無線アクセスネットワーク (RAN)
オープン RAN は、通信サービスプロバイダーのネットワーク内で使用される RAN テクノロジーの進化の総称です。仮想化、マイクロサービス、およびコンテナベースのテクノロジーの使用のほか、オープン・インタフェースの使用を指す場合があります。
オープン RAN とは何かを見ていく前に、まず無線アクセスネットワーク (RAN) について説明します。
RAN は無線通信システムの一部です。アンテナ、無線ユニット、およびコントローラーを備えた基地局で構成されます。この基地局は、携帯電話、コンピュータ、または遠隔制御されるマシンなどのデバイスを、無線リンクを介してネットワークの他の部分に接続します。デバイスが RAN に接続されているときに、デバイスのトラフィック (音声、データ、動画) をサービスプロバイダーのコアネットワーク (CN) に送信するのが基地局の役目です。
基本的な RAN 基地局は次の要素で構成されます。
- アンテナ:電気信号を電波に変換します。
- 無線ユニット:デジタル情報を無線で送信される信号に変換し、必要な電力レベルで正しい周波数帯域で送信されるようにします。
- コントローラー:一連の信号処理機能を提供します。通常は、ソフトウェアとカスタム電子機器を併用して無線通信を可能にします。コントローラーは、基地局をサービスプロバイダーの CN に接続します。
RAN の進化
安定した環境を促進する通信標準を継続的に開発するため、第 3 世代パートナーシップ・プロジェクト (3GPP) は、リリース 15 仕様の一部として RAN を次の 3 つの主要セクションに分離またはディスアグリゲーションしました。
- 無線ユニット (RU)
- 分散ユニット (DU)
- 集中ユニット (CU)
RU はアンテナに組み込むことも、アンテナの隣に配置することもできます。DU と CU は、ネットワークを介してデジタル信号を送信する、コンピューティングを行う部分です。分離またはディスアグリゲーションにより、DU は RU の近くに、CU は CN の近くに配置できるようになっています。この分離またはディスアグリゲーションされた RAN は、依然として単一ベンダーによるアプローチのみに対応しています。
O-RAN Alliance が導入したオープン RAN モデルは、とりわけ、RU と DU 間のオープン・フロントホール・インタフェースを特徴としており、マルチベンダー RAN モデルの可能性をもたらします。
以前は、RAN の設計方法が原因で、さまざまなベンダーのさまざまな要素を取り入れた RAN ソリューションを見つけるのが非常に困難でした。
RAN のディスアグリゲーション、クラウド化、オープン RAN の導入はオープンソースの考え方に基づいており、サービスプロバイダーが独自の環境やニーズに合わせてさまざまなベンダーからさまざまな要素 (RU、DU、CU) を選択することが可能になります。5G ネットワークでは RAN の複雑さと規模が大幅に増大するため、この種のソリューションの柔軟性は、無線通信ネットワークの次世代のイノベーションにとって不可欠です。
Red Hat のリソース
RAN の進化に関連する重要な用語
RAN の進化に伴い、さまざまな標準、テクノロジー、アーキテクチャについて説明するさまざまな用語が使用されるようになっています。仮想化 RAN (vRAN) とクラウド RAN は、RAN に対する 2 つの類似したアプローチですが、概念的なアプローチが若干異なります。
vRAN とクラウド RAN
- vRAN は、RAN ソフトウェアを基盤となるハードウェアから分離することを主眼としており、RAN の要素をハードウェアではなくソフトウェアとして実行します。しかし、この仮想化は、vRAN が O-RAN 仕様に準拠していることを必ずしも意味するものではなく、また、異なるベンダーのコンポーネントを組み合わせて使用できるわけでもありません。
- クラウド RAN は、マイクロサービスやコンテナベースのテクノロジーを含むクラウドネイティブ・テクノロジーと、DU と CU のワークロードをホストするクラウド・プラットフォームを使用して構築される vRAN です。クラウド RAN も、必ずしも O-RAN 仕様に準拠しているわけではなく、また、異なるベンダーのコンポーネントを組み合わせて使用できるわけでもありません。
オープン RAN、O-RAN、OpenRAN
オープン RAN、O-RAN、OpenRAN は、しばしば同じ意味で使用されますが、実際には異なるものを意味します。
- オープン RAN は、業界の動きのほか、サービスプロバイダーのネットワーク内のオープン RAN テクノロジーおよびアーキテクチャを指す総称です。
- O-RAN は、O-RAN Alliance とそこで定義される標準を指します。この標準は新しいオープン・インタフェースとプロファイルを定義して 3GPP 仕様を補完します。
- OpenRAN は、Telecom Infra Project (TIP) によって開始されたプロジェクトで、3GPP および O-RAN Alliance 仕様からの知見が組み込まれています。
主要な組織は O-RAN Alliance で、ここが RAN アーキテクチャのオープン・インタフェースを定義しています。O-RAN の目標は、分離またはディスアグリゲーションされたコンポーネントを WG1 から WG9 までの異なるワーキンググループ (WG) に定義することです。ソリューションがオープン RAN に準拠していると言う場合、多くは O-RAN に準拠していることを意味しており、ほとんどのオープン RAN ソリューションは O-RAN 標準に従っています。
vRAN とクラウド RAN がオープン RAN でない場合の問題
vRAN、クラウド RAN、O-RAN 認定のオープン RAN の違いを気にするべき理由は何でしょうか。それは、オープンではないクラウド RAN や vRAN に投資すると、組織のネットワークが 5G への進化に対応できるだけの柔軟性を得られない可能性があるからです。
O-RAN 認定のオープン RAN を使用する最大の利点には、ベンダーの多様性を促進できること、チョークポイントを軽減するツールを得られること、ネットワークの各側面により適したソリューションを見つけられることがあります。
ベンダーの多様性
単一ベンダーですべてを行おうとするアプローチはどこかで行き詰まる可能性があります。RAN ソリューションは、プロプライエタリーである、相互運用できない、O-RAN に準拠していない、あるいは構築しようとしているネットワークに適していない場合があります。
チョークポイント
一部のベンダーの vRAN システムやクラウド RAN システムは複数の要素を一組としてまとめたものから構築されている場合があり、それらの要素がディスアグリゲーションされていたとしても、実際のシナリオに適用するとチョークポイントや非効率性が多数生じる可能性があります。
クラス最高のソリューション
ディスアグリゲーションされたコンポーネントを使用してネットワークを構築する場合、最も効率的なものにするには各 RAN コンポーネントでクラス最高のソリューションを使用します。しかし、そのネットワークに最適な RU ソリューションを作っている組織が最適な CU ソリューションを作っているとは限らず、それどころか CU ソリューションには全くかかわっていないことさえあります。
O-RAN 仕様を満たすように構築されたオープン RAN ネットワークを使用していれば、ネットワークの各部分に最適なソリューションを選択でき、単一のベンダーからパッケージ全体を取得する必要がなくなります。
5G ネットワーク
では、ディスアグリゲーションされたネットワーク・コンポーネントでそのような効率性をすべて得られるようにすることが重要な理由は何でしょうか。それは、5G ネットワークは非常に複雑であり、大規模に構築され、莫大な帯域幅だけでなく揺るぎない信頼性も要求されるからです。
5G に基づく次世代のイノベーションでは、ミリ秒単位で測定されるネットワーク応答時間が求められるため、ネットワークのあらゆる部分が最高のパフォーマンスで機能する必要があります。
オープン RAN における Red Hat の役割
Red Hat は、オープン RAN のアーキテクチャとモデルを支持し続けます。
RAN の進化は、複数の RAN 機能をサポートでき、サービスプロバイダーのネットワーク全体に及ぶクラウド・プラットフォームに大きく依存しています。Red Hat は、オープン RAN の要件に適合し、コアからエッジまでネットワーク全体にシームレスに拡張できるクラウドネイティブのネットワーク機能が構築されるように、包括的なエンタープライズ向け Kubernetes プラットフォームの Red Hat® OpenShift® を進化させることに重点を置いています。
Red Hat OpenShift は、サービスプロバイダーがクラウドの経済性から最大限のメリットを享受し、新しいサービスをより迅速に提供できるように支援します。Red Hat OpenShift は、GitOps フレームワークを使用したゼロタッチのデプロイメントと運用により、総所有コスト (TCO) を削減するシンプルなワークフローを通じてサービスプロバイダーの運用を最適化します。
これは選択の自由を確保する Red Hat の広範なパートナーエコシステムと連携して機能するため、サービスプロバイダーは自身のニーズに応じてさまざまなベンダーからソフトウェア機能とハードウェアを選択できます。
Red Hat OpenShift 以外でも、Red Hat は標準を形成する組織やプロ ジェクトへの参加を通してオープン RAN に携わっていきます。Red Hat は、10 の O-RAN Alliance ワーキンググループのうち 6 つの進捗状況の監視を支援しており、また、Telecom Infra Project (TIP) オープン RAN と連携して、オープン・コンピューティング・ハードウェアの導入を加速する取り組みにも力を貸しています。
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