使用した同様のシナリオまで幅広く適用できることも証明されています。

Red Hat、Intel、エリクソンがネットワークの消費電力を削減

Red Hat は、Intelおよびエリクソンと協力して、ネットワークのエネルギーコストと炭素排出量を削減するための、よりサステナブルなクラウドネイティブテクノロジーの開発、統合、展開を行っています。 ネットワークのパフォーマンスを維持しながらエネルギー消費を最適化して削減するには、バランスを取る必要があります。 Red Hat、Intel、エリクソンは当初、無線アクセスネットワーク(RAN)に焦点を当てており、vRAN ブーストを備えた第 4 世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーを使用して、処理電力消費を最大 20% 削減することを実証できました。このソリューションには3 つの柱があります。一つ目は、エネルギー効率の高いサーバーやアクセラレーターなどのハードウェア。 二つ目はRANの分散基地局(DU)および集約基地局(CU)ワークロード用の、CPUコアのリアルタイムの動的スケーリングなどのソフトウェア。三つ目は、ネットワークの使用率とトラフィックパターンに基づく、エネルギーを意識したリアルタイムの自動化です。 Red Hat、Intel、そしてエリクソンがサービス・プロバイダーによるサステナブルなクラウドソリューションの構築をどのようにサポートしているかについては、こちらの動画をご覧ください。

通信データセンター向けのスマートスケーリング

Red HatとIntracom Telecomは、ワークロードのパフォーマンスと安定性を損なうことなく、サーバーのワークロードをプロアクティブに調整し、使用率の低いサーバーの電源を意図的にオフにしてアイドル時の電力消費に対処することで、OpenShift ベースのインフラストラクチャ(オンプレミスとクラウドベースの両方)を最適化するソリューションの提供に取り組んでいます。ワーカーノードの数は、リソース需要のリアルタイム予測に基づいて動的にスケーリングされるため、インフラの最適なスケーラビリティと効率が確保されます。 これらのサービスのトラフィック負荷は、日次および週次のパターンに従って周期的に変動するため、このソリューションは、5G ネットワーク機能(ユーザープレーン機能ポッド、コントロールプレーンポッドなど)および関連サービス(AI ポッド、エッジポッド)をホストする統合型の通信データセンターに最適です。このスマートスケーリング機能によって、1 日の負荷変動が緩やかな通信会社のデータセンターであっても、ワーカーノードの平均数を大幅に削減できる可能性が示されており、大切なエネルギーとコストの節約を実現します。

コラボレーションがサステナブルなイノベーションを推進

Red Hatは、サステナビリティをクラウドネイティブアーキテクチャの制御と管理の不可欠な要素とするオープンソースのツール、機能、方法論の開発経験を活かしています。また、業界全体のサステナビリティのベストプラクティスを推進するために、他社ブランドの委託製造(OEM)、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)、顧客、政策立案者のコミュニティを活性化し、より一貫性のあるオープンなコラボレーションを行ってきました。データの収集と分析は、お客様が正しい測定に基づいて最善の決定を下す際の鍵となります。 Red Hat は、大量のデータを分析し、実行すべきアクションを適時に推奨するために、AI プラットフォームと大規模な自動化を組み合わせた、可観測性機能の強化を継続して検討していきます。当社はお客様やパートナーと協力して、IT、ネットワーク、エッジ、コア、クラウド環境全体にわたり、総合的なデータ主導の省エネアプローチを実現します。

さらに詳しく知りたい場合は、今週、MWCバルセロナのブース2F30にRed Hat が出展します。 また、2 月 28 日水曜日の14時45分から15時45分(中央ヨーロッパ標準時) まで、MWC ステージ B で目的主導型のサステナブルなネットワークについてお話しする予定です。


執筆者紹介

Rimma Iontel is a Chief Architect responsible for supporting Red Hat’s global ecosystem of customers and partners in the telecommunications industry. Since joining Red Hat in 2014, she’s been assisting customers and partners in their network transformation journey, helping them leverage Red Hat open source solutions to build telecommunication networks capable of providing modern, advanced services to consumers in an efficient, cost-effective way.

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