オーストラリア最大のアルミニウム製錬業者である Tomago Aluminium は、本番環境のシステムを 24 時間年中無休で稼働させられるよう、安定性と信頼性に優れたインフラストラクチャと、IT のパフォーマンスを詳細に把握できる機能を必要としていました。大規模環境において可用性の維持と開発の効率化を実現するため、同社は Red Hat Ansible Automation Platform と IBM ハードウェアを活用しながら、SAP HANA® 環境を Red Hat Enterprise Linux for SAP Solutions に移行しました。旧環境よりも優れた制御性とパフォーマンス情報の可視性を得たことで、Tomago Aluminium はデプロイの効率化、サーバーフットプリントの統合、およびシステムとデータのセキュリティ強化を実現できました。
メリット
- 大規模環境で 24 時間年中無休の可用性を維持し、プロセスを最適化
- 自動化により開発を効率化
- サーバーフットプリントを統合し、インフラ関連コストを削減
- 問題の迅速な解決と制御性の向上でセキュリティを強化
ビジネスが要求するスピードでのイノベーションを支援する
1983 年の創業以来休まず稼働を続けている Tomago Aluminium はオーストラリア最大のアルミニウム製錬業者です。オーストラリア経済に対する同社の貢献額は 15 億豪ドルに上り、同社の製品の 90% 以上は世界各国の市場に輸出されています。
24 時間 365 日の常時稼働を維持するため、Tomago Aluminium の IT システムには高い信頼性と可用性が求められます。同社の IT チームは、生産に影響する問題が発生した際により迅速な対処ができるよう、プロセスの改善とデータアクセスの強化に取り組んでいます。同社では SAP HANA を使用してエンタープライズ・リソース・プランニング (ERP) および多数のビジネス・ウェアハウス・システム (プロジェクト管理プロセス、P2P ネットワーキング、健康/安全/人事リソースなど) をサポートしています。
「たとえば、当社では工場で使用する重要なパーツのスペアを大きな倉庫に保管しています。何かが破損あるいは摩耗した場合、迅速にパーツを交換してシステムを再稼働させなくてはなりません」と Dennis 氏は語ります。
同社は以前、マネージド型のパブリッククラウド環境で SAP HANA ワークロードを処理していました。しかしこのソリューションではパフォーマンスの詳細な把握ができず、システムの能力が限界に近づいたときに効果的な通知を受けることもできませんでした。さらに、当時のベンダーのサービス契約の下では営業時間内でしか開発業務が行われなかったため、イノベーションへの取り組みや、変化し続けるビジネスニーズへの迅速な対応に支障を来していました。当時のサービス契約の更新が近づいてきたとき、Tomago Aluminium は可用性を維持しながらアジリティの向上と複雑さの軽減を実現できるよう、ハイブリッドクラウド基盤の新しいパートナーを探すことを決断しました。
同社の IT 管理部長 Dennis Moncrieff 氏は語ります。「以前のパートナーはリスク回避の傾向が非常に高く、進歩やイノベーションの妨げとなっていました。また、稼働状況を把握できなかったため、改善のきっかけをつかむことすらできませんでした。しかし最終的には、我々がどれだけの制約を受けていたかに気づくことができました」
Red Hat と IBM のハイブリッドクラウド・ソリューションで SAP 運用を標準化
Tomago Aluminium の環境は単一拠点で稼働し、拠点拡大の予定もなかったことから、同社は当時パブリッククラウド上で稼働させていた SAP HANA アーキテクチャの移行先として、オンプレミスのプライベートクラウド・ソリューションを選びました。このソリューションは Red Hat ソフトウェアをベースとしており、IBM のサーバーとストレージハードウェア上で稼働します。
同社は複数のオペレーティングシステムを Red Hat Enterprise Linux for SAP Solutions へ統合しました。これは SAP ワークロードのための一貫した単一の基盤であり、以下のものが含まれます。
- Red Hat Enterprise Linux High Availability Add-On:アップタイムを増加
- Red Hat Smart Management:ライフサイクル管理
- Red Hat Insights:問題の特定と対策をプロアクティブに実施
- Update Services for SAP Solutions (更新サービス)
- 重大かつ重要なセキュリティ上の問題に対するインプレースアップグレードとライブパッチの適用
Tomago Aluminium はさらに Red Hat Ansible Automation Platform を導入して、テスト用仮想マシン (VM) の作成など、プロビジョニングと運用プロセスを自動化しました。
Dennis 氏は言います。「以前は Red Hat 環境と SUSE Linux 環境を使用していたのですが、社内には SUSE に詳しい者がいなかったのに加え、Red Hat のサポートのほうが優れていました。Red Hat のテクノロジーを基盤に据えることで、社内の担当者のスキルアップを図り、問題の解決やよりよいイノベーションの開発につなげられると考えました」
導入のサポートは Red Hat のパートナーである Advent One と SAPWORKS が行いました。Advent One は証明書に関する問題を調査し、新しいハードウェアとソフトウェアをわずか 6 日で実装しました。SAPWORKS は Tomago の SAP 環境の並行移行と関連テストを完了しました。
「パートナーシップはシームレスで、ソリューションの連携も完璧です。回復力のある安定したシステムを構築できたと確信しています。これはあらゆる組織にお勧めします。Advent One とのコラボレーションにより、本当に欲しかった IT 環境を作り上げることができました」と Dennis 氏は語ります。
効率的な統合インフラでプロセスとセキュリティを最適化
より大規模な本番環境で重要なシステムの可用性を維持する
IBM Power サーバー上で稼働する Red Hat Enterprise Linux for SAP Solutions で SAP HANA 環境を標準化することで、Tomago Aluminium では、より大規模な環境においても、重要なビジネスプロセスや本番環境のプロセスの常時稼働が可能となりました。
Red Hat Insights では、パフォーマンスと効率性の状況を 1 つのダッシュボードからわかりやすく把握できるので、可用性を維持しながら運用効率の向上にも役立ちます。
Dennis 氏は語ります。「以前は月次レポートが見られるだけでしたが、Red Hat Insights があればリアルタイムで状況を把握でき、プロセスに関してより適切な判断を行えるよう助けてくれます。たとえば、あまりにも低速なために週 1 回しか行っていなかったトランザクションがあるのですが、今ではそのプロセスの高速化を図るために必要な情報を見ることができます」
自動化により開発を効率化
Ansible Automation Platform と IBM PowerVM サーバー仮想化を連携させることで、Tomago は標準化された Playbook を使用し、プロビジョニングなどの繰り返される手動プロセスをより迅速に処理できるようになりました。
「Ansible Automation Platform で SAP HANA のデプロイなどのプロセスを自動化できるので、テスト環境用 VM のプロビジョニングを自動化することで、革新的な新機能の開発を加速できます」と Dennis 氏は語ります。
インフラ関連コストの削減
IBM POWER ハードウェア上で Red Hat ソフトウェアを実行する現在の Tomago Aluminium の環境では、過去にマネージドクラウド・ソリューションを使用していた頃よりも、サーバーの密度を高めることができています。その結果、サーバーのフットプリントを 32 CPU からわずか 8 CPU にまで集約することができ、その分の運用コストと電力コストが削減されました。
「私たちの目標は、インフラ関連コストを下げつつ、より効果的かつ効率的にビジネスを行えるようにすることです。Red Hat のおかげで、投資対効果を高めることができました」と Dennis 氏は述べています。