以下は、私が本日Red Hat Summitの場で行った基調講演からの抜粋です。

オープンソースは、これまでに存在したいかなるシステムとも異なり、世界中で可能性をスパークさせることができます。オープンソースは、イノベーションを制約する次の2つの基本的な問題を解決します。

  • アイデアへの注目の獲得

  • アイデアに基づく継続的な開発

たとえば、オープンソースでは、アイデアに注目してもらうために業界で有名になる必要はありません。学歴や経歴、どのように貢献するか、何に貢献するかを規定するものではなく、重要なものはアイデアとその実装です。そして、いったん受け入れられると、誰でもそれに基づいて開発できるようになります。

コンピュータ・プログラミングの先駆者であるエイダ・ラブレスが成し遂げた業績が、1800年代に受け入れられ適用されていたら、何が起きていたか、そして今日どのような影響を及ぼしていたかを考えてみてください。数学の天才シュリニヴァーサ・ラマヌジャンが、彼の火花に必要な燃料にアクセスできる環境で働いていた場合を想像してみてください。

こうしたアイデアを誰でも利用可能にすることができるもの、それがオープンソースです。私はこれを直接経験しています。私がソフトウェアについて知っていることの大半は、学校で学んだわけではなく、オープンソースの勉強を通して、その時代の最も優秀な開発者から学びました。実は、その経験の影響が私をRed Hatへと導いたのです。

私たちの情熱はソフトウェアだけにとどまりません。私たちはソフトウェアの作り方によって、より良い世界が生まれることを信じています。それは完璧なものではなく、情熱が注ぎ込まれた多くのものと同様に乱雑なものになる場合もありますが、私たちはそれが人々に最善のものをもたらすことができると考えています。私たちは、オープンであることが世界の可能性を解き放つと確信しており、皆さまが自らのビジネス、自らのアイデアのためにこの同じ可能性を実現し、周囲にあるこれらの火花をつなぎ、燃え立たせるのを手助けしたいと考えています。

これを促進するために、私たちはRed Hatのオープン・ハイブリッドクラウド・ポートフォリオに新たな一連の機能を導入しています。その筆頭は、オープン・イノベーションの震源となる基盤であるRed Hat Enterprise Linux 9(RHEL)です。

RHELは常に、テクノロジー、アイデア、コードをつなぐプラットフォームとなっており、イノベーションの安定した基盤を提供するという使命を引き続き果たします。私たちの業務の処理は今やデータセンターにとどまらず、手元のデバイスや日々やり取りするマシンにまで及んでいます。ITの世界はもはやアプリケーションにとどまらず、今ではコンピュータが自ら考え、データに基づく意思決定を下すことができます。

RHEL 9は、次のような環境すべての基盤です。

  • データセンターからエッジまで、事実上あらゆるハードウェア上で利用できます。

  • x86からArm、Power、Zまで、幅広いハードウェア・アーキテクチャの選択肢をサポートします。

  • 物理マシンおよび仮想マシン上、コンテナ内、さらにはデバイス組込みでの稼働をサポートします。

  • 広大なソフトウェア・エコシステムを可能にし、サポートします。

セキュリティはこの基盤にとって極めて重要です。ソフトウェアのサプライチェーンは複雑であり、脆弱性の悪用やランサムウェアなどの問題が毎週のように話題になっています。実稼働に移行したものが引き続き自社のものであること、そしてイノベーションが意図した通りに利用されていることを確認する必要があります。これがRHEL 9の提供する機能です。このプラットフォームは、Linuxにおけるオープンソースのイノベーションを、皆さまが企業として依拠するセキュリティと信頼性に結び付けます。

このプラットフォームはまた、Red Hatの様々な製品とテクノロジーを結び付けます。Red Hat OpenShiftは、RHELを広範なコンピュータ、アプリケーション、およびサービスへと拡張することで、コンテナテクノロジーを管理し自動化して、インテリジェントなアプリケーションを実現できます。

当社のソフトウェア開発の手法から、皆さまのイノベーションは当社で生産したものを消費するだけにとどまりません。共創は当社にとって単なる流行語ではありません。皆さまが当社のプラットフォーム上で私たちとどのように協力するかには限界がないのです。皆さまのエンジニアやベンダーは、当社が取り組んでいるものと同じコードにアクセスでき、アップストリームのコミュニティで私たちと一緒に作業できます。CentOS StreamからOpenShift OriginやAnsible AWXなどに至るまで、皆さまは当社とともにオープンソースの旅に参加することができます。私たちは、共同のイノベーションに秘められた可能性を見据えています。

Red Hatはまた、エッジ管理から自動化、次世代コンピューティングのセキュリティ制御に至るまで、すべてがオープンソースの炎の中で鍛えられ、可能性の火花を散らす準備ができている包括的なスタックをお客様とパートナーに提供します。

イノベーションと実現可能性に向けたシステムとしてのオープンソースは、かつては機械的な意味でイノベーションを大きく促進していた様々な業界に広がっています。ソフトウェアのイノベーションは、もはやデータセンターに限定されず、製造、自動車、航空宇宙、その他の業界のいずれであろうと、未来はソフトウェアによって規定されています。そして、オープンソース・ソフトウェアは、これらの業界に存在する可能性を実現するための理想的な手段です。今や物理マシンとソフトウェアの統合が起こっており、従来の境界を越えてイノベーションを推し進める能力が極めて重要です。これがオープンソースによって可能になるものです。

ある特定の企業がこのモデルを導入しています。電気自動車へ、そして自動運転車へと変容する自動車の可能性を見据えている企業です。この企業は、自動車産業の未来を再定義するために、あらゆる境界を越えてイノベーションを実現しようとしています。当社は、世界をリードする自動車メーカーであるゼネラルモーターズ(GM)との提携を発表できることをうれしく思います。私たちは共同して、オープン・イノベーションと市場をリードするエンタープライズLinuxプラットフォーム上での協業に関するRed Hatの専門知識と、新たな自動車革命を促進するGMのビジョンとを組み合わせます。

本日、当社の社長兼最高経営責任者であるポール・コーミアは、Red Hatにとって非常に大きな意味のある言葉について言及しました。

「はじめに彼らは無視し、次に笑い、そして挑みかかるだろう。そうして我々は勝つのだ。」

この言葉は世界中のRed Hatのオフィスに掲げられており、私自身、毎日この言葉を目にしていましたが、この一文は言葉以上のもので、Red Hatが拠って立つ基盤なのです。

Red Hatは、世界クラスのエンタープライズソフトウェアを生み出すビジネスに携わっているだけではなく(もちろん、それも行っていますが)、オープンソース・ソフトウェアのビジネスを行い、可能性を刺激し、つなぐビジネスを展開しています。そして、他の人々が場所を問わず傑出したイノベーションに基づいて、より大きな成果を達成できるようにするビジネスに従事していると言えます。

これが当社と皆さまの組織に切実に求められていることで、当社がオープンソースのために戦い、イノベーションに向けて戦う理由にほかなりません。なぜなら、私たちは皆、この戦いに勝つと信じているからです。Red Hat Summit 2022において、皆さまがこの情熱を自ら体験し、当社と協力して皆さまの組織に秘められた素晴らしい可能性を解き放っていただければ幸いです。


執筆者紹介

Matt Hicks was named President and Chief Executive Officer of Red Hat in July 2022. In his previous role, he was Executive Vice President of Products and Technologies where he was responsible for product engineering for much of the company’s portfolio, including Red Hat® OpenShift® and Red Hat Enterprise Linux®. He is one of the founding members of the OpenShift team and has been at the forefront of cloud computing ever since.

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