概要
インテリジェント・アプリケーション (インテリジェント・アプリ) とは、人工知能 (AI) を組み込んで人間のワークフローを補強するソフトウェア・アプリケーションです。インテリジェント・アプリケーションは、特定のビジネス上の課題に AI を適用し、データを利用して効率的に問題を解決します。このような AI で強化されたデータ駆動型のアプリケーションにより、ルーチンタスクを自動化し、ミスが発生しがちな手作業を減らすことができます。また、ユーザーインタラクションに基づいて調整し、状況の変化に適応しながら、時間とともに学習し、改善していくことができます。
インテリジェント・アプリケーションの典型的な例として、AI モデルを適用して不審な行動を検知するクレジットカード不正行為検出システムが挙げられます。そのほかに、E メール・アプリケーションで AI を活用して、利用者が最も関心を持ちそうなメッセージに優先順位をつける例があります。
インテリジェント・アプリケーションのメリット
AI ツールは、プログラムとして組まれていない、これまで遭遇したことのない質問にも答えることが可能です。インテリジェント・アプリケーションは AI 機能を活用することで、ルールベースのロジックのみに依存するアプリケーションよりも多くのメリットをもたらすことができます。インテリジェント・アプリケーションの主なメリットをいくつかご紹介します。
適応性
インテリジェント・アプリケーションは、新しい情報から学習し、時間の経過とともに精度を向上させることができます。これは状況が一定でないときに役立ちます。クレジットカードの不正行為検出の例をとると、インテリジェント・アプリケーションは、新しいタイプの不正行為に関する新しいデータに対応して、リアルタイムで推奨を改良することができます。
また、インテリジェント・アプリケーションは、ユーザーインタラクションから学習し、応答性を向上することもできます (ユーザーが最も興味を持ちそうなコンテンツの認識精度を高めるなど)。
情報処理
AI ベースのインテリジェント・アプリケーションは、メッセージの受信、プレゼンテーション、財務データなど、ビジネスシーンにおいて入ってくる情報の処理をサポートすることができます。
インテリジェント・アプリケーションの中には、生成 AI と大規模言語モデル (LLM) を使用して、解決すべき問題に対応してコンテンツを作成するものもあります。メッセージの返信を作成する際に提案を行うチャット・アプリケーションがその一例です。
自動化
イベント駆動型の自動化により、インテリジェント・アプリケーションは周囲のソフトウェア・エコシステムの変化に基づいてアクションを起こすことが可能です。例えば、IT にインテリジェント・アプリケーションを適用して自動化すると、サービス停止が発生した場合に迅速に対応したり、需要が増加した場合にオンラインのシステムを増やしたりすることができます。
適応型のエクスペリエンス
インテリジェント・アプリケーションは、ユーザーのニーズに応答して、質問に正確に答えたり、タスクを実行したりすることができます。ユーザーが画像を要求していることを理解し、テキストだけでなく画像を生成して応答できるチャットボットがその例です。
インテリジェント・アプリケーションのユースケース
企業やソフトウェア開発者は、インテリジェント・アプリケーションの新たなユースケースを次々と創出しています。その例をいくつかご紹介します。
IT 自動化
IT システムの管理には、特定のプロセスを停止させたり起動させたりといった調整を行うことで、イベントに対応することが含まれます。インテリジェント・アプリケーションはデータを分析し、パイプラインやワークフローの一部として何らかのアクションをトリガーすることができます。
カスタマーエクスペリエンス
ストリーミング・ビデオ・サービスからオンラインショッピングまで、AI を活用してパーソナライズされたおすすめ情報を提示する機能は、私たちが日々利用する多くのサービスで使用されています。この発想は、さまざまな業界に適用することができます。インテリジェント・アプリケーションのおかげで、顧客が何を期待しているかを認識してそれを適切なタイミングで提供できるようになるため、顧客のロイヤルティや定着率を高め、競争上の優位性が得られます。
意思決定
サプライチェーン、ロジスティクス、財務、その他多くの分野におけるビジネス上の意思決定を行うには、大量の情報をリアルタイムで分析する必要があります。インテリジェント・アプリケーションは、そのデータを処理し、信頼できる正確な提案を提供するために役立ちます。
データの分析
AI は人間が見逃してしまうようなデータのパターンを見つけることができるため、インテリジェント・アプリケーションは科学研究者やビジネスアナリストなど、データを扱うあらゆる人にとって有用です。
産業用エッジ
インテリジェント・アプリケーションをエッジコンピューティング (データの物理的な場所またはその近くで行われるコンピューティング) に適用することで、最も必要とされる場所でより速く知見を提供することができます。画像認識アルゴリズムを使って、組立ラインを流れる製品を検査するところを想像してみてください。生産現場で欠陥を即座に見つけることができれば、品質を向上させることができます。
インテリジェント・アプリケーション導入の課題
インテリジェント・アプリケーションの構築には、標準的なロジックベースのアプリケーションより多くのリソースが必要です。
インテリジェント・アプリケーションを提供するために、ソフトウェア開発チームは通常、次のことをしなければなりません。
- データの収集と準備
- AI モデルの開発またはチューニング
- モデルのオーケストレーション、統合、テスト、組み込み
- アプリケーション開発プロセスへのモデルの統合
- モデルの監視、管理、必要に応じた再トレーニング
最初のステップはデータの収集と準備で、これはインテリジェント・アプリケーションの成功に大きな役割を果たします。
通常は、機械学習 (ML) のステップが必要で、データサイエンティストはデータに基づいて予測を行うモデルをトレーニングまたはチューニングします。次はテストです。これはモデルが適切に動作し、有用な結果をもたらすことを確認するための重要なステップです。MLOps 手法は、データサイエンティスト、エンジニア、IT チームがこれらのステップを実行する際、同期を保つのに役立ちます。
次に、モデルを必要とするインテリジェント・アプリケーションがモデルにアクセスできるようにする必要があります。新たにトレーニングしたモデルであれ、既存のモデルであれ、開発者は AI モデルを最適化して提供する際に、さまざまなモデルとアーキテクチャから選択することができます。
AI 環境は複雑です。クラウドネイティブ・アプリケーション開発の方法は、インテリジェント・アプリケーションに最適な解決策です。マイクロサービス、サーバーレス・アーキテクチャ、DevOps プロセスは、インテリジェント・アプリケーションをより効率的にユーザーに提供するのに役立ちます。
インテリジェント・アプリケーションに Red Hat ができること
Red Hat は、複数のチームが透明性と制御性をもってインテリジェント・アプリケーションを構築、デプロイするための共通の基盤を提供します。
Red Hat® Enterprise Linux® AI は、エンタープライズ・アプリケーションで LLM を使用するためのプラットフォームを提供します。
Red Hat® OpenShift® AI は、独自のユースケースと独自のデータを使用して、AI モデルのトレーニング、プロンプトチューニング、ファインチューニング、提供ができるプラットフォームです。
大規模な AI デプロイメント向けに、Red Hat OpenShift は AI ワークロードに適したスケーラブルなアプリケーション・プラットフォームを提供しており、一般的なハードウェア・アクセラレーターへのアクセスを完備しています。
また、Red Hat の統合パートナーにより、オープンソース・プラットフォームと連携するよう構築された、信頼できる AI ツールのエコシステムへの扉が開かれます。