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今年初め、当社の Chris Wright (クリス・ライト) が 2024 年における通信サービスプロバイダーの次の進展について考察しました。その取り組みを念頭に、Red Hat では、通信事業者にとっての焦点は、ビジネス全体およびハイブリッド環境のネットワーク、セキュリティ、インフラストラクチャ、アプリケーション全体の運用効率の向上を目的としてインテリジェントな自動化と AI テクノロジーを活用することにあると考えています。その後、Red Hat は Red Hat Summit 2024 で Red Hat Enterprise Linux (RHEL) AI の導入や Red Hat OpenShift AI の強化など、通信事業者が運用の向上、コストの削減、顧客サービスの強化、イノベーションの促進を実現するのに役立つ強力な AI プラットフォームを提供する数々のプロジェクトを発表しました。

本日は、それらの AI 関連の発表内容からいくつかを取り上げ、通信事業者が不正行為検出、高度なデータ管理、自律型のネットワークおよびリソース最適化、ネットワークトラフィック管理、エネルギー管理、チャットボット、パーソナライズされた顧客サポート、無線アクセスネットワーク (RAN) とコアでの AI モデルの活用など、先進的なデジタル・インフラストラクチャによる高い要求に対処しつつ、競争力を高めるのに役立つ取り組みをご紹介します。

Red Hat Enterprise Linux AI の発表

Red Hat は今年、生成 AI モデルをよりシームレスに開発、テスト、デプロイすることを可能にする基盤モデル・プラットフォームである RHEL AI を発表しました。RHEL AI は IBM Research がオープンソースライセンスで提供する大規模言語モデル (LLM) である Granite ファミリー、 LAB (Large-scale Alignment for chatBots) 手法をベースとした InstructLab アライメントツール、 InstructLab プロジェクトを通じたコミュニティ主導のモデル開発アプローチを統合したものです。このソリューション全体が、ハイブリッドクラウド全体で個別サーバーのデプロイに使用できる最適化されたブート可能な RHEL イメージとしてパッケージ化されており、分散クラスタ環境全体でモデルを大規模に構築、トレーニング、チューニング、提供するためのハイブリッド機械学習運用 (MLOps) プラットフォームである Red Hat OpenShift AI の一部としても組み込まれています。

RHEL AI は、AI モデルの開発、実験、ファインチューニングに対する障壁を下げることで通信事業者を支援します。これにより、スキルやハードウェアに大きな先行投資を行うことなく、組織における AI の可能性を追求する計画を開始することがはるかに容易になります。また、データサイエンティストだけでなく幅広い分野の専門家が LLM のトレーニング、チューニング、アライメントに貢献できるようになるので、通信事業者の全体的なカスタマーエクスペリエンスを向上させるのにも役立ちます。これは、データサイエンティストのワークフローを通すことなく、実際にタスクを行う人々が直接入力する情報を使用して、チャットボット、コードアシスタント、顧客サービスなどを構築できるということです。そのため、通信事業者にとって AI はすばやく効率的に実験できるものになり、独自の知識やスキルから派生した AI 機能を構築する道筋も提供します。

Red Hat OpenShift AI で通信事業者の業務を変革

Red Hat Summit で、Red Hat は Red Hat OpenShift AI の新機能を発表しました。Red Hat OpenShift AI は Red Hat OpenShift をベースとして構築されたオープンなハイブリッド AI/ML プラットフォームで、通信事業者が AI 対応アプリケーションをハイブリッドクラウド全体で大規模に作成し、提供できるようにします。今回発表された機能アップデートの一部は以下のとおりです。

  • 特定のユースケースで必要な場合に、シングルノードの Red Hat OpenShift を使用してエッジでリモートロケーションにモデルを提供する (テクノロジープレビュー)
  • 複数のモデルサーバーを使用して予測 AI と生成 AI の両方をサポートする機能を備えた、強化されたモデル提供機能
  • モデル開発と分散モデルトレーニングの改善
  • パフォーマンスや運用メトリクスなどのモデル監視の視覚化

これらの機能強化はすべて、イノベーションを促進し、生産性を高め、AI を通信事業者の日常業務に組み込む能力を向上させます。以下でその方法を説明します。

一般的に言って、モデルのトレーニングと提供機能をエッジに移行することは、セットアップが複雑になるのでコストが大きくなりがちです。しかし、Red Hat OpenShift AI のような共通プラットフォームをコアからエッジまで展開している場合、自動化によってこの作業をより効率的に行えるので、運用コストの削減に役立ちます。インテリジェントな自動化を使用すると、通信事業者はネットワーク運用の効率化、セキュリティ対策の強化、リソース配分の最適化を行うことができます。通信事業者はレガシーシステムのモダナイズと 5G ネットワークの拡大に関連する財政的な圧力に対処しなければならないため、この点は特に重要です。エッジで AI を運用すると、迅速なデータ処理やリアルタイムでの意思決定というメリットが得られ、AI 対応のアプリケーションやサービスのパフォーマンスを大きく高めることができます。このアプローチにより、増大し続けるマシン生成データに対応し、接続性と分析機能を向上させることができます。たとえば、ビジネス顧客向けのデジタルコンシェルジュサービスや、トラフィック監視、負荷管理、インフラストラクチャのチューニング、ネットワークのライフサイクル管理、電力管理などといった通信事業者向けユースケースに対応できるようになります。 

RAN について言えば、RAN で AI モデルを活用することで、周波数、セクター、セル、基地局に対し、単純な時刻指定のプリセット制御よりも動的な制御を行うことが可能になります。AI 技術はチャネル推定や SON の作業にも適用できます。

また、Red Hat OpenShift AI は、AI/ML 機能を標準の DevOps モデルに統合することで MLOps を提供し、AI モデルのライフサイクル全体をカバーします。これには、通信事業者にとって重要な精度を高めるためのファインチューニングに焦点を当てた、AI モデルの構築、トレーニング、提供、監視が含まれます。

通信およびテクノロジー・サービスプロバイダーの大手 Turkcell は、 Red Hat OpenShift を使用して AI サービスのアーキテクチャとアプリケーションハブを構築し、カスタマーエクスペリエンスの変革、運用効率の向上、消費者の多様化の拡大、ビジネスイノベーションの市場投入の迅速化を実現しました。

また、Red Hat はパートナーと協力して、パートナーの最先端の AI テクノロジーと Red Hat OpenShift AI の統合を強化しています。以下で、 AMD、 インテル、 NVIDIA、 Run:ai との発表についてご紹介します。

AMD との緊密な統合により、通信事業者は最新の GPU セットを使用するなど、Red Hat OpenShift でプラットフォームを強化できるようになります。さらに、Red Hat OpenShift AI とインテルの AI ハードウェアの統合を強化することにより、データセンターからクラウド、エッジまでの相互運用性を実現して AI ワークロードの可搬性を高め、どこでも必要な場所で AI ワークロードを構築、実行、デプロイできるようになります。

Red Hat は NVIDIA とのコラボレーションも発表しており、ユーザーは Red Hat OpenShift AI でトレーニングした AI モデルを NVIDIA NIM マイクロサービスと組み合わせて、単一の MLOps プラットフォームで生成 AI 対応アプリケーションを開発できます。これは、サービスプロバイダーがカスタマーサービス用チャットアシスタント、コンプライアンスチェック、マルウェア検出などのコパイロットを構築するための開発プラットフォームとして Red Hat OpenShift を使用するのに役立ちます。

Red Hat は Run:ai と連携して、同社のリソース割り当て AI インフラストラクチャ管理および GPU オーケストレーション機能を Red Hat OpenShift AI に取り入れています。このコラボレーションは、AI 運用の効率化と基盤インフラストラクチャの最適化により、サービスプロバイダーが 5G コアや RAN アプリケーションなどのワークロードに基づいて調整し、チューニングできるインテリジェントなインフラストラクチャを構築するためのリソースを最適化するのに役立ちます。

未来のインテリジェント・ネットワークのための優れた自動化

Red Hat OpenShift および Red Hat Enterprise Linux でエンタープライズ対応 AI を導入できるよう、Red Hat Lightspeed はさまざまなプラットフォームに拡張されています。これは、インテリジェントな自然言語処理能力を提供して Red Hat のエンタープライズグレード Linux とクラウドネイティブ・アプリケーション・プラットフォームを初心者ユーザーにとっても使いやすいものにし、熟練ユーザーがさらに活用できるようにすることを目的としています。

これにより、アプリケーションの管理と開発に Red Hat OpenShift を使用しているか、または RHEL をオペレーティングシステムとして使用している多くの通信事業者は、生成 AI を使用してソフトウェアの作成と提供を加速できます。また、デジタルアシスタントにより IT とネットワークの運用が効率化されるので、中核的または新規のビジネスイノベーションのためにより多くの時間を使うことができます。通信事業者は未来に向けた通信ネットワークの構築、導入、維持管理のためにこれらの自動化ツールを活用でき、かつてないレベルの規模と効率性を獲得することが可能です。

イノベーションを妨げずに規制に準拠

Red Hat は Red Hat Ansible Automation Platform の今後のバージョンに含まれる新しい機能として Automated Policy as Code を発表しました。この機能は、多種多様で増え続ける AI アプリケーションを含むハイブリッドクラウド環境全体でポリシーの適用とコンプライアンスの順守を行うのに役立ちます。Policy as Code は自動化の成熟における 1 つのステップであり、変化し続ける内部および外部の要件に準拠し、AI ワークロードのスケーリングをサポートして無秩序に拡大するインフラストラクチャへの備えを強化することができます。

つまり、通信事業者は次のようなメリットを得ることができます。

  • ポリシーエンジンと Ansible Automation Platform の機能の緊密な統合による、インフラストラクチャにおける全体的なセキュリティ体制の強化
  • 平易な表現でポリシーを定義し、その定義を変換してインフラストラクチャに実装できる機能 (例:do a compliance check on all my switches across the network)
  • 規制要件とコンプライアンスへの準拠がさらに容易になる

Red Hat は製品ポートフォリオを大幅に強化し、通信事業者が予測 AI と生成 AI の両方のモデルを開発、トレーニング、デプロイするためのネイティブ AI 機能を提供しています。Red Hat は、お客様がインフラストラクチャやサービスに AI をより簡単に導入できるよう、引き続きこのオファリングの改善を続けていきます。


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