大規模言語モデル (LLM) は、顧客サービスから最先端アプリケーションまであらゆる業界を変革し、多大なイノベーションの機会を生み出しています。しかし、高い計算コストと複雑さという落とし穴もあります。LLM のデプロイには高価なハードウェアと複雑な管理が必要となることが多いため、多くの組織にとって、効率的でスケーラブルなソリューションを手の届かないものとしています。多大な出費なく LLM の力を活用することはできるのでしょうか。この画期的な回答となるのは、vLLM によるモデル圧縮と効率的な推論です。これは、あらゆる規模の企業のコスト削減とデプロイメントの迅速化を支援します。

スピード (および効率) の必要性

LLM を大規模に実行することは簡単な作業ではありません。LLM のようなモデルは、強力で高額なハードウェアを必要とし、それによってインフラストラクチャのコストや運用上の課題が増加します。チャットボットやマルチモデル・ワークフローのようなリアルタイムのアプリケーションの台頭により、このプレッシャーは増すばかりで、スピードと低コストの両方を求める圧力はさらに高まっています。最適化のメリットは、コスト削減だけではありません。エンジニアの時間が解放され、開発サイクルを短縮し、ハードウェアの管理ではなく戦略的な優先事項に集中できる、といったメリットもあります。

LLM 圧縮:効率的な推論への鍵

モデル圧縮は、推論のパフォーマンスを損なうことなく LLM のリソース要求を縮小するため、これらの課題に直接対応するものとなります。この分野で牽引役となっているのが次の 2 つの技術です。

  • 量子化:高精度の重みを低ビット形式 (FP8、INT8、INT4 など) に変換し、メモリーとコンピューティング負担を大幅に削減します。Neural Magic が実施した、量子化 LLM に関する 50 万件の評価では、推論の速度が平均 2 - 4 倍も向上し、精度の低下はわずか 0.5 - 1% (99% 超の回復率) にまで抑えられています 。
  • スパース性:冗長なパラメータを削減し、モデルをより軽量かつ高速にします。接続が減ればストレージと処理が減り、デプロイを単純化してコストを低減できます。

これを実現するため、Red Hat では最近、LLM 圧縮のリーダーである Neural Magic を買収し、あらゆるハードウェア上で高速かつ効率的な推論を実現するというコミットメントを強化しています。Neural Magic は、過去 1 年間、最先端の量子化技術を使用して、Granite、Llama、Mistral、Qwen などの、一般によく使用されているモデルを最適化してきました。すぐに推論に使える、これらのオープンソースのモデルは Hugging Face で入手できます

LLM Compressor によるマルチモーダルモデルの量子化サポート

実践的な最適化のために、オープンソースの LLM Compressor ライブラリは次の機能を提供します。

  • 重みとアクティベーションのための量子化アルゴリズムの拡充セット
  • Hugging Face のモデルおよびリポジトリとの統合
  • safetensors (vLLM と互換性のある tensor を安全に格納するためのシンプルな形式) のサポート
  • Accelerate による大規模モデルの処理
  • GPTQSmoothQuantSparseGPT などの実証済みのアルゴリズムのサポート

vLLM:多様なハードウェアで推論を効率化

今回のテーマの半分は圧縮についてですが、残りの半分は高性能の推論エンジンについて言及します。vLLM は、より高速で柔軟な LLM を実現すべくゼロから構築されたオープンソース・ライブラリです。カリフォルニア大学バークレー校で誕生し、GitHub のスター数が約 40,000 に達する vLLM は、学界や産業界で評価されている技術です。その価値は、スピードだけではなく、LLM のデプロイを実用的で、スケーラブルで、誰に対しても利用可能にしている点にもあります。vLLM の特長は次のとおりです。

  • 高パフォーマンス:vLLM は、PagedAttention (キー値キャッシュの動的な管理による大規模なモデル用メモリの最適化) といった技術により、Hugging Face Transformer などの従来のフレームワークよりも高いスループットを提供し、レイテンシーのオーバーヘッドはほぼゼロに抑えられます。これにより、チャットボットからリアルタイム分析まで、アプリケーションが迅速に応答し、より簡単に拡張できるようになります。最近の vLLM のベンチマーク (こちら) や他の記事 (こちら) をご覧ください。
  • 広範なハードウェア互換性: NVIDIA や AMD GPU から Google TPU、Intel Gaudi、AWS Neuron、さらには CPU まで、vLLM は組織の環境に適応します。多様なアクセラレーターに対して最適化できるため、既存のインフラを活用することも、設備を一新することなく費用対効果の高い選択肢を選ぶこともできます。量子化の手法でサポートされているハードウェアは、こちらで確認できます。
  • 動的なバッチ処理とスケーラビリティ:vLLM の高度なリクエスト処理により、受信クエリが動的にバッチ処理されるため、手動で調整しなくてもリソースの使用率を最大化できます。これは、カスタマーサポートボットやマルチユーザー AI プラットフォームなど、需要が予測できないほどに変動する、トラフィックの多いシナリオで重要になります。
  • 簡単なデプロイメント:vLLM は OpenAI の API 形式と互換性のある組み込みのサービングエンドポイントを使用することで、LLM 管理を単純化します。モデルのデプロイは、vllm server [モデル名] という単一のコマンドを実行するだけで完了するため、運用上のオーバーヘッドを削減し、インフラストラクチャではなくイノベーションに注力できるようになります。これは、本番環境向けのソリューションを構築するための近道だと言えます。
  • エキスパート向けのカスタマイズ性:vLLM は使いやすさに加えて、カスタムトークナイザー、モデルシャーディング、ファインチューニングされた最適化フラグといった上級ユーザー向けの機能も備えています。エンジニアにとっては、LLM アプリケーションの用途を広げる柔軟なツールとなります。
  • コミュニティ主導のオープンソース:Linux Foundation と活発なコミュニティに支えられており、vLLM では、透明性、迅速な機能アップデート、豊富なサポートを提供します。業界のリーダーや研究者からの貢献を受けて vLLM は最先端の状態に維持されており、豊富なドキュメントは学習のハードルを下げるものとなっています。

vLLM を圧縮モデルと組み合わせることで、スピード、コストおよび管理性が向上したエンドツーエンドのパイプラインを構築できます。単一のチャットボットを動かす場合でも、広大な AI エコシステムを支える目的でも、vLLMは目標に合わせて拡張でき、複雑さを伴わずに必要なパフォーマンスを提供します。

まとめ:vLLM による最適化のメリット

LLM は、とりわけコストと複雑さを抑えることができれば、競争上の優位性をもたらします。最適化と vLLM を組み合わせることで、これが可能となり、可能性を実際の利益と運用効率に変換することができます。また、運用コストの削減 (GPU で 40 - 50% を節約)、デプロイメントの効率化による市場投入時間の短縮、リアルタイム対応による顧客満足度の向上などが期待されます。スタートアップ企業であれ既存の企業であれ、この組み合わせにより、よりスマートに、より低コストで AI をデプロイすることが可能になります。

結果はすべてを物語るため、実際の例を見てみましょう。ある人気のゲーム企業では、Neural Magic の INT8 量子化 Llama 70B と vLLM を使用することで、毎日数十万のコードを生成し、1 秒あたり 10 クエリ、各トークンを 50ms で処理することに成功しました。GPU 使用率を半減させることで、パフォーマンスを犠牲にせずインフラストラクチャのコストを 50% も削減できたのです。 

今すぐ始める

LLM と vLLM を最適化して活用する方法は、次のとおりです。

  1. 最適化されたモデルを試す:Hugging Face (こちら) で、すぐにデプロイできる最適化済みの LLM を選べます。
  2. 独自のモデルを最適化する:LLM Compressor を使用して、圧縮技術を試したり、ニーズに合わせてモデルをカスタマイズしたりできます。
  3. vLLM を試す:サンプル推論を実行して、スピードとシンプルさを実際に体験できます。

本番環境で利用可能なソリューションについては、Red Hat のエキスパートがサポートします。 LLM をお客様のビジネスで効率的かつ効果的に活用する方法については、Red Hat までお問い合わせください 。

リソース

エンタープライズ AI を始める:初心者向けガイド

この初心者向けガイドでは、Red Hat OpenShift AI と Red Hat Enterprise Linux AI によって AI 導入をどのように加速できるのかについて説明します。

執筆者紹介

Saša Zelenović is a Principal Product Marketing Manager at Red Hat, joining in 2025 through the Neural Magic acquisition where he led as Head of Marketing. With a passion for developer-focused marketing, Sasa drives efforts to help developers compress models for inference and deploy them with vLLM. He co-hosts the bi-weekly vLLM Office Hours, a go-to spot for insights and community around all things vLLM.

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