オープンソースは長年、イノベーションの促進剤となってきました。オープンソースの手法による運営は、多数の力が少数の力よりも強いことを幾度となく証明してきました。こうした認識はRed Hatが行うあらゆる取り組みの中心にあり、それはとりわけRed Hatの製品およびテクノロジー担当エグゼクティブバイスプレジデントであるマット・ヒックスがRed Hat Summitの場で発表した、エッジにおいてソフトウェア・デファインド・ビークルを進歩させるRed Hatとゼネラルモーターズ(GM)との協業に当てはまります。
先進運転支援システム(ADAS)など、今日の高度なユースケースは、最新の車両プラットフォームの開発に課題をもたらしています。モダナイズされた一貫性のあるインフラストラクチャが存在しないということは、様々な車両ラインや年式の間で設計の再利用が少ないことを意味し、システムの制約により、将来のソフトウェア更新が高コストかつ困難になります。プロプライエタリー・オペレーティングシステムの代わりにオープンソース・ソフトウェアを採用することで、共通の標準を確立するための手段を導入し、Linuxに精通した自動車分野の開発者のエコシステムを発展させることができます。自動車業界は、オープンソース・ソフトウェアを利用することでこれらの問題の多くを軽減し、その結果、顧客の現在のニーズを満たしながら戦略をモダナイズすることができます。
SBD Automotive1 によると、電動化、ハイパフォーマンス・コンピューティング、自動運転、デジタル・インテグレーション、ユビキタス接続の集約により、今や自動車メーカーが主にソフトウェアで実現される新たなビジネスモデル、機能、体験を通じて、顧客体験を向上させ、ブランド・ロイヤリティを高める可能性が生み出されています。
Red Hatは、フォルクスワーゲン・グループ、アウディ、BMWなどの業界大手とともに自動車の問題解決の先頭に立っているほか、CentOS Automotive Special Interest Group、Eclipse Foundationのソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)ワーキンググループ、Scalable Open Architecture for Embedded Edge(SOAFEE)イニシアチブなどの自動車技術コミュニティと協力して、より優れた整合を実現し、テクノロジーを進歩させ、アップストリームのイノベーションを促進しています。さらに、Red Hatはexidaと協力し、ELISAプロジェクトへの関与を通じて、Linuxの機能安全認証を追求しています。
Red Hat In-Vehicle Operating Systemは、従来のプロプライエタリー・システムでは不可能な方法で自動車分野における現在のトレンドの多くを可能にし、加速させる上で役立ち、自動車業界をよりスケーラブルな設計手法へ移行させることができます。ソフトウェア中心の車載アーキテクチャのイノベーションを加速する必要性から、Linuxベースのオープンソース・プラットフォームとクラウドネイティブな開発が自動車のバリューチェーンの中でさらに肝要な部分となっています。世界をリードするエンタープライズLinuxプラットフォームであるRed Hat Enterprise Linuxを、Red Hat In-Vehicle Operating Systemを通じて自動車業界へ拡張することで、GMのような自動車メーカーは、機能安全性を備えたオープンなプラットフォーム上で迅速なイノベーションを適切に導入できるようになります。
Red HatとGMおよび同社のUltifiソフトウェア・プラットフォームとの協業は、Red Hat In-Vehicle Operating Systemがソフトウェア・デファインド・ビークルを実現する上でいかに重要な役割を果たすことができるかだけでなく、将来的に安全な自動車アプリケーションをLinux上でどのように構築できるかをも示す実例となっています。次世代の自動車に不可欠なコンポーネントとしてオープンソース・ソフトウェアに注力することは、自動車メーカーがより優れた迅速なイノベーションを達成し、顧客体験を向上させる上で役立ちます。Red Hat In-Vehicle Operating Systemは、Linuxをセーフティクリティカルな自動車システムに適用し、開発を加速させ、コストを削減し、新しいサービスと収益源の可能性を生み出すことにより、ソフトウェア・デファインド・ビークルをサポートすることを目的としています。
Linuxを自動車分野のセーフティ・クリティカルなアプリケーションに適用
セーフティクリティカルなシステム向けのLinuxの構築、テスト、および認証は、管理が厄介で困難な場合があります。そのため、Red HatはRed Hat In-Vehicle Operating Systemに対する新しい継続的な機能安全認証アプローチを追求する上で、自動車およびセーフティ関連のコミュニティと協力しています。安全認証手順の自動化を進めれば、再認証には従来の所要期間に比べてわずかな時間しかかからないと私たちは予想しています。
開発の加速
イノベーションのスピードは極めて重要です。Red Hat In-Vehicle Operating Systemでは、最新のオープンソース・ツール・チェーンや開発ワークフローを活用して開発を加速させることができます。Linuxに熟練した開発者の広範な人材プールにアクセスできるため、人材の発掘が容易になり、開発者のオンボーディングが促進されるだけでなく、自動車業界のプロプライエタリー・システムによって以前は車載ソフトウェアに取り組む動機に乏しかったのですが、よりスキルの高い技術者やイノベーターを引き付けることができます。多くの優れた人材を集めることで、迅速なイノベーションを実現します。
コストの削減
最適化された開発、安定化、および設計の再利用を通じて、自動車メーカーはコストを節約できます。安全認証を受けたLinuxベースの共通プラットフォームを自動車業界へ拡張することで、様々なブランドや年式の間でより広範なコンポーネントの再利用が可能になり、自動車メーカーは節約された研究開発コストを再投資して、ドライバーや乗客向けにパーソナライズされた独自の体験を生み出すことに注力できます。オープンソース・コミュニティの取り組みもソフトウェアの全般的な品質向上に貢献し、開発および保守コストのさらなる削減につながります。
新たなサービスと収益源の導入
自動車メーカーは、ドライバーの個別的なエコシステムにより深く関与しながら、よりパーソナライズされた直感的なドライビング体験を提供する方向に向かうことで、追加的な収益源と顧客ロイヤルティ向上の可能性が生み出されます。Red Hat In-Vehicle Operating Systemは、自動車メーカーに共通の更新可能なプラットフォームを提供することで、自動車メーカーは、頻繁でシームレスな機能アップグレードと新しいアプリケーションやサービスのデプロイを通じて、顧客の期待に正しく応えることができます。
Red Hatと大手自動車メーカーとの協業の価値は、1つの製品や技術革新に限定されません。Red Hatはオープンソースのリーダーとして、自動車のエコシステムをオープンソースの力で導き、つなぐための専門知識を持っています。Red Hat In-Vehicle Operating Systemにより、Red Hatは、自動車メーカーが新たな標準、すなわちオープンソース・ソフトウェア・デファインド・ビークルに向けて変革を推し進める手助けをしています。
1 SBD Automotive、「ソフトウェア・デファインド・ビークル」(2021年)