製造業では、ソリューションプロバイダーがクラウドネイティブのアプリケーション開発の原則 (別称: モダンアプリケーション開発) を自社の環境に適用して、既存のモノリシックなソリューションをこれまでよりもサイズの小さいモジュラー式のシステムに分割する傾向が強まっています。 

その誘因として、ソリューションプロバイダーが管理するパブリッククラウドの SaaS から、ローカルのオンプレミスでのエッジコンピューティングデプロイメントまで、さまざまなデプロイメントシナリオを活用できることが挙げられます。これにより、Kubernetes が前面および中央に配置され、上記のようなさまざまな製造業のデプロイメントオプションすべてに対応する普遍的なプラットフォームを提供します。製造業のユースケースで Red Hat OpenShift を使用すると、インフラストラクチャーだけでなく、そのインフラストラクチャーで構築、実行されるアプリケーションのデプロイメントと管理など、エッジデプロイメントで必要とされる、大規模なオペレーションにおいて一貫性をもたせることができます。製造業が、AI/ML インテリジェントアプリケーションなど、新しい技術の用途をどのように進化させているかをさらに理解いただけるように、製造業のエッジとは何か、またバージョン 4.9 で追加された最新のトポロジーオプションである シングルノード OpenShift がどのように役に立つかを説明します。

製造エッジ

製造エッジはどこにあるのか?これは、エッジコンピューティングシナリオの多くと同じように、組織やユースケースにより異なります。 

製造業の工場においてエッジコンピューティングを考える場合に、「データセンター」は修理工場の隅や、隣接する部屋などに配置されているサーバーラックなどを指す可能性があります。別の例として、大規模な自動車製造メーカー工場では、部屋が複数あり、非常用電源などを備えた小規模なデータセンターなどを指す場合もあります。これらの場所にデプロイされるワークロードは、製造実行システム (MES: Manufacturing Execution System) またはより一般的な製造オペレーション管理ソフトウェアです。このようなシステムは、生産の順序、材料の流れ、機械の整備、品質制御などの計画に使用されます。 

工場のデータセンターは、生産稼働の継続に必要な全 IT 機能がそこに配置されているという点で、重要な役割を果たします。より多くの機能をパブリッククラウドサービスに移行する傾向にありますが、スピードが重視される機能以外を (例: 従業員計画) 対象としています。特に大規模な工場では、広域ネットワーク障害による機械のダウンタイムのリスクとコストが高すぎるので、エッジコンピューティングが必要になります。

しかし、前述したように、このような遠隔地でコンピューティングパワーの利用環境が異なる場合には一律のシナリオは存在しないので、柔軟性が鍵となります。

通常、製造工場でどのようなことが行われているのかを詳しく確認するには、図 1 を参照してください。 

左端は、機械に組み込まれたデバイス、センサーまたはプログラマブルロジックコントローラー (PLC) です。これらは通常、コンピューティングパワーが非常に限られた超小型デバイスですが、制御機能の遅延が低く抑えられます。

次のレベルには、サーバーが製造現場、組立ラインや組立セルの中または近くに配置されています。産業用 PC (IPC) を使用して、ヒューマンマシンインターフェース (HMI: Human Machine Interfaces) または SCADA (Supervisory Control and Data Acquisition) システムを実行します。このハードウェアは、製造現場の厳しい条件に耐えられるように堅牢に作られています。 

前述の機器はすべて、工場、プラントなどの製造現場の運営に欠かせないため、通常オペレーショナルテクノロジー (OT) と見なされます。OT が ITと融合され、センサーデータの収集と処理が可能になり、意思決定が向上され、コスト削減とリスク軽減を図りながら、製造オペレーションの効率を最適化し、推進できていることが分かります。標準の IT テクノロジーを使用すると、コストを削減し、アプライアンスのスプロールを軽減できます。

OT および IT の領域は従来、厳密に分離されていたため、これは大きな変化になりますが、特に個別の工場や生産ラインでデータを収集して処理し、発生し得る製造関連の問題を特定すると同時に把握できるので、新たに生み出される機会も大きくなります。 

なぜ製造業でシングルノード OpenShift なのか?

シングルノード OpenShift は、完全な Kubernetes ディストリビューションですが、シングルノードで稼働します。このシングルノード OpenShift は、3 ノードクラスターリモートワーカーノード などの OpenShift と、他のエッジトポロジーを組み合わせることで、製造関連の企業がそれぞれのエッジ環境をもとに、適切なハードウェアフットプリントの規模と機能を柔軟に選択できるようにします。このブログの残りの部分では、シングルノード OpenShift について主に見ていきます。 

製造の観点から、シングルノード OpenShift は小規模なデータセンターレベルや、生産ラインのサーバーに有効であると考えます。

たとえば、HMI および SCADA システムをコンテナー化または仮想化して、製造現場の組立セルにデプロイします。各組立セルは、できるだけ他のセルから独立している必要があり、この環境では組立セル自体が障害ドメインを定義するため、高可用性は必要ありません。また、セルが複数あるため、1 つのセルが故障してもそれほど深刻ではありません。 

製造業の分野での適切な例として、ソフトウェアプロバイダーによりソリューションがモジュール化、コンテナー化、クラウド化されている、製造実行システム (MES) または製造オペレーション管理 (MOM) などが挙げられます。

同様に、HMI/SCADA などの従来の製造現場のソリューションだけでなく、最近の DigitalTwin、Device/Asset Management、IoT Gateways、Predictive Maintenance などのインダストリー 4.0 アドオンなども該当します。 

ソリューションがモダンアプリケーション開発の原則に準拠する場合には通常、ステートレスなマイクロサービスだけでなく、ステートフルなバッキングサービスも多数存在することになります。このようなソリューションは、小型のエッジデバイスで実行するには大きすぎ、3 ノードの HA クラスターを使用するほど大きくないので、シングルノード OpenShift が適しています。 

また、ダウンタイムなしに新機能を追加するローリングアップデートなど、Kubernetes オーケストレーション機能を活用することも推奨しています。これは、シングルノードクラスターであっても必要とされる機能です。これを推奨する理由は、特にアジャイル環境におけるアプリケーション/サービスの更新は、プラットフォームへの OS セキュリティーの更新よりも頻度がはるかに高くなっているためです。 

また、エッジで使用するように製造メーカーに推奨してる機能として、Kubernetes Operators があります。たとえば、Operator を使用して、ステートフルバッキングサービス (データベース、イベントストリーミング、またはメッセージングサービス) をインストールして実行できます。これは、シングルノード OpenShift で完全にサポートされており、製造現場から MQTT データを受信するメッセージブローカーの実行がはるかに簡単になります。

最後になりましたが、重要な点として、Red Hat Advanced Cluster Management と OpenShift を統合することで、一箇所で管理できるので、必要に応じて、リモートの場所やデプロイメントをすべて、1つの中央ロケーションから簡単に管理できるようになります。

実際に確認してみる

さらに具体的な内容については、図 2 に記載の 産業用エッジ向けに Red Hat で検証済みのパターン (Red Hat validated pattern for industrial edge) を参照してください。この検証済みのパターンは、機械の状態を監視する、すぐにデプロイ可能な実装で、機械レベルのデータを収集して、工場レベルで ML 推論を使用して致命的な機械の状態を検出します。機械学習は、クラウドに一元的に行われています。 工場のオンプレミスの部分には、フロントエンドのダッシュボード、MQTT メッセージブローカー、ML ベースの異常検知など、複数のコンポーネントが導入されています。 

しかし、小規模な工場や生産ラインステーション (別称: エッジ) では、すべてをシングルノードで実行することができるはずで、シングルノード OpenShift に最適なユースケースとなります!小規模なシングルノード OpenShift であっても、本格的な高可用性クラスターであっても、同じデプロイメントおよび管理の原則 (例: GitOps) を使用できます。

実際、最新更新された検証済みパターンのバージョン 2.0 には、このデプロイメントオプションが含まれており、テストも行われています。

概要

シングルノード OpenShift は、多数ある OpenShift デプロイメントの中でも待望のオプションとなっています。実績のある Kubernetes オーケストレーションや管理機能も今まで通り使用できる一方で、小規模かつリソースに制限のあるソリューション向けのユースケースも新たに実現します。console.redhat.com でシングルノードの OpenShift を試す方法を紹介していますので、ぜひご確認ください!


About the author

Daniel Fröhlich works as a Global Principal Solution Architect Industry 4.0 at Red Hat. He considers himself a catalyst to bring together the necessary resources (people, technology, methods) to make mission-critical projects a success. Fröhlich has more than 25 years of experience in IT. In the past years, Daniel has been focusing on hybrid cloud and container technologies in the industrial space.

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