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人工知能 (AI) と機械学習 (ML) は、主要なトピックの 1 つとしてさまざまな業界で議論の的となっています。この増大するニーズに応えるために、IBM と Red Hat は、それぞれ IBM watsonx および Red Hat OpenShift AI といった革新的な製品の提供を発表しました。この記事では、世界の仕組みを変える可能性のある AI/ML 製品のデプロイに伴う変化の管理に役立つシンプルな戦略について説明します。

この記事は、Red Hatテクニカルアカウントマネージャー (TAM)の観点から記述されています。TAM は、Red Hat の技術的なトピックスに関するお客様への主要な連絡窓口という独自の役割を担っています 。ベストプラクティスについての Red Hat の擁護者であると共に、お客様のニーズを深く理解し、それらのニーズを Red Hat 内の戦略と連携させることができます。しかし、これは AI/ML に共通する不確実性を解決するものではありません。

Red Hat、IBM、AI エコシステム

IBM watsonx と OpenShift AI はどちらも AI/ML ワークフローをサポートしています。IBM の watsonx は AI の開発とデプロイを強化し、OpenShift AI はクラウド技術を使用して AI/ML ワークロードをデプロイし、管理します。

AI/MLは、これ以前に創り出された他の破壊的イノベーションと同様、将来を約束するものであるのと同時に不安を生み出す最新のテクノロジーです。一世代前には、インターネットによって、いつでもどこでもデータを自由に使えるようになりましたが、それは多くの業界に不安を生じさせました。現在、AI/ML によって何千もの人手によるタスクが自動化されるため、仕事が奪われるのではないかという恐れが根底に見られます。

革命型または変革型の変化

AI/ML は、多くの仕事を不要にする可能性があります。しかし、これまでの破壊的テクノロジーが示す傾向に沿う場合、AI/ML は根本的な世界的変化をもたらす一方で、多くの新しい仕事を生み出すことにもなるでしょう。このような変化は大きく分けると、革命/変革型と、進化型/適応型の 2 つに分類されます。

変革は、基礎的または根本的な変更を指します。根本的な転換とは、新しいテクノロジーが既存のテクノロジー、システム、またはプロセスを劇的に置き換えることを意味します。たとえば、Netflix などのストリーミング・プラットフォームがコンパクトディスク (CD)/デジタル多用途ディスク (DVD) などの物理メディアに取って代わることにより、Blockbuster のような物理的なビデオレンタル業界の多くの企業はいなくなりました。また、オンライン予約サービスが航空会社、レンタルカーおよびホテルなどの旅行代理店に置き換わった例もあります。

このように、変革的な変化は大規模で急速な変化です。一方、進化型の変化は、より反復的で段階的ですが、ビジネスのあり方にそれほど大きな破壊的な影響を与えるものではありません。

進化型または適応型の変化

進化型または適応型の変化では、トレンドのテクノロジーを活用して既存のプロセスやシステムを強化し、全体的な構造と目標を維持しながら効率と生産性を向上させます。たとえば、通信会社は 21 世紀初頭に VoIP (ボイスオーバー インターネット プロトコル) の提供を開始し、これらのサービスを古いテクノロジーと比べてはるかに低いコストで提供できるようにしました。同様に、デジタルバンキングは人々の財務管理方法を変革しました。Venmo、Zelle などのアプリやオンライン/モバイルバンキング・システムが、現金の送金や小切手の預け入れなどのルーチンタスクに取って代わりました。これにより、人々が専門的なサービスを受けるために銀行や金融機関に直接出向く回数が減りました。

通信および企業セクターをサポートする TAM として、私自身も、通信会社が Red Hat の AI 製品とソリューションをどのようにデプロイするのかについて考えることがよくあります。この業界は変革型または適応型の変化を経験するのでしょうか、またはその両方を組み合わせた変化を経験するのでしょうか。

Red Hat OpenShift AI と Red Hat Enterprise Linux (RHEL) AI は急速にその勢いを増しており、運用上の効率とサービスの提供を大幅に向上させる可能性のある高度な機能を提供しています。一方で、既存のテクノロジーを使い続ける上で慎重なアプローチを採用する通信会社もあります。

この慎重なアプローチをサポートするために、Red Hat は RHEL や OpenStack など、数多くの従来の IT 製品において、延長ライフサイクルサポート (ELS)フェーズを延長しています。慎重な通信会社は、これらの ELS 製品を基盤とした現在のデプロイメントを維持しようとされている様ですが、戦略的な決定を下す前には、競合他社が AI 対応テクノロジーをどのように実装しているかに細心の注意を払っています。

これまでのテクノロジー革命と同様に、AI の時代でうまく乗り切るには、このような新たな変化にうまく対応していく必要があります。

次のセクションでは、AI のデプロイと導入の拡大に伴い、変革型および適応型の変化を管理するための手法を紹介し、AI 時代の複雑性と機会に効果的に対応していくための実践的なステップを紹介します。

ADKAR による変化の管理

ADKAR は、個人や組織の変化を導くために使用できる一般的な変更管理モデルです。これは、組織の成功は各人の変化への適応能力に依存することを認識し、個人の移行を促進することの重要性を重視した、目標指向の構造化されたアプローチです。Prosci の創設者である Jeff Hiatt 氏が開発した ADKAR は、以下を表します。

  • A - Awareness(認知)
  • D - Desire(欲求)
  • K - Knowledge(知識)
  • A - Ability(能力)
  • R - Reinforcement(定着)

モデルの各コンポーネントは、変更の導入を成功させるために個人が達成する必要のあるステージまたはマイルストーンを表しています。ADKAR の長所は、その連続プロセスにあります。これにより、あるフェーズから次のフェーズへとスムーズに移行できます。たとえば、「Desire(欲求)」は、まず「Awareness(認知)」を高めずには生じません。同様に、「Knowledge(知識)」は「Desire(欲求)」なしに増えることはなく、「Ability(能力)」は「Knowledge(知識)」を獲得した後にのみ成長します。

ここでは、ADKAR モデルの各コンポーネントの概要と、個人や組織が AI を導入する際に変化をどのように管理できるかについての推奨を行います。

1.認知

目的:認知を高める目的は、テクノロジーと市場のダイナミクスにおける変化を認識し、それらの変化が各自の役割と組織にどのような影響を与えるかを明確にすることで、AI 時代で成功を収めるために必要な変化について理解することにあります。

アクション:

  • 主な質問に答えることで、AI/ML の関連性を理解する。
    • 現在の Red Hat 製品のデプロイメントの状況は?また、AI/ML 対応の製品はそのワークフローにどのように適合するか?
    • AI 導入で運用効率は向上するか?
    • 現在の AI 製品はビジネス目標、技術的な課題、顧客のニーズを満たすか?そうでない場合、対処する必要があるギャップとは何か?
  • 経営陣の通信内容を確認したり、Red Hat OpenShift AI や Red Hat Enterprise Linux (RHEL) AI に興味を持ったり、新しい機能やアプリケーションを調査するなどして、最新情報を入手する
  • Web セミナーやカンファレンスに参加するホワイトペーパーや記事を読んで、クラウド・コンピューティングにおける AI/ML の傾向と開発状況に関する最新情報を入手する。Institute of Electrical and Electronics Engineersなどの権威ある学術誌や、TechCrunch などの業界 Web サイトを確認することはとくに役立ちます
  • AI/ML が通信業界やその他の業界に与える影響などの業界トレンドを調査し、ユースケースを自動化やリソース管理などの運用面での改善に関連したユースケースを確認してビジネスへの影響を評価する

2.欲求

AI に対する強い認知は、AI/ML テクノロジーを学習して応用するための動機付けの自ずと強化します。

変化をサポートしたいという欲求を高めることで、個人やチームの目標をビジネス戦略と連携させ、プロセスやワークフローの効率化を実現し、収益の増加や個人のキャリアアップにつなげることができます。

アクション:

  • AI/ML 学習の明確な目標を定義する (対象分野のエキスパート (SME) になる、AI/ML を活用して OpenStack/OpenShift のデプロイメントを最適化するなど)
  • キャリアアップ、技術的な好奇心、顧客満足度などの動機付けとなる要因を特定する
  • AI/ML に情熱を傾けている同僚や業界エキスパートと交流し、モチベーションを維持する
  • 学習計画を、AI/ML の専門家になる、または将来の AI/ML プロジェクトをリードするなど、長期的なキャリア目標に合わせる
  • AI/ML コミュニティとユーザーグループを通じたネットワーク
  • エキスパートのアドバイスを受けて前進する

3.知識

ADKAR プロセスの知識には、適応に必要な情報や知識の獲得が関係し、変化を求める強い欲求がこのプロセスを推進します。

アクション:

  • AI/ML の基本および高度なトピックに関する技術ドキュメントを学習する (とくに OpenStack/OpenShift とクラウド・コンピューティングに特化した情報)
  • 関連するトレーニングクラス、Web セミナー、教育イベントに登録する
  • AI/ML の理解を深めるためのコース (RHOAI/AI267など) を受講する
  • エグゼクティブ、トレーニング、学習チームからの知見を評価して、知識のギャップを特定する
  • Red Hat 製品を使用した実用的な AI/ML アプリケーションの開発に焦点を当てたワークショップとブートキャンプに参加する

4.能力

能力は、変化に関連するタスクを実行し、新しい要件を実装するために獲得した知識を実際に適用することを指します。

アクション:

  • AI/ML 技術を適用して、特定の問題を解決したり、OpenShift/OpenStack 内のプロセスを最適化したりする
  • AI/ML プロジェクトで部門の壁を越えたチームと連携し、実践的な経験を積む
  • OpenStack/OpenShift での AI/ML の概念実証 (POC) プロジェクトを主導する、または参加する

5.定着

定着は、これらの変化をチームまたは企業の文化に組み込み、運用の永続的な部分とすることを意味します。

アクション:

  • チーム内で AI/ML に関する継続的な学習文化を醸成する
  • 成功事例と得られた教訓を文書化して共有する
  • AI/ML の効果をメトリクスを使って測定する
  • 共有ナレッジリポジトリなどのサポートシステムを確立し、トレーニング・リソースの最新情報を入手する
  • 進歩とマイルストーンについて認知し、表彰する

まとめ

ADKAR モデルを使用すると、お客様固有のユースケースに対する AI/ML の関連性を体系的に評価できます。このフレームワークは、AI/ML 手法とツールの戦略的な導入を支援します。AI/ML テクノロジーを習得し、認知から欲求、知識、能力、定着の段階を順に進んでいくことで、チームとエコシステムに影響を与える変化を促進するための包括的なアプローチを開発することができます。

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執筆者紹介

I joined Red Hat as an OpenStack Technical Account Manager (TAM) in August 2021. I have been in the technology industry for close to three decades, primarily working in the telco industry, starting with Nortel followed by Alcatel, which became Alcatel-Lucent in 2006! I have worked in various roles such as systems engineering, software development and maintenance, quality engineering, solutions architecture, and solutions support. I am passionate about strategic leadership, resolving challenges, innovation, leading by example and successfully impacting tangible and non-tangible business outcomes. As a TAM, I have learned to achieve results through team collaboration, communication and relationship building while leveraging team strengths and exercising independent judgment to create solutions, negotiate outcomes and make decisions.

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