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2018年春、Red Hatとマサチューセッツ・オープンクラウド(MOC)、およびボストン小児病院の新生児神経画像処理・発達科学センター(FNNDSC)は、ChRIS Research Integration Systemの更なる開発・展開に向けて連携していくことを発表しました。ChRISはもともとFNNDSCのアドバンスト・コンピューティング・グループ(ACG)によって開発されたもので、MRIやCTスキャンなどの高度な医療画像解析を最前線で行い、より良い臨床医療のための情報提供を目的としたシステムです。本システムは、Red HatのOpenShiftとOpenStack上で構築されています。以来、ChRISは強力で汎用性の高いオープンソースの分散型データ/計算プラットフォームへと進化してきました。

ChRISとは?

「ChRIS」は、データを用いた計算をコンテナ上で行うサービスの集合体として構成されたプラットフォームの名称です。ChRISにはCUBEと呼ばれるPython Djangoベースのコアがあり、REST APIの提供やユーザー管理、データ追跡、他サービスとの連携を行います。複数の補助的なマイクロサービスが、全体の調整やデータの入出力、計算処理の管理を行います。ChRISとその部品はコンテナ化されており、コンテナがサポートされている様々な環境にデプロイすることができます。ChRISの中心となる考え方は、どこでもどのようなデータでも処理を実行でき、アプリケーション開発者への参入障壁を下げることです。

ChRISの機能単位は、実際の作業を実施する「アプリ」(またはプラグイン)です。また、開発者が自身のプラグインを公開して、任意のChRISインスタンスにデプロイできるプロトタイプのChRISストアもあります。新しいプラグイン開発者への参入障壁を下げることに非常に注力しており、場合によっては僅かな手順でスタンドアロンのアプリケーションをChRISのプラグインに変換することができます。

ChRISを使って動作する現在のバッチアプリのほとんどは、神経MRI解析、脳画像の再構築、トラクトグラフィー、AI/ML、セグメンテーション等、ChRIS本来の神経放射線に関する用途を強く反映していますが、実際はかなり汎用性が高く、ゲノム解析から電子カルテのテキスト処理、さらには買い物リストの高速処理まで、用途ごとのアプリがあれば何にでも応用することができます。

ChRISのプラグインは、スタンドアロンのLinuxコンテナであり、これらのプラグインはプラットフォーム上で簡単に連結することで、強力な実行スタックを構成することができます。このように、ChRISは多くのモジュールを組み合わせて様々な状況で再利用を可能にするというUNIXの哲学を守っています。ChRISは、単一のワークフロー内の処理であっても、様々な計算プラットフォームやバックエンドで、データと計算処理のチェーンを構築することができます。

同じワークフローの一部を、ローカルコンピュータで動作させたり、インプレミスのクラスタで実行したり、また、別の部品はクラウドプロバイダー上で動作させることもできます。ChRISは真にハイブリッドな計算プラットフォームであり、特定の計算処理の部品やデータをローカルなリソースに隔離する一方、その他の計算処理やデータはパブリッククラウドで実行させることができます。

ChRISは、成熟したウェブベースのユーザーフレンドリーなPatternFlyのインタフェースを備えており、アルゴリズムの開発者を含む技術志向のユーザーのみならず、臨床医や放射線技師、生命科学の研究者など非技術系のユーザーによる利用も想定しています。リファレンスのUIは、業界標準だけでなく新しいJavaScriptライブラリを利用して医療画像を可視化することができ、任意のデータに対するワークフローを構築できるドラッグアンドドロップ機能が備わっています。

ChRISは、特にワークフローの構築など、様々な医療関連の計算処理やテーマに関する臨床医や研究者の知見の交換を目的として、共同で使いやすいプラットフォームとなるよう設計されています。

Red Hatや他社との連携に関する新着情報

Red Had、MOC、そしてFNNDSCが2018年に協業して以降、ChRISは急速に発展し、新たなユースケースが着実に増えてきています。最もタイムリーで重要なユースケースの一つが、胸部画像を用いたコロナウィルス感染への診断支援です。

カナダのオンタリオ州ウォータールーにある新興企業DarwinAIとウォータールー大学が、胸部CT画像からコロナウィルス感染の可能性を検知する、ニューラルネットワークモデルとPythonプログラムからなるCOVID-Net・オープンソース・イニシアティブを構築しました。COVID-Netは、GitHubアクセス、Pythonへの熟知、Jupyter Notebook、コマンドラインの知識等、おそらく最前線の医師にとっては専門的すぎる高度なスキルが要求されます。

これこそが、Red HatそしてChRISを活用しているボストン小児病院が活躍するポイントです。ChRISプラットフォームは、このようなプロジェクトの展開を支援するため、カスタマイズが可能な仕様になっており、ChRISプラットフォームを使用してCOVID-Netを最前線に展開する目的でイニシアティブが形成されました。作業は2020年初夏に開始し、数日のうちにCOVID-Netのバックエンドパイプラインは複数のChRISプラグインとして完全にコンテナ化されました。このことは、既存の複雑な計算をChRISにプラグインとして組み込むことがどれほど簡単かを証明しています。

画像解析し、結果を確認することを目的とする臨床ユーザーにとって最適なエクスペリエンスを実現するため、胸部CT画像の解析とコロナウィルスへの感染確率のレポートに注力したわかりやすいUIの開発をひと夏掛けて着実に進めてきました。

Red HatとFNNDSCはDarwin AIと密に協力して、モダンで見やすいUIエクスペリエンスの迅速な設計、構築、展開を実現するため、ここでもPatternflyを使用して、ユーザーインタフェースを開発してきました。COVID-NetのUIは、コロナウィルスのワークフローに焦点を当てており、ChRISのメインUIから独立していますが、相互に排他的ではありません。ChRISのCOVID-NetのUIは、医師が明確なエンドユーザーであることを念頭に置いています。

このChRISのCOVIDイニシアティブから実用可能なバージョンが展開されれば、大量の症例から迅速かつ確実に、そして簡単に重傷者を識別できると期待されています。根本的に重要なことは、この全体のイニシアティブがオープンソースであり、オープンアクセスな特性を持っているということです。

オープンであることにより、臨床医、科学者、研究者、更には患者自身もワークフローの各ステップを研究、調査することができ、計算がどのように実行されるかテストし、結果を検証することができます。理論的には、どこの場所にいる医師でも適切な画像をChRISインスタンスにアップロードし、ワークフローを実行することで、推論結果を得ることができますが、このワークフローは確立された臨床プロトコルとガイドラインに関して、情報提供と補足を目的としていることに注意する必要があります。つまり、これは診断ツールではなく、そのように使うべきものでもないということです。

Red Hatとボストン小児病院、そしてDarwinAIは、今日の最大規模の感染拡大に対処するため、連携してオープンソース技術を活用する重要性を理解しています。複数のチームが協力して行う業務は、いつの時代でも非常に重要であり、今後はさらに重要となってきます。オープンな技術は、複雑な問題を理解し、そのソリューションを生み出すために欠くことのできないものであり、オープンであることとコラボレーションが最適なソリューションを作り上げることができると理解しています。

Darwin AIとウォータールー大学が主導している研究の詳細にについては、最新のプレスリリースをご覧ください。

ChRISプロジェクトへの参加方法およびプロジェクトに関する詳細情報は、こちらをご覧ください


執筆者紹介

Dr. Rudolph Pienaar completed a Bachelors and Masters in Electrical, Electronic, and Computer Engineering at the University of Pretoria in South Africa. He also holds a Doctorate in Biomedical Engineering from Cleveland State University/Cleveland Clinic Foundation, where he conducted research in Reinforcement Learning applied to musculo-skeletal bio-mechanical control systems. He completed postdoctoral work at the Massachusetts General Hospital, where he was an assistant in Medical Imaging. He is currently faculty in Radiology at Boston Children's Hospital and an assistant professor in Radiology at Harvard Medical School. 

Dr. Pienaar's research interests include brain surface feature analysis, tractography-from-an-informatics perspective, cloud computing, image visualization, and system design. At the Fetal Neonatal Neuroimaging and Developmental Science Center at Boston Children's Hospital, he leads the Advanced Computing Group, responsible for the developing new informatics infrastructure solutions to clinical problems. He is the main technical lead on ChRIS.

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