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皆さん、こんにちは。私は Red Hat Enterprise Linux (RHEL) のグラフィックディスプレイと GPU を主に担当するエンジニアリングおよび製品グループに所属しています。この記事では、製品とエンジニアリングに関して、Red Hat が最近決定した事柄についてお知らせします。この決定の背景と、決定に至るまでに Red Hat が行った取り組みについて説明します。

30 年以上前の X Window System から新しい Wayland ベースのスタックへの移行は、過去 15 年ほどにわたって行われており、Red Hat は当初から関与しています。その中で、X11 プロトコルと Xorg サーバーに、対処すべき根本的な問題があることが明らかになりました。その解決策として生まれたのが Wayland です。現在、Wayland はデファクトのウィンドウおよびディスプレイ・インフラストラクチャ・ソリューションとして認識されています。

Red Hat は、この移行を通じて X.org スタックと Wayland スタックの両方をサポートしてきました。Red Hat とアップストリーム・コミュニティは、共に新機能のサポートとバグ修正に取り組んできました。

コミュニティは新しい機能を構築し、Wayland のギャップに対処する一方で、Xorg サーバーと X11 インフラストラクチャの新規開発を縮小してきました。Wayland が大幅に強化されたのは素晴らしいことですが、その反面、Wayland の新しいメンテナンス作業と X.org の従来のメンテナンス作業が増え、負担が増加しました。これを維持するのは困難です。

Wayland の発展と機能強化に合わせて、Red Hat は多くのハードウェアベンダー、ソフトウェアベンダー、お客様、ビジュアルエフェクト (VFX) 業界、アップストリームプロジェクトと社内外で協力して、機能のギャップを解消し、Wayland スタックを拡張するために必要なプロジェクトを把握、開発してきました。私は自分たちの仕事を本当に誇りに思っています。携わった取り組みには、たとえば次のものがあります。

  • ハイダイナミックレンジ (HDR)/カラー管理対応の取り組みの一部を主導
  • X11 クライアントとの後方互換性の基礎となる Xwayland をリード
  • 先進的なリモート・デスクトップ・ソリューションを支えるインフラストラクチャの開発
  • Wayland プロトコルと関連プロジェクトにおいて明示的な同期サポートをレビューおよび開発
  • 入力のエミュレーションとキャプチャーに関するソリューションを提供する Libei を開発
  • OpenJDK を (X)Wayland と連携させるための Wakefield イニシアチブを共同で主導
  • その他、過去の数多くのイニシアチブや、近い将来の新しいイニシアチブ

Red Hat は、これらの取り組みに携わった組織や個人、特にその他のアップストリーム・コミュニティの多大な努力に感謝しています。コミュニティがなければ、このプロジェクトがここまで成熟することはなかったでしょう。皆さんの努力のおかげで、RHEL 8 のほとんどのユースケースで Wayland をデフォルトとして採用し、RHEL 9 で Xorg サーバーを 非推奨 にして、今後のリリースで削除するという決定を、確信を持って行うことができました。今年 (2023 年) の初めに、RHEL 10 の計画の一環として、インフラストラクチャの観点だけでなくエコシステムの観点からも、Wayland の現状を把握するための調査を行いました。この調査の結果、ある程度の適応が必要なアプリケーションやギャップは残っているものの、Wayland のインフラストラクチャとエコシステムは良好な状態にあると判断されました。特定された阻害要因への対処も順調に進んでおり、RHEL 10 の公開までに問題を解決し、2025 年前半に修正をリリースする予定です。

以上を踏まえて、Xorg サーバーとその他の X サーバー (Xwayland を除く) を RHEL 10 以降のリリースから削除することを決定しました。Xwayland は、すぐには Wayland に移植されない、ほとんどの X11 クライアントを処理できるものと思われます。お客様は、必要に応じて、Wayland エコシステムへの移行要件に対処しつつ、ライフサイクル全体 にわたって RHEL 9 を使用し続けることができます。なお、“Xorg サーバー” と “X11” は同義ではないことにご注意ください。X11 は Xwayland を通じて引き続きサポートされるプロトコルであり、Xorg サーバーは X11 プロトコルの実装の 1 つです。

Red Hat は、一部のディストリビューションや Fedora を支える活動も同様の未来に向けて動いていることを認識していますが、今回の決定は RHEL 10 に限られたものです。Red Hat は、他の Linux ディストリビューションでは、ニーズや意思決定構造が異なることを認識しています。また、Fedora における同様の取り組みの予定については把握しておらず、知識の共有を除き、そのような取り組みには関与していません。

Red Hat はフィードバックの収集に努めていますが、全員の方と直接連絡を取ることはできません。この件についてご意見やご質問がある場合は、カスタマーポータル で開かれているディスカッションにご参加ください。

この決定により、Red Hat は RHEL 10 以降、最新のスタックとエコシステムに労力を集中できるようになります。そのため、HDR、セキュリティの強化、低密度と高密度の混合ディスプレイや超高密度ディスプレイのセットアップ、GPU/ディスプレイのホットプラグの改善、ジェスチャーとスクロールの改善などの問題に取り組むことができます。Red Hat は、Wayland によって強固なプラットフォームを提供できると確信しており、コミュニティ、すべてのパートナー、お客様と協力して Linux の未来を築けることを嬉しく思っています。


執筆者紹介

Carlos is the engineering manager of the GPU team at Red Hat. He is known from his previous experience maintaining and leading Nautilus and related GNOME technologies, as well as his roles in the GNOME community, including participating in the GNOME Foundation board of directors and leading initiatives such as migrating the GNOME project to Gitlab. He is passionate about building a better tech world for everyone through FOSS and industry standards, and in his spare time enjoys nature and doing functional workouts.

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