AI/ML とは人工知能 (AI) と機械学習 (ML) のことです。コンピュータサイエンスとデータ処理における重要な進化を体現したものであり、幅広い業界に急速な変化をもたらしています。

企業やその他の組織がデジタル・トランスフォーメーションを進めるにつれて、膨大な量のデータに直面しています。これらのデータは、極めて大きな価値があると同時に、収集、処理、分析の負担がますます大きくなっています。収集される膨大な量のデータを管理し、マイニングによって有益な情報を引き出し、その知見に基づいて行動するには、新しいツールと方法論が必要です。

そこで役立つのが、人工知能と機械学習です。

人工知能とは

人工知能 (AI) とは一般に、人間の知性をシミュレート、つまり知覚、学習、問題解決などの認知機能を模倣できるプロセスとアルゴリズムを指します。機械学習とディープラーニング (DL) は AI のサブセットです。

AI の具体的な実用的用途としては、最新の Web 検索エンジン、話し言葉を理解するパーソナル・アシスタント・プログラム、自動運転車、および Spotify や Netflix で使用されているようなレコメンデーション・エンジンなどがあります。

AI には 4 つのレベル (タイプ) があります。そのうち 2 つは実現されていますが、2 つは現段階では理論上のものに留まります。

AI の 4 つのタイプ

AI の 4 つのタイプを単純なものから高度なものまで順に並べると、リアクティブマシン (reactive machines)、限定記憶 (limited memory)、心の理論 (theory of mind)、自己認識 (self-awareness) となります。

リアクティブマシンは、何らかの形式の入力に基づいて基本的な操作を実行できます。このレベルの AI では、「学習」は行われません。システムは特定のタスクまたは一連のタスクを実行するようにトレーニングされており、それから逸脱することはありません。純粋にリアクティブな (反応型の) マシンであり、入力を保存せず、特定のコンテキストの外で機能することも、時間の経過とともに進化することもありません。

リアクティブマシンの例としては、ほとんどのレコメンデーションエンジン、IBM のチェス用 AI ディープブルー、Google の AlphaGo AI (おそらく世界最高の囲碁プレーヤー) などがあります。

限定記憶 AI システムは、受信したデータと、それが行うアクションや意思決定に関するデータを保存し、保存されるデータを分析して時間の経過とともに改善することができます。学習には限定された記憶が必要であるため、「機械学習」はこのレベルから始まります。

限定記憶 AI は時間の経過とともに能力を高めていくことができるので、これが、これまでに開発された中で最も高度な AI です。実際の例としては、自動運転車、仮想音声アシスタント、チャットボットなどがあります。 

心の理論は、まだ到達されていない、より高度な (現時点では) 理論上の 2 つのタイプの AI のうちの 1 つです。このレベルの AI は人間の思考や感情を理解でき、有意義な方法で対話することも可能です。このレベルになると、人間と AI との関係は、現在のより低レベルな AI との間にある単純な一方向の関係ではなく、相互的なものになっています。

「心の理論」という用語は心理学に由来していて、人間には思考や感情があり、それらが AI の動作に影響を与えることを AI が理解していることを指します。

自己認識は多くの AI 開発者が最終的な目標と考えているレベルです。AI は人間レベルの意識を持ち、自分自身が人間と同様の欲求や感情を持つ世界の存在であると認識しています。現時点では、自己認識型 AI は純粋に SF の世界にとどまっています。

機械学習とは

機械学習 (ML) は AI のサブセットであり、AI (機械) が時間の経過とともに学習して成長する「限定記憶」のカテゴリに分類されます。

機械学習アルゴリズムにはさまざまな種類があり、主に教師あり学習 (supervised learning)、教師なし学習 (unsupervised learning)、強化学習 (reinforcement learning) の 3 種類があります。

3 種類の機械学習アルゴリズム

AI に複数のタイプがあるのと同様に、機械学習のタイプもそれぞれ複雑さが異なります。機械学習アルゴリズムには他にもいくつかの種類がありますが、ほとんどの場合、これらの主要な 3 つのアルゴリズムを組み合わせた (またはこれらに基づいた) ものです。

教師あり学習は最も単純で、名前のとおり、AI は学習プロセスの全体を通して教師からの能動的な指導を受けます。研究者またはデータサイエンティストは、処理して学習するための大量のデータと、そのデータから生成するべき結果のサンプル (正式には、それぞれ入力と望ましい出力と呼ばれる) をマシンに与えます。

教師あり学習を行うことで、新しい入力データに基づいて結果を予測できるエージェントが利用可能になります。マシンはこれらの予測を保存し、継続的に再分析することで学習を洗練させ続け、時間の経過とともに精度を向上させます。

教師あり機械学習のアプリケーションには、画像認識、メディア・レコメンデーション・システム、予測分析、スパム検出などがあります。

教師なし学習は、人間の介在なしで学習プロセスを行います。エージェントは分析用に大量のデータを受け取り、そのデータのパターンを個別に識別します。与えられたデータセットから人間よりも多くのさまざまなパターンを識別できるため、この種の分析は極めて有益です。教師あり機械学習と同様に、教師なし ML は時間の経過とともに学習し、能力を向上させていくことができます。

教師なし機械学習の応用例には、マーケティングデータ内の顧客セグメントの判別、医用画像、異常検出などがあります。

強化学習は、マシンをトレーニングするのにデータセットを使わないという点で、これら 3 つのアルゴリズムの中で最も複雑です。データを受け取る代わりに、エージェントは自らが置かれている環境と対話することで学習します。実行したアクションに基づいてプラスまたはマイナスの報酬を受け取り、プラスの報酬を最大化するように応答を洗練させることで時間の経過とともに能力を高めます。

強化学習の応用例には、自己改善型産業用ロボット、自動株式取引、高度なレコメンデーション・エンジン、広告費の最大活用のための入札最適化などがあります。

ディープラーニングとは

ディープラーニング (DL) は、人間のニューラルネットワークをエミュレートすることを試みる機械学習のサブセットであり、事前処理されたデータを必要としません。ディープラーニングのアルゴリズムは、人間の介入なしに、大量の非構造化データを取り込み、処理、分析して学習することができます。

他のタイプの機械学習と同様に、深層学習アルゴリズムも時間の経過とともに能力が向上します。

現在、ディープラーニングの実用的な応用例には、コンピュータービジョン、顔認識、自然言語処理の開発などがあります。

AI、機械学習、ディープラーニング

ディープラーニングは機械学習のサブセットであり、その機械学習は人工知能のサブセットです。では、これらの共通点と相違点は何でしょうか。

この関係は一般的に、AI を外側に、DL を中心に配置した同心円で示されます。

Figure 1.

上記のように、AI には 4 つのタイプがあり、そのうち 2 つは現時点では純粋に理論上のものです。このように、 人工知能は、人間の知性と思考をシミュレートするマシンを作るという、より大きく包括的な概念です。AI を構成するものの多くは現時点では実現されておらず、自己認識型の人工知能という最終目標は、現在の私たちの能力をはるかに超えています。

一方で、機械学習は「限定記憶」タイプの AI であり、現時点で可能かつ実用的な AI の使い方です。

概して、機械学習は依然として比較的単純であり、大多数の ML アルゴリズムには 1 つか 2 つの「レイヤー」 (入力レイヤーと出力レイヤーなど) しかなく、間に処理レイヤーはほとんどありません。機械学習モデルは時間の経過とともに能力を向上できますが、多くの場合、人間によるガイダンスと再トレーニングが必要です。

対照的に、ディープラーニングには複数のレイヤーがあり、この余分な「隠れた」処理レイヤーがディープラーニングという名前の由来となっています。ディープラーニング・アルゴリズムは本質的に自己学習型であり、アルゴリズムは自らの予測と結果を分析して精度を評価し、経時的に調整することができます。ディープラーニング・アルゴリズムは、独立した学習が可能です。

DL (ディープラーニング) は、人工ニューラルネットワークと呼ばれるものを構成する、階層化されたアルゴリズムを使用します。人間の脳のニューラルネットワークに着想を得てはいますが、当然のこととして、人間の脳のレベルにはほど遠いものです。とはいえ、これらは単純な ML モデルよりもはるかに高度であり、現時点で構築可能な最も先進的な AI システムです。

AI/ML が重要である理由

世界中で生成され、保存されるデータ量は指数関数的に増加しており、データがビジネス資産としての重要性を増していることは周知の事実です。もちろん、データを収集しても何もしなければ意味がありません。しかし、このような膨大な量のデータを管理するには、自動化されたシステムが必要です。

人工知能、機械学習、およびディープラーニングは、組織が収集した大量のデータから価値を抽出し、ビジネス知見を提供し、タスクを自動化し、システム機能を高度化する手段を提供します。AI/ML には、次のような測定可能な成果の達成を支援することで、ビジネスのあらゆる側面を変革できる可能性があります。

  • 顧客満足度の向上

  • 差別化されたサービスの提供

  • 既存ビジネスサービスの最適化

  • ビジネス運用の自動化

  • 収益の増加

  • コストの削減

AI/ML の例とユースケース

これらはもちろん、どれも素晴らしいことですが、抽象的で具体性に欠けると思われるかもしれません。そのため、これから業界を変革するために AI/ML が実際に使用されているユースケースと例を見てみましょう。

医療

AI/ML は医療分野で使用され、臨床効率の向上、診断の速度と精度の向上、患者の予後の向上が実現しています。

HCA Healthcare は、患者の生命を脅かす状態である敗血症を機械学習によって迅速かつ正確に検出できるリアルタイム予測分析製品 SPOT (Sepsis Prediction and Optimization of Therapy) を開発して Red Hat イノベーション賞を受賞しました。

通信

通信業界では、顧客行動に関するインサイトの取得、カスタマーエクスペリエンスの向上、5G ネットワーク・パフォーマンスの最適化などを目的とした機械学習の活用が増えています。

事実、Red Hat が 2021 年初頭に公開した「エンタープライズ向けオープンソースの現状」レポートによると、エンタープライズ向けオープンソースを AI/ML 用途で使用している通信会社は、現在はわずか 37% ですが、今後 2 年以内に導入する予定の会社は 66% に上ると予想されています。

保険

保険業界では、請求処理の自動化や、利用ベースの保険サービスの提供など、さまざまな方法で AI/ML が使用されています。

保険会社の大多数は、幅広い市場でサービスを差別化するための鍵はコアシステムのモダナイゼーションであり、その取り組みの一環として機械学習を取り入れていく必要があると考えています。

金融サービス

金融サービス企業も同様に AI/ML を使用して、カスタマーサービスのパーソナライズ、リスク分析の改善、不正行為やマネーロンダリングの検出の向上などといった、サービスのモダナイズと改善を行っています

金融機関が対処しなければならないデータ量は増え続けており、機械学習の機能によって不正検出モデルがより堅牢になり、銀行サービスの処理を最適化することが期待されています。

自動車

自動車業界は、電気自動車や自動運転車、予知保全モデルの登場など、業界全体に見られるさまざまな破壊的革新のトレンドにより、過去数年間で大きな変化と激動の渦を巻き起こしてきました。

そしてもちろん、AI/ML はこの変革の大きな部分を占めています。たとえば、BMW Group の自動運転車イニシアチブでは AI/ML が極めて重要な役割を担っています。

エネルギー

世界中のエネルギープロバイダーも、業界の変革の真っ只中にあり、エネルギーの生成、貯蔵、供給、使用の新しい方法によって競争環境が変化しています。さらに、世界的な気候変動への懸念、市場を牽引する要因、テクノロジーの進歩も、状況を大きく変化させました。

エネルギーセクターではすでに AI/ML を使用して、インテリジェントな発電所の開発、消費とコストの最適化、予測メンテナンスモデルの開発、現場の運用と安全性の最適化、エネルギー取引の改善が行われています。

AI/ML を使い始める

AI/ML が強力な変革をもたらすテクノロジーであり、あらゆる業界に多大な価値をもたらすものであることは明らかですが、導入するのは非常に難しく思えます。

幸いなことに、導入は小さく始めることができます。AI/ML は多額の先行投資を行わなくても導入できるので、貴社におかれましても、小規模で管理しやすいところで実際に試してみて、AI/ML からどのようなメリットを得られるかを検討してください。

詳細については、13 のポイントでロードマップを解説した、AI/ML 活用のプロセスを開始する方法についての記事をご覧ください。

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