創造への衝動

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アートとイノベーションの交差点にあるオープンハードウェア

巨大なレーザーカッター、Arduino 開発キット、フェミニストのハッカースペース。Addie Wagenknecht 氏、Rianne Trujillo 氏、Stefanie Wuschitz 氏は出身地もばらばらで経歴もさまざまですが、共通点が 1 つあります。それは、彼女たちが皆、オープンソース・ハードウェアを使ってアートを制作しているということです。また、ニューメキシコの夢のような風景からニューヨークのギャラリーに至るまで、彼女たちは新たなコミュニティを作り、それぞれの分野で女性の影響力を制限してきた障害を取り除いています。

Addie Wagenknecht 氏

Addie Wagenknecht 氏の作品 Kilohydra 2 (Data and Dragons シリーズより)

Addie Wagenknecht 氏

アクセスできなかったものをアクセス可能に

すべては iPhone から始まりました。

2007 年、Addie Wagenknecht 氏はニューヨーク大学のインタラクティブ・テレコミュニケーション・プログラム (ITP) の大学院生でした。iPhone の洗練されたデザインとタッチスクリーンのシンプルさに、彼女は引き付けられました。彼女は iPhone を使っていろいろなことを試してみたいと思いました。iPhone を使い、理解し、さらにこれを何か他のものに変えたいとさえ思いました。

使っていろいろ試したい。

Wagenknecht 氏は、その生まれたてのハードウェアのテストや開発にかかわりたいと望んでいるのは彼女だけではないことに気付きました。しかし、彼女はそれを実行に移せる状態にありませんでした。iPhone のマルチタッチ・テクノロジーはプロプライエタリー技術であり、それにアクセスするためのツールは高価で、ほとんどの場合 10 万ドルはしました。

すでに教科書や家賃に途方もない金額を費やしている学生にとって、iPhone をいじくりまわすためのお金を出すなど無理なことのように思えました。

興奮は高まりましたが、やがて薄れ始めました。「入手できそうにないものを入手可能にするにはどうすればよいのだろう。自分で作るか、作ってくれる人を探す以外に方法はあるのか」と Wagenknecht 氏は考えました。

彼女はここで諦めず、自分で作ることにしました。そして、オープンソースのハードウェアとソフトウェアを使用してマルチタッチシステムの開発に着手しました。しかし、これは彼女が想像していたよりも大変な作業でした。

神経の痙攣のような創造への衝動

Wagenknecht 氏は 1980 年代初頭のコンピュータ世代です。幼稚園時代には「オレゴン・トレイル」で遊び、近所の人が NES (海外版のファミリーコンピュータ) を手に入れたときには、「スーパーマリオブラザーズ」、「ダックハント」、「スケート・オア・ダイ!」で何時間も遊びました。彼女のお母さんは Macintosh SE を持っていました。このようなテクノロジーはすべて彼女の手の届くところにあったので、踏み入ることのできない聖域などにはなりませんでした。

Wagenknecht 氏は、ほどなくして自分の周囲にあるテクノロジーを使ってアートを作り出すことができることに気付きました。彼女が自らをクリエイティブに表現するために使い始めたさまざまなプログラムやゲームの中でも、1989 年に Macintosh 用に発売されたビットマップ描画プログラムの Kid Pix はとくに役に立ちました。

「サウンドやクールなエフェクト、ペイントブラシ、爆発エフェクトといった機能を使いながら、Mac Paint でクレイジーなグリッチアートをつくることができました」と Wagenknecht 氏は語ります。

彼女の置かれていた環境と、いろいろなことを試せる自由、そして彼女の生まれ持った創作意欲が、アートを彼女の人生に融合させたのです。彼女が何かをつくらなければならないというプレッシャーを感じたことは一度もありません。ただつくりたいという思いが形となりました。

「アートへの衝動をすべて形にできたかどうかはわかりません」と彼女は語ります。「この創造への衝動は神経の痙攣のように生じるものだと感じています。私にとって創作活動は、何か理由があるからするのではなく、自分にとって必要なことなのです。物を書いたり表現したりするのと同じで、これをキャリアパスだと考えたことはありませんでした」

彼女はオレゴン大学に通いながらマルチメディアとコンピュータ・サイエンスを学び、フロントエンドの Web 開発者になろうと考えていました。ゲーム開発のクラスを受講し、家庭用コンピュータゲーム業界のパイオニアである Electronic Arts で働くことを夢見ていました。大学卒業後はいくつかの独立系ゲーム会社で働きました。ゲーム開発は、創造性に富み、かつ数学的であるという点で有効なキャリアパスだと思っていました。

「[創造への衝動は] 神経の痙攣のように生じるものだと感じています。私にとって創作活動は、何か理由があるからするのではなく、自分にとって必要なことなのです。

Seattle Black Hawk Paint パフォーマンス (Michael Clinard 氏の厚意による) は CC BY-NC-ND 2.0 の下でライセンスされています

Wagenknecht 氏は ITP で大学院の勉強を続けました。そこで彼女は同じ考えを持つ人々、つまり、実験し、作り、壊そうとしている人々を見つけました。彼女はアートを真剣に追求することについて考えましたが、それを本業にするために必要な相談相手や青写真がないことに気づきました。

Wagenknecht 氏は結局、アートとテクノロジーの両分野で気心の合う人に出会いました。

彼女は ITP の展示会でデータ処理にレーザーを使用するトラッカーを作成しました。これは他のアーティストが開発しているプロジェクトに似ていました。このアーティストとは James Powderly 氏であり、たまたま訪れたその展示会で彼女の作品を目にしました。

彼は Wagenknecht 氏に声をかけました。「初めまして、私は James Powderly と申します。私もあなたと似たようなものを作ったのですが、あなたの作品の方が良さそうですね。」これをきっかけに、二人は共同作業を開始することになりました。数カ月後、Wagenknecht 氏が Eyebeam Art & Technology Center の研修のための面接を受けに行くと、Powderly 氏が面接官としてそこにいました。

その後、Powderly 氏は彼女の最大の支持者の 1 人になり、彼女の作品を最初に推奨した人々の 1 人になりました。Powderly 氏はオープンソースのパンクロック的な側面の体現に取り組み、問題が悪化していると思われる時には解決するために立ち上がり、そのすべてに底抜けのポジティブさで臨むアプローチを取りました。

Optimization of Parenthood (Addie Wagenknecht 氏 および Nortd Labs による) は CC BY-NC-ND 2.0 の下でライセンスされています
(gold) brickiphone (Addie Wagenknecht 氏による) は CC BY-NC-ND 2.0 の下でライセンスされています

パーツの組み合わせ

F.A.T. LAB と Nortd Labs

Eyebeam に在籍中、Wagenknecht 氏は Free Art & Technology (F.A.T.) Lab に参加しました。これは、オープンな文化、テクノロジー、アートを楽しみ、作品に笑いをもたらすことに焦点を当てたコラボレーションです。このグループの人々は、人々が自由にラボの外でも使用できるアートやプログラムを作成したいと考えていました。また、最終作品を提供するだけでなく、アートの制作に使用したプロセスやツールも共有しました。

多くの場合、アートはプロプライエタリーな要素の強い活動です。アーティストは、自らのアプローチやインスピレーション、プロセスを自分自身の中に留める傾向があります。彼らは自分の作品を見てくれる人たちに、彼らのユニーク性を見てもらいたいと思っています。F.A.T. Lab はこれとは反対に、アートをよりアクセスしやすく、理解しやすく、共感を得やすいものにすることを目指していました。

Wagenknecht 氏にとって最も重要なオープンハードウェア・プロジェクトの 1 つは、ある研修がきっかけとなって生まれました。研修前に、彼女はレーザーカッターを使用したことがありませんでした。iPhone 用の開発に必要だったハードウェアと同様、レーザーカッターも入手できなかったからです。クリエイターがアート作品をつくるためのツールはいつでもどこでも入手できるようになりつつありましたが、それは、有り余るほどのお金がある場合に限られました。

Wagenknecht 氏にはそんなお金はありませんでした。

しかし、Wagenknecht 氏にはアイデアがありました。まず、Wagenknecht 氏と ITP の同僚である Stefan Hechenberger 氏は、レーザーカッターをもっと身近なものにしようと考えました。そして、Kickstarter で 20,000 ドルを調達してから 6 カ月でオープンソースのレーザーカッターを開発しました。この Lasersaur は、市販のレーザーカッターと同じくらい信頼性が高く、これを使用したい、あるいは改良したいと考えるアーティスト、メーカー、科学者なら誰でも利用できました。

さらに Wagenknecht 氏と Hechenberger 氏は、Lasersaur などの将来のオープンソース・プロジェクトをサポートできるインフラストラクチャを構築するために、 Nortd Labs を立ち上げました。両氏は Nortd を商業ベースでモデル化し、部品表や説明書、オープンソースプロジェクトの作成と共有のためのフレームワークを用意しました。Nortd Labs のメンバーは、自分たちが作成するプロジェクトをコミュニティにさらに発展させてほしいと願っています。

yagersaur day 2 (Addie Wagenknecht 氏 による) は CC BY-NC-ND 2.0 の下でライセンスされています
new lasersaur stickers have arrived (Addie Wagenknecht 氏による) は CC BY-NC-ND 2.0 の下でライセンスされています
lasersaur at CMU/STUDIO of Creative Inquiry (Addie Wagenknecht 氏による) は CC BY-NC-ND 2.0 の下でライセンスされています
lasersaur/nortd labs at STUDIO for creative inquiry/CMU (Addie Wagenknecht 氏による) は CC BY-NC-ND 2.0 の下でライセンスされています

DEEP LAB

2011 年、Wagenknecht 氏は暗号化とブロックチェーン技術に関心を持つようになり、それが彼女のアート作品に現れ始めました。彼女はハッカースペースで作業し、それまでの個人の作業から、学びの場を共有できる人々のコミュニティを見つけることに自身のフォーカスを切り替えました。彼女は暗号化に関連する会議について調べましたが、当然のことながら、それらの会議の対象は主に男性であり、出席者もほとんどが男性でした。彼女はこの分野に取り組む女性たちがいることは知っていましたが、実際に誰が何をしているのかはわかりませんでした。

F.A.T. Lab でも 25 人中、女性は 2 人だけでした。彼女はグループ内の男性を自分の作業をサポートしてくれる兄弟たちのように考えていましたが、女性たちによるコラボレーションとは一体どのようなものか、また暗号化の分野に女性が増えたらどうなるだろうかと考えました。そして、女性がさらに活躍できる場をつくる方法を考え始めました。

2014 年、Wagenknecht 氏はカーネギーメロン大学 (CMU) の Studio for Creative Inquiry から連絡を受けました。プログラム担当ディレクターである Golan Levin 氏は、芸術的表現とテクノロジーを組み合わせるプロジェクトに取り組むアーティストであり、教育者です。Levin 氏は、Wagenknecht 氏がドローンを使って描いた絵画など、監視をテーマにした彼女の作品に精通していました。「Black Hawk Paint」と題されたそれらの作品群は、ニューヨークで開催された、アメリカでの彼女の初個展である Shellshock で展示されたものでした。また別の作品である「Asymmetric Love」は、CCTV カメラとイーサネット・インターネットケーブルで構成されたシャンデリアが登場しました。

Levin 氏は、これらの作品はいずれも、Wagenknecht 氏がアンディ・ウォーホル舞台芸術財団 (Andy Warhol Foundation for the Performing Arts) による研究助成金を受けるのに適した優れた候補であることを示すものだと考えました。

Asymmetric Love High Res (Addie Wagenknecht 氏による) は CC BY-NC-ND 2.0 の下でライセンスされています
Seattle Black Hawk Paint パフォーマンス (Michael Clinard 氏の厚意による) は CC BY-NC-ND 2.0 の下でライセンスされています

Wagenknecht 氏は、Levin 氏、ウォーホル財団、CMU からの財政的および学術的支援を受けて、暗号学に取り組む作家、アーティスト、研究者、エンジニアなどの女性グループを 1 週間同じスペースに集め、プライバシー、セキュリティ、監視、匿名性、大規模なデータ集約のようなテーマは、芸術、文化、社会においてどのように問題になる可能性があるかについて話し合いました。

「全員を 1 つの部屋に集めたかったのです。Wi-Fi とキーだけをもらって、何が起こるかを見てみたいと思いました」と Wagenknecht 氏は語ります。「[Levin 氏は] はそれを快諾してくれて、それが始まりとなりました。私たち女性は、カーネギーメロン大学の見知らぬ場所で、オフラインでは一度も会ったことがない者同士で集まりました」

グループの言葉を引用すると、Deep Lab 共同体は次の理由で生まれました。

「なぜなら、一緒にいたかったから。なぜなら、元々コンピュータは女性だったから。なぜなら、やるしかないから。なぜなら、集まればより強くなれるから。なぜなら、自分とのつながりを大切にしたいから。なぜなら、共有することは思いやることだから。なぜなら、もっと深く掘り下げたいから。なぜなら、女子はただ楽しみたいと思っているから。なぜなら、許可を求める必要はないから」

グループが共にした 1 週間は、ハッカソンでもあり、シャレットでもあり、マイクロカンファレンスでもありました。彼女たちの取り組みは、オープンな文化とオープンな人間性が結び付くとどんなことが可能になるかを示すものです。このプロジェクトでは、240 ページの本、メンバーによる 10 のプレゼンテーションを収めた動画アルバム、そして 18 分のドキュメンタリー映画が作成されました。これらのリソースはすべて、Studio for Creative Inquiry を通じて公開されています。

Deep Lab ブック (STUDIO for Creative Inquiry による)

なぜなら、一緒にいたかったから。なぜなら、元々コンピュータは女性だったから。なぜなら、やるしかないから。なぜなら、集まればより強くなれるから。なぜなら、自分とのつながりを大切にしたいから。なぜなら、共有することは思いやることだから。なぜなら、もっと深く掘り下げたいから。なぜなら、女子はただ楽しみたいと思っているから。なぜなら、許可を求める必要はないから」

作業中の Cyberfeminist の研究者たち
Deep Lab ドキュメンタリーからのクリップ
Deep Lab ドキュメンタリーのスチール写真
Addie Wagenknecht 氏

世界を拓く

Lasersaur プロジェクトにより、Wagenknecht 氏は最初の Open Source Hardware Summit の 1 つで講演会を行うことになりました。これらのイベントを通じて、彼女はオープンソース・コミュニティの一員となり、新たな協力者と出会い、最終的には彼女自身がサミットの議長になりました。

Wagenknecht 氏は、複数のオープンソース・ハードウェア・プロジェクトを立ち上げた経験を生かし、世界中のギャラリーで彼女の作品を販売することについて合意に達しました。彼女は自身の成功を生かし、意欲的なアーティスト、とくに女性たちを、自身が経験したような困難をあえて経験する必要がなくなるように支援しています。

「私がアーティストとして行う講義の多くは、単に自分の作品を見せたり、アートへの取り組み方を語るものではありません。それについて、私は誰からも教わりませんでした。私たちがしていることはビジネスであり、生き残るためにはいくつかのことを知っておく必要があります。女性に関して興味深い事実があります。アートを専攻する学生の 86% は女性なのですが、本職にしている人の内の女性の割合は 2% にも満たないことが多いのです。これらの女性たちはどこに行ってしまうのか、と考える必要があります」

これらの女性たちはどこに行ってしまうのか、と考える必要があります」

Wagenknecht 氏は、アートを職業にする方法がわからないというアーティスト志望者たちを指導しています。最近、彼女はプロのアーティストを目指す大学生や大学院生の授業で話をすることがよくあり、「透明性が欠如していること」(実際に作品を設置する方法や、メディアやギャラリーへのアプローチ方法、作品をアーカイブ化する方法などを含む) についてよく話をします。

また、Wagenknecht 氏は CMU でアートを志す 2 人の若い学生も指導しています。二人ともすでに卒業しており、今は自分の作品を販売してくれるギャラリーを探しています。Wagenknecht 氏は彼らをその分野に詳しい人々と結び付けることで、彼らが見通しのよくない道のりでも進んで行けるように手助けしています。

Wagenknecht 氏は他のアーティストをサポートするようにしています。それは、コラボレーションによって最終的により良い作品を生み出すことができ、アーティストがプロジェクトを放棄したり、最悪の場合にはアートを完全に辞めてしまったりするのを防ぐことができると考えているからです。彼女は他のアーティストに自分の作品を実際にどのように作ったかを伝えます。また、他の定評のあるアーティストで支援または指導をしてくれそうな人を探し、新人たちを彼らに紹介します。さらに、推奨できることやより良いエクスペリエンスを可能にするツールの使い方を人々に教え、そのためのプロセスを明確に伝えます。

2017 年の Open Source Hardware Association Summit で開会の辞を述べる Wagenknecht 氏
2017 年の Open Source Hardware Association Summit で開会の辞を述べる Wagenknecht 氏

Wagenknecht 氏は、自らのキャリア全体を通して、オープンソース・テクノロジー、オープンな文化、オープンな人間性を発揮してアートを生み出すプロセスの最適化に取り組んできました。彼女は常に、何かを土台から作り直す (いわばタッチスクリーンから作り直す) 必要はないと考えていました。

2008 年、Wagenknecht 氏と彼女の Nortd Labs のパートナーである Stefan Hechenberger 氏は、拡散照明 (DI) を使用して CUBIT マルチタッチシステムを作成しました。これは、赤外線を画面の上または下から当てて使用する DIY のマルチタッチ・テクノロジーです。CUBIT は、マウスポインターのパラダイムから脱却し、ビジュアルコンピューティングを再定義できるように設計されました。Wagenknecht 氏は、オープンソースのハードウェアとソフトウェアを使用して iPhone 向けの開発を行い、他の人もこれに続いて開発できるようになりました。

Wagenknecht 氏は、CUBIT や Lasersaur などのプロジェクトを開発することで、アクセスできなかったものをアクセス可能にしました。彼女は、テクノロジーが高価で、助けも得られないからと諦めるのではなく、必要なツールを自分で作り、それらをアクセス可能にして、次世代のオープンソース・ハードウェアのクリエイターを導く存在になりました。彼女の取り組みは、長期にわたって影響を与え、進化し、変化し続ける作品をつくるには、物を壊し、実験し、自ら仕組みを理解することが重要であることを証明しています。こうすることで、最終的には世界との共有が可能になります。

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Rianne Trujillo 氏

アンダーソンアブルッツォ・アルバカーキ国際気球博物館のインタラクティブ・タッチテーブル

文化とテクノロジーが交差する場所

Rianne Trujillo 氏は、自然界への畏敬の念を抱きながら幼少期を過ごしました。

他の同年代の子供たちがテレビを見たり、誰がファミリーコンピュータを使うかを争ったりしている中、彼女は近所の子供たちと一緒に自転車に乗ったり、ニューメキシコの岩だらけの土地を探検したりしていました。

彼女は新しい場所を探索し、それらについて学ぶことに多くの時間を費やしました。彼女は、ゴッホとジョージア・オキーフの作品に触発されて絵を描くのが大好きになり、祖父母と一緒にニューメキシコ州とその周辺の州への車での旅に出かけました。旅の途中、彼らは夢のように広大な風景の中を通り抜けました。次の目的地 (通常は博物館や国立公園) への移動中には、平らな山々、峡谷、ユニークな形をした岩、色とりどりの夕日を目にしました。その後も彼女はさまざまなことを吸収し、人や場所について学ぶさまざまな機会を得ました。

彼女は、いつかは自分が展示会をデザインし、プログラムして、人々を助けるようになるとは思ってもいませんでした。

オープンソースの展示

Trujillo 氏は、ニューメキシコハイランズ大学 (NMHU) の客員講師です。また、NMHU の研究開発プログラムである Cultural Technology Department Lab (CTDL) の主任開発者でもあります。CTDL では、大学の教員が博物館のパートナーと協力して展示用のオープンソース・ハードウェアを構築しています。「結局のところ、私は学ぶことに最も情熱を注いでいます」と Trujillo 氏は語ります。「開発者としては、常に最新の技術を取り入れることが重要です。また、これには新しい開発方法を学ぶ姿勢が必要だと思います」。彼女が今年の授業で扱ったトピックやフレームワークのいくつかは、文化施設のソリューションを生み出すための彼女の研究内容を示すものとなっています。

2017 年の Open Source Hardware Association Summit で講演する Trujillo 氏

「結局のところ、私は学ぶことに最も情熱を注いでいます

CTDL グループは、主にニューメキシコ州の文化博物館や歴史博物館、全国の国立公園や史跡の関係者と協力して、テクノロジーおよびデザインのソリューションを構築しています。

これらのソリューションの 1 つが、グループ内ですべて開発されたオープンソース・ハードウェア開発キットの Museduino です。

博物館で、センサーやボタンをクリックするとコンテンツを操作したり、詳細情報 (たとえば、氷河期後に絶滅した動物に関する情報など) を確認できる展示を見たことがある方は、Museduino は、博物館のスタッフがこのようなテクノロジーを構築し、導入することを支援するものであると考えることができます。

Trujillo 氏は、2015 年にアカディア国立公園で取り組んだプロジェクトをはじめ、最大級の課題を呈するプロジェクトに取り組むことから最高の満足感を得られると言います。「私にとって、スクリーンベースのインタラクションから離れ、実際に物理的な世界のために何かを作れるというのは本当に素晴らしいことです」と Trujillo 氏は述べています。

その国立公園は、CTDL チームにタッチレールの作成を要望していました。訪問者はタッチレールの左側か右側に触れることで、湿地の生物と外洋の生態系の音を比較し、対比できることになっていました。Trujillo 氏と彼女のチームは、レールの上に配置された金属製のクランプに 2 つのタッチセンサーを入れて使用する予定でした。このタッチセンサーにより、訪問者が展示のインタラクティブないくつかの部分に触れることができるようにすることが理想でした。しかし実際には、それは不可能なことでした。金属製のレールが使われることになっており、これによりスイッチだけでなく、レールのすべての部分が導電性を持つようになるためです。

導電性の問題により、アカディア国立公園の CTDL の作業は頓挫しかける
Museduino による静電容量方式タッチセンサー
アカディア国立公園での海岸に生息する鳥の卵のマッチングゲーム展示のデモ

チームは行き詰まりました。アカディア国立公園は連邦政府機関の一部であり、予算が決まっているため、他の選択肢を早急に検討する必要がありました。

チームは、スイッチをレールから切り離すために多くのテストを行いましたが、成功しませんでした。何度試しても、うまくいきませんでした。それで、プラスチック製のアーケードボタンを試すことにしました。その結果、そのボタンは使いやすく、操作も簡単で、導電性の問題もないことがわかりました。最終的にはこれを使用して、展示を完成することができました。

次に Trujillo 氏と CTDL チームはグリネル大学で別のプロジェクトに取り組みましたが、また別の課題が生じました。彼らは 14 人の学生と共に、2 月にアイオワで 5 日間にわたり、13 の異なる夜間インスタレーションに取り組みました。これらアートを志す学生たちは電子機器に不慣れだったので、CTDL のスタッフは彼らに Arduino の基本を教え、各種のセンサーやアクチュエーターを使って何ができるかを実際に見せました。「これにより、学生たちはセンサーやアクチュエーターを自分の作品に組み込む方法についてより深く理解できるようになりました」と Trujillo 氏は述べています。

しかし、Trujillo 氏と同僚たちは、低温が電子機器にどのような影響を与えるかを考慮に入れていませんでした。時期は 2 月で、外の気温は氷点下 5 度になりました。そして学生の多くは、インスタレーションの屋外の場所を選びました。

CTDL チームが Christine さんの光と音の作品をグリネル大学のキャンパスのベンチに設置するのを手伝う
雪の中に設置された Cheng さんの Insomniac Sheep という作品

「ここで私たちは課題に直面しました」と Trujillo 氏は語ります。「提案された設置スペースの多くには近くに電源コンセントがなく、場所を変える必要がありました。場所を変えられない場合は、バッテリー電源や延長ケーブルを使うしかありませんでした。Arduino の定格は 0 度を下回りますが、9V 電池は 35 分ほどで残量が 0 になりました。寒さは他の問題も引き起こしました。ワイヤーが弱く、壊れやすくなり、電気が通らなくなりました。また、ダクトテープが貼り付かなくなり、センサーが機能しなくなりました。

このような状態にもかかわらず、インスタレーションは機能し、ツアーを続行できました。CTDL の調査員たちは、次回このような過酷な条件で作業する際には、バッテリー用の携帯カイロをストックしておく必要があることを学びました。Trujillo 氏はグリンネルの学生たちに対し、このように立ち直りが早く、協力的なチームの助けがあれば、クリエイティブな思考と根性で障害を克服することは可能であるということを教えました。

「私にとって、スクリーンベースのインタラクションから離れ、実際に物理的な世界のために何かを作れるというのは本当に素晴らしいことです」

すべての人のためのアート

CTDL は、デジタル化を最初のステップとする小規模な機関と協力することが多くあります。オンラインコレクションは、一般の人々、とくに施設を直接訪れることができない人々にとって、芸術や歴史についてさらに多くのことを学ぶための優れた方法になります。しかし、Trujillo 氏と彼女のチームが実証しているように、アートとテクノロジーについては、単にこれらを一般の人々にとってアクセス可能とするだけでなく、博物館自体にもアクセス可能にする方法が数多くあります。

博物館がプロプライエタリなソフトウェアやハードウェアを使用している場合、多額の投資をしたテクノロジーが更新できず、使えない状態となることがよくあります。Trujillo 氏と CTDL は、オープンソース・テクノロジーの使用は、予算やスタッフが限られている博物館や文化施設にとってメリットになると考えています。なぜなら、彼らがすでに持っているものを最大限に活用できるからです。オープンソースソフトウェアは無料で、ハードウェアはかなり安価であり、プロジェクトはオンラインで十分に文書化されています。博物館のスタッフは、自分自身で問題を解決することが可能になります。

Raspberry Pi フォトブースのデモ
デンバーでの Trujillo 氏

テクノロジーの既成概念を覆す

Trujillo 氏は、新しいプロジェクトに参加する際には常に、その関わり方について考え、既存コレクションの新たな側面を引き立たせ、最終的に訪問者を魅了するにはどのような種類のテクノロジーを使用できるかについて考えます。試行錯誤を重ねる過程では失敗もありますが、彼女がアカディア国立公園とグリネル大学で経験したように、この過程から学習する機会も生まれます。

Trujillo 氏は、博物館はコレクションを共有するだけでなく、舞台裏で使用しているハードウェアの一部を公開することもできると考えています。

博物館や文化施設の専門家は、インスタレーションについて説明し、ツール、プロセス、手法を共有することで、テクノロジーは難しい、これを理解して使用するにはコンピュータサイエンスの学位が必要である、組織内でテクノロジーを構築したり保守したりすることはできない、といったよくある既成概念を覆すことができます。実際のところ、テクノロジーは難しくありませんし、学位も不要ですし、構築や保守は間違いなく可能です。

オープンハードウェアは依然として男性中心の分野ですが、Trujillo 氏は、プロジェクトにより多くの女性が参加することを期待しています。STEM 教育、プログラミング、物理コンピューティングに焦点を当てた包括的なプログラムやメーカースペースのおかげもあり、オープンハードウェアやその他の STEM 分野で働きたいと考える女の子や女性が増えています。

「男性と女性の比率は大きく変わっていませんが、性別を問わず、私たちは皆が何でもできるということを自覚する必要があります。オープンハードウェアに興味があり、自分がしていることが好きであることが重要なポイントになります」

デンバーでの著者と Trujillo 氏

「性別を問わず、私たちは皆が何でもできるということを自覚する必要があります」

Trujillo 氏の活動と学びはここで終わりません。彼女と CTDL チームは、Museduino に関する別の取り組みの真っ只中にいます。Museduino にいくつかの変更を加えており、ExpressPCB の使用を開始後はそのソフトウェア内で設計していましたが、現在は Kicad に切り替えています。彼女たちは、その基板への変更の次の反復に備え、新たなプロジェクトへの実装を行っています。

彼女は現在、自身がオープンハードウェアへの興味を持つきっかけになった物理コンピューティングの授業も担当しています。

Trujillo 氏は子供の頃、祖父母の車の後部座席に座って絵を描き、ニューメキシコの地平線を眺めるのが好きでした。大人になった今、彼女はオープンソース・ハードウェアとオープンソースの原則を活用し、十分な機会を得られないかもしれない人々にも同様の学びへの愛情と好奇心を持ってもらえるよう最前線で取り組んでいます。

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Stefanie Wuschitz 氏

参加による解放

部屋を見回したときに自分と似たような人がいないと、閉所恐怖症的な感覚と孤独を同時に感じることがあります。Stefanie Wuschitz 氏はこのことをよく知っています。

大学卒業後、Wuschitz 氏は自らのメディアアートをプログラミングするスキルや、プロジェクトをプログラミングするために人を雇う資金がないことに気付きました。そこで彼女は、多くの人々がするように、このスキルを教えてくれるコミュニティを探し始めました。彼女はハッカースペースで時間を過ごし、技術交流会、ラボ、ワークショップに参加しました。

しかし、男性ばかりの部屋に女性が一人しかいないということが、いかに孤立感をもたらすかに気付き始めました。

ただし、オランダのフェミニストプログラマー集団 Gender Changers が主催する Eclectic Tech Carnival だけは他とは異なっていました。そこには、60 代の熱意に溢れた、多くのすご腕たちが揃っていました。

「... すべてが女性、または自らを女性と定義する人たちでした。これほどのクールでハイテクな女性たちに会ったことはありませんでした。彼女たちには、オープンソース一筋であり、なぜオープンソースなのか、なぜ Linux なのか、それが何を意味するのかについて、またオープンソース・テクノロジーを使って物事を行い、修正し、作成することがどのように自らを解放することになるのかについての強いこだわりがありました」

彼女は非常に多くの女性がオープンソース・テクノロジーを使用してプロジェクトを推進しているのを見て、自分もその方法を学ぶようになりました。そして彼女は、Eclectic Tech Carnival で得られる興奮、エネルギー、情熱を、女性たちが一年中体験できる場所があったらどうなるだろうかと考えました。

「彼女たちには、オープンソース一筋であり、なぜオープンソースなのか、なぜ Linux なのか、そしてそれが何を意味するのかについての強いこだわりがありました」

Tech ladies (Stefanie Wuschitz 氏による)

Wuschitz 氏は Eclectic Tech Carnival から戻った後、ニューヨーク大学のインタラクティブ・テレコミュニケーション・プログラム (ITP) に参加し、アートのプロジェクトにテクノロジー、つまりオープンソースのハードウェアとソフトウェアを取り入れる方法を学びました。ITP で知り合った仲間は、デザイナー、役者、作家、技術者と多様な人々でした。このグループは男性と女性が半々でした。また、多くの学生は米国外から来ていました。プログラムのディレクターである Red Burns 氏は、学生たちが協力し、相互に学ぶように促しました。

その後、Wuschitz 氏は Humlab でデジタルアートの研修に参加しました。これは、アーティストやデザイナーをアートをベースとする研究に招待するスウェーデンのデジタル人文学のプログラムです。Humlab にて、Wuschitz 氏は Mz* Baltazar's Laboratory を共同設立し、女性たちが Eclectic Tech Carnival の精神でオープンソース・テクノロジーのプロジェクトに年間を通して取り組める場を作り、そこで ITP で始めた Arduino プログラミングの作業を継続しました。彼女の目標は、女性の視点からアートの制作とテクノロジーに専念できる場を確保することでした。

フェミニズム、アート、テクノロジーの交差点

フェミニズムは Wuschitz 氏の作品に不可欠な要素です。また身体を探求することや、アートによって自分自身とのつながりを深める方法も不可欠です。もう 1 つの核となる要素は、ピアツーピアのプロダクション、つまり人々がリソースを共有する方法とそのための取り組みによってどのように社会に変化をもたらせるかという点です。これらすべてのテーマの中心にあるのは、自己表現、自分の意見を見つけてそれを持つこと、公共の場に参加すること、そしてアイデンティティの理解を問うことです。

Wuschitz 氏は 15 歳でイタリアを旅行していたとき、美術展に行ってスイスの動画アーティストである Pipilotti Rist 氏の作品を見ました。「Ever is Over All」と題された映像では、美しい青いドレスを着た女性が街の通りをスローモーションで歩いており、笑顔を浮かべ、ジャンプしたりと、幸せそうな様子です。そして彼女は花の形をしたハンマーで車の窓を、手当たり次第にたたき壊します。女性警察官が彼女を見て丁寧に挨拶をし、その場を離れます。

Pipilotti Rist 「Ever Is Over All」1997 年
© Pipilotti Rist; Courtesy of the artist, Luhring Augustine, New York, and Hauser & Wirth.
Pipilotti Rist 「Ever Is Over All」1997 年 © Pipilotti Rist; Courtesy of the artist, Luhring Augustine, New York, and Hauser & Wirth.
デジタル画像 © The Museum of Modern Art/Licensed by SCALA / Art Resource, NY

「なんと攻撃的で、でも幸せそうな女の人なのだろう」と Wuschitz 氏はその作品を見て思いました。「しかも、こんなことをしても刑務所行きにならないなんて」

この作品を見て、Wuschitz 氏は、女性の可能性に目を向けました。また、この作品は彼女にアートの力を示すものでした。他人にショックを与えるかもしれない方法でも、自身を自由に表現するのは可能だということを知りました。

さらに、この映像の作成方法も、スクリーン上の映像と同じくらい Wuschitz 氏の心を動かすものでした。アートディレクションや、さまざまなフォーマットやメディアが混在していることにも、彼女は感銘を受けました。そこで彼女はこれらのテクニックを習得するべく学び始めました。彼女が高校生のとき、美術の先生はコンピュータアートと動画の編集方法を教えてくれました。そのため、彼女は早い段階で、テクノロジーとはアートを通して自分を表現するのに役立つ手段であることを学びました。テクノロジーはツールにも、媒体にも、あるいはアートそのものの主題にもなります。

「自分自身とつながることは常に重要です。これは Mz* Baltazar's Laboratory にとっても重要なことです。私たちは展覧会を企画したり、キュレーターを招いて展覧会を開催したり、ワークショップを行ったり、人を招いてワークショップを行ったりするだけではなく、展示会やコンセプトの立案も行っています。私たちのチームのほとんどのメンバーは、研究、フェミニズム、アートの交差点で活躍しています。

Wuschitz 氏と Mz* Baltazar's Laboratory

「私たちのチームのほとんどのメンバーは研究、フェミニズム、アートの交差点で活躍しています」

自分の部屋

Eclectic Tech Carnival を通じて、集まり合い、知識を共有し、相互に励まし合うことがもたらすパワーを目の当たりにした Wuschitz 氏は、共同創設者とともに Mz* Baltazar's Laboratory を設立しました。彼女は、女性であると自認する人々が電子機器とオープンハードウェアを使ってアートを制作し、これを体験できる場を作りたいと考えました。

その後、彼女は別の Eclectic Tech Carnival を主催し、Gender Changers のイベントの形式を踏襲して実行しました。Wuschitz 氏はそれをスウェーデンで主催しました。すると、彼女が以前のプログラムやアートイベントで出会った女性たちが押し寄せてきました。さまざまな背景、地域、分野の女性が集まり、制作や実験を共に行う様子は刺激的でした。彼女はこれがいつまでも続いてほしいと願い、同じ原則に基づく会合を毎週主催するようになりました。

当初は、Wuschitz 氏の男性の友人や同僚も何人か参加していました。しかし、多くの女性アーティストがその場を自分たちのためのスペースだと感じることができず、徐々に来なくなっていることに彼女は気付きました。そこで Wuschitz 氏はトランスジェンダーの女性やジェンダー・ノンコンフォーミングの人たちを含め、女性アーティストだけを受け入れるようにしました。その結果、女性たちが一斉に参加し始め、さまざまな素晴らしいアイデアがもたらされるようになりました。

オープンソースのテクノロジーとハードウェアを利用できるようになると、彼女たちはロボットや車ではなく、火を噴くモンスターのようなものを作っていました。それを見て私も『こんな風にテクノロジーを使いたい』と思いました」

「オープンソースのテクノロジーとハードウェアを利用できるようになると、彼女たちはロボットや車ではなく、火を噴くモンスターのようなものを作っていました。それを見て私も『こんな風にテクノロジーを使いたい』と思いました。テクノロジーは問題解決のためだけに使うというお決まりのパターンにはまらず、テクノロジーをアートのために使用したかったのです」

Mz* Baltazar's Laboratory では、ワークショップと美術展を同じ割合で開催するようになっています。

訪問者はいつでも、オープンソースのマッピングツールの使用方法、Linux のインストール、オープンソースのオーディオツールの使用方法などを学ぶことができます。Wuschitz 氏は、このラボが、個展を開催したことのない女性アーティストやアートギャラリーやハッカースペースに行ったことのない飛び込みの訪問者など、初心者のための安全なスペースであると見なしています。彼女は、誰もがありのままの自分でいられる、自由でオープンで友好的な場所であると感じてほしいと考えています。ここでは、耳を傾ける人たちと共に、意義あるテーマについてオープンに議論することができます。

このラボは、はんだ付け、コーディング、またはテクノロジーを使った実験などは厳密には男性がすることだという既成概念を打ち破ります。Mz* Baltazar's Laboratory では、そのような概念は通用しません。物を壊したり、何か新しいことを試したりしても全く問題になりません。

「誰もが互いに共感し、他の人に自分を重ねます。一種のクローン効果のようなものですね」と Wuschitz 氏は語ります。「彼女たち (女性の参加者) は、『ここには私のような人たちがいる。彼女はあんな風にプログラミングができて、私も彼女に似ているのであれば、きっと私にもプログラミングができるはず』と考えます。習得が遅くなる人々は、自分の中で『私にできるだろうか。私がやってもいいのだろうか』という問いと戦っているからだと思います。言葉にならないところで多くのことを考えているのです」

だからこそ、Wuschitz 氏と彼女の同僚は、ここのような恐怖心とそれを抱く女性たちに配慮したスペースを作ったのであり、 それが功を奏しています。

「彼女たち (女性の参加者) は、『ここには私のような人がいる。彼女はあんな風にプログラミングができて、私も彼女に似ているのであれば、きっと私にもプログラミングができるはず』と考えます」

Mz* Baltazar's Laboratory の女性たち
Mz* Baltazar's Laboratory のワークショップに出席している Wuschitz 氏 (2018 年 1 月)

Mz* Baltazar's Laboratory の立ち上げは容易ではありませんでした。オーストリアは大きな政治的変化に直面しており、この動きは Mz* Baltazar's Laboratory のような、テクノロジーやアート関連のプログラムへの資金提供を政府に依存している組織に影響を及ぼしています。ラボは会費を請求しておらず、Wuschitz 氏は今後もこれを変更する予定はありません。

私たちの課題としては、フリーランスアーティストの場合に共同作業のための定期的な時間を確保するのが難しいことや、リーダーが交代することなどがあります。

これらの問題が重なると、このフェミニストのハッカースペースはなくなってしまう可能性も考えられるかもしれません。しかし、Wuschitz 氏は、オープンソースのハードウェアとソフトウェアを使用することに興味を持っている女性のための場所を大切に守っています。彼女は、寄付、外部からの資金提供、公的支援、そしてクリエイティブな思考によって、このスペースを存続させることができると考えています。

少し前までは、Wuschitz 氏や彼女のような人たちのためのスペースはほとんど存在しませんでした。だからこそ、彼女は自分で作りました。彼女の情熱、他の女性たちやアーティストに見られるインスピレーション、そして志を同じくする女性たちのサポートにより、彼女はフェミニストのためのハッキング、創造性、芸術的表現の場を守り続けており、そこでは誰一人として取り残されることはありません。

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「オープンソースとは何ですか」

Addie Wagenknecht 氏

「オープンソースとは、情報を共有し、情報に再現性をもたせることです。また、透明性でもあり、ライフスタイルでもあります。オープンソースに興味があるなら、それを実践する必要があります」

Wagenknecht 氏の作品を見る

Rianne Trujillo 氏

「私にとっては、共有できるということです。オープンソースによってテクノロジー、ソフトウェア、ツールの更新や変更を自由に行える点は重要です。共有すればするほど、無駄な労力が不要になります」

Trujillo 氏の作品を見る

Stefanie Wuschitz 氏

「オープンソースはクリエイティブなハッキングを可能にします。私にとってハッキングとは、物事を流用したり拡張したりして、再び共有することを条件に自分のものにするという幅広いプラクティスを意味します 」

Wuschitz 氏の作品を見る

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