ターキッシュ エアラインズと聞いて思い浮かべるのは、世界中のどの航空会社よりも多くの国をつなぐ広大な航空ネットワークかもしれません。年間 8,000 万人を超えるお客様にサービスを提供していることや、130 カ国と 353 の就航地にわたって大規模な事業を運営するという驚くほど複雑な運航体制を思い浮かべる方もいるでしょう。
Turkish Technology は、これらすべてを支えるデジタルエンジンの構築を担っています。当社のミッションは、現在のターキッシュ エアラインズのシステムを管理することにとどまらず、航空業界の未来を形づくる次世代のデジタル製品を構築することにあります。そして、当社にとってその未来を突き動かす原動力は、間違いなく AI です。
私たちのチームは、AI を単発のパイロットプロジェクトの寄せ集めとして捉えてはいませんでした。むしろ、AI を当社のデジタル・トランスフォーメーション全体を加速させる戦略的な手段であると考えました。当社の目標は、堅牢で拡張性があり、複製可能な AI インフラストラクチャを構築し、それを組織の構造全体に浸透させることでした。この取り組みに着手したのは約 3 年前のことです。当社は、これまでに目覚ましい進展を遂げてきましたが、飛行機が次の目的地へと飛び続けるように、この取り組みに終わりはないと考えています。これは継続的な取り組みであり、とくに生成 AI をはじめとするテクノロジーが急速に進化する中、変化に絶えず適応するための終わりなき競争でもあります。
テクノロジーの先にある文化的変革
当社が得た最も重要な発見の一つは、テクノロジーによる変革はソフトウェア・プラットフォームの導入から始まるのではないということでした。それは組織を構成する人材から始まるのです。当社は、最大の課題は技術的なものではなく、組織的なものであると気づきました。新しいテクノロジーを導入することと、組織の人材がそれらを採用して、日々のワークフローを変えることは、まったく別の話なのです。
AI プロジェクトは、意思決定の方法、責任の定義、事業部門の運営方法など、あらゆるものに影響を与えます。そのため当社は、経営層の意識醸成に力を注ぎ、マネージャーが AI の戦略的価値を理解できるよう支援し、組織全体で当事者意識を育むことに取り組む必要がありました。
このような組織の文化的変革を始動するために、当社は各事業部門の 200 名以上の従業員を対象に、データサイエンスと AI のトレーニングを実施しました。参加者には、エンジニアやデータサイエンティストだけでなく、財務、オペレーション、カスタマーサービスといった部門の従業員も含まれていました。その後、彼らを実際のプロジェクトに参加させ、各自が最もよく理解している課題に対して、新たに身につけたスキルを活かす機会を提供しました。ここで得た気づきは、非常に重要なものでした。最も大きな成果を上げたのは、自らの担当領域を誰よりも深く理解しているビジネス部門の従業員でした。彼らに適切なツールとサポートを提供したことで、AI 導入をより拡張性があり誰もが参加できる取り組みに発展させることができたのです。こうして、技術的な取り組みが、組織全体を巻き込むボトムアップ型のムーブメントへと変容しました。
実際の価値を大規模に提供する
当社の取り組みは、企業文化を高めることだけが目的ではなく、これには実際のビジネス価値を創出することも不可欠でした。ターキッシュ エアラインズほどの事業規模への取り組みは、非常に大きな課題であると同時に、絶好の機会でもあります。これを最大限に活かすため、当社はデータ量が豊富で、かつ業務への影響が大きい領域に優先的に取り組むことにしました。
最初に大きな成果を上げた事例の一つが、Tail Assignment Optimization ソリューションでした。このシステムは、AI を活用して効率性、可用性、持続可能性の目標に基づいて、各路線に最適な航空機を割り当てます。結果として、その規模の大きさゆえに、燃料効率の段階的な向上が、大幅なコスト削減につながり、持続可能性目標の達成にも一歩近づくことができました。
AI 導入の取り組みは、その後すぐに以下の分野にも広がりました。
- 動的な価格設定と貨物収益管理:AI を活用して市場の需要や乗客の行動をより正確に把握し、価格戦略を最適化しています。
- Turnaround AI:コンピュータビジョンと空港内のカメラを使用して、地上業務をリアルタイムで監視し、遅延の削減と定時運航率の向上に貢献しています。
- パーソナライズされたキャンペーン:AI の活用により、固定的な運賃体系を超え、あらゆるデジタルタッチポイントで乗客一人ひとりに合わせたサービスをリアルタイムで提供しています。
規制に対応し、未来を守る
航空業界は世界で最も規制の厳しい業界の一つです。さらにトルコでは、データのプライバシーやコンプライアンスの要件により、パブリッククラウドの利用が厳しく制限されています。そのため、当社の AI プロジェクトでは、堅牢なオンプレミス基盤を構築する必要がありました。柔軟性と拡張性を兼ね備え、強固なセキュリティ体制を確保しつつ、コンプライアンス対応を最適化できるプラットフォームが必要でした。当社は Red Hat との提携を選択しました。Red Hat のハイブリッド・アーキテクチャが最適なソリューションを提供してくれたからです。このソリューションにより、ワークロードを主にオンプレミス環境で実行しつつ、アプリケーションを再設計することなく、必要に応じてパブリッククラウドへ柔軟に拡張できるようになりました。
堅牢で柔軟なオンプレミス基盤の構築に注力してきたことが、現在、当社にさらなる飛躍をもたらす生成 AI の推進を支えています。当社では、この未来に向けて、プライバシーを最優先とするエンタープライズグレードの AI インフラストラクチャを構築しています。生成 AI を単に試験的に導入しているのではなく、それを当社の中核業務に組み込もうとしているのです。
当社では、ドキュメント作成、要約、ソフトウェア開発を支援するツールを従業員に提供するため、社内ホスト型の大規模言語モデル (LLM)「TK GPT」を開発しています。また、以下の開発も進めています。
- 自社ホスト型コードアシスタント:エンジニアリング・ワークフローの効率化を支援します。
- 契約書アシスタント:法務およびオペレーションチームが、より安全で一貫性のある文書を作成できるよう支援します。
- 生成 AI ベースのチャットボット:コールセンターのオペレーターが情報により効率的にアクセスできるよう支援します。
乗客向けのソリューションとしては、LLM を活用したアシスタントの開発に取り組んでいます。このアシスタントは、会話形式のコマンドで、利用客による予約内容の照会や最新のフライトステータスの確認など、さまざまな手続きを支援します。これらのシステムはすべて社内の GPU インフラストラクチャ上で稼働するため、規制要件を満たしながらイノベーションを継続的に推進できます。
これまでの取り組みを振り返ってみると、私たちは重要な教訓を得ることができました。技術的な変革はプラットフォームの導入から始まりますが、これは組織のあらゆる階層にまで浸透して初めて、持続可能なものになります。もっと早くこの点を理解していれば、データリテラシーについて、より早い段階で初級、中級管理職を交えて話し合うことができていたはずです。当社は現在、新たなトレーニングプログラムを通じてそれを実践しており、社内での理解と賛同、および文化的な整合性を促進しています。
Turkish Technology において、AI 導入はもはや単なる IT プロジェクトではありません。それは、当社の計画や運用、そしてターキッシュ エアラインズのお客様との関わり方にまで組み込まれています。現在、当社はレジリエンスとイノベーション主導の文化を核に据え、この新しい考え方を組織全体にまで広げ、航空業界の未来の形成を支援する準備ができています。
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執筆者紹介
Serdar Gürbüz is a leader who has managed technology and data-driven transformation in industries such as aviation, telecommunications, retail, and financial technologies.
He currently serves as General Manager of Turkish Technology, an IT company in the aviation and air cargo industry that develops technology products and services, primarily for Turkish Airlines and its subsidiaries. He is also a Board Member at Turkish Airlines Electronic Money and Payment Services.
Serdar is an active member of Turkish Technology Team Foundation (T3 Foundation) and Teknofest Aerospace and Technology Festival, both prominent civil society organizations.
Additionally, he serves on the investment committees of venture capital funds at Turkish Airlines Startup Investment Fund, Bilişim Vadisi, and the T3 Foundation.
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