ライブマイグレーションとは
ライブマイグレーションは、仮想マシン (VM) へのアクセスを中断することなく、VM をあるホストから別のホストに移動するプロセスです。古い VM を一時停止してから新しい VM を起動するまでの時間が短いため、移行中のサービスの中断を回避できます。ライブマイグレーションは、計画的なメンテナンスなどの状況で、またはワークロードリソースのバランスを取るために使用されます。ライブマイグレーションでは、VM メモリー、ネットワーク接続、およびストレージをクラスタ内の新しい宛先に転送します。
VM 移行の種類
仮想マシンの移行の種類は複数ありますが、最も一般的なのはライブマイグレーションとコールドマイグレーションの 2 つです。
ライブ (ホット) マイグレーション
このタイプの移行では、メモリーページが宛先ホストに転送されている間も、VM がソースホストマシン上で稼働し続けます。移行がほぼ完了すると VM はごく短時間一時停止し、その後、宛先ホスト上で再開します。ライブマイグレーションでは VM をシャットダウンする必要がないため、ダウンタイムは最小限に抑えられるか、ほとんど感知されません。これは、常時稼働を必要とする VM に適した選択肢です。ただし、入出力負荷 (I/O 負荷) が高い VM のように、VM でのメモリーページの変更速度が転送速度を上回る場合は、コールドマイグレーションを使用する必要があります。
コールドマイグレーション
このタイプの移行は、非ライブマイグレーションととらえることもできます。稼働中の VM をシャットダウンしてから、ソースホストから宛先ホストに移行します。VM をシャットダウンしている間にその構成とメモリーを宛先ホストにコピーし、その後 VM を新しいホストで再開します。そのためダウンタイムが発生し、システムが一時的に利用できなくなったり、操作できなくなったりします。しかし、これは信頼性に優れた移行プロセスであり、メモリー負荷の高い VM に適した選択肢です。
ウォームマイグレーション
このタイプの移行では、VM の実行中に事前コピー段階で VM データの大部分をコピーすることで、ダウンタイムを短縮します。カットオーバー段階で VM を停止し、残りのデータをコピーします。
Red Hat のリソース
VM を移行する理由
VM の移行は次のことに役立ちます。
- 負荷分散:ホストが過負荷になった場合や十分に活用されていないホストが他にある場合は、VM を使用率の低いホストマシンに移動できます。負荷分散により、VM の容量とネットワーク・パフォーマンスを向上させることができます。
- ハードウェア非依存性:ハードウェア非依存性はハイパーバイザーによって促進されます。ハイパーバイザーはオペレーティングシステム (OS) とリソースを VM から分離します。VM は分離された環境として稼働するため、特定のハードウェアに依存しません。多くの場合、ダウンタイムを発生させることなく VM をあるハードウェアから別のハードウェアに移行できます。(ただしこれには、ある CPU アーキテクチャから別の CPU アーキテクチャに切り替える場合など、いくつかの制限があります。)
- 省エネルギー:VM を他のホストに再分配し、アンロードされたホストシステムの電源をオフにすることで、使用率が低い時間帯にエネルギーを節約し、コストを削減できます。
- 地理的移行:レイテンシーを短縮するため、またはフォールトトレランスや障害復旧のバランス調整などの理由で必要な場合に、VM を別の物理的な場所に移動できます。
よく知られている VM ライブマイグレーション・ツール
一般的な仮想化プラットフォームにはライブマイグレーション・ツールが含まれています。これらのテクノロジーには次のようなものがあります。
Red Hat® OpenShift® Virtualization ライブマイグレーション:KubeVirt プロジェクトに基づく OpenShift Virtualization にはライブマイグレーション・ツールが組み込まれています。ライブマイグレーションは、OpenShift クラスタ内のあるノードから別のノードに仮想マシンを移動します。
VMware vSphere vMotion:vSphere vMotion は VMware のライブマイグレーション・プロセスで、ダウンタイムを生じさせずに、実行中の VM をある物理サーバーから別の物理サーバーに移動します。
Microsoft Windows Server の Hyper-V:Windows Server の Hyper-V 機能であるライブマイグレーションにより、VM をある Hyper-V ホストから別の Hyper-V ホストに移動できます。
Nutanix:Nutanix AHV のライブマイグレーション機能により、選択したホストに利用可能なリソースがある場合、ゲスト VM をある AHV ホストから別の AHV ホストまたはクラスタに移動できます。
ライブマイグレーションの詳細なプロセス
ライブマイグレーションの実行には複数のステップがあります。そのステップはプラットフォームやユースケースによって異なる場合がありますが、ライブマイグレーションの目的は同じです。OpenShift Virtualization がライブマイグレーションを完了するまでのステップを以下に示します。
ステップ 1:準備
ソースノードが VM を移行用に準備し、クラスタレベルに存在するスケジューラー (この場合は OpenShift スケジューラー) が目的の宛先ノードを選択します。ライブマイグレーションは共有ストレージに依存するため、VM イメージの保存時にソースと宛先の両方が同時に同じストレージにマウントまたはアクセスします。
ステップ 2:要求
次に、ソースノードは宛先ノードへの移行要求を開始します。宛先ノードは VM イメージの読み込みを開始し、正しいコンテナサイズを確保します。このステップでは、VM リソースを 2 つの環境間で再分配し、中断することなく実行できるようにする仮想化プラットフォームも必要です。利用できるリソースがない場合も、VM は影響を受けることなくソースノードで稼働し続けます。
ステップ 3:転送
ハイパーバイザー (VM を作成して実行するソフトウェア) が、ソースノードから宛先にメモリーをコピーします。どちらのノードにも一時停止された VM のコピーがありますが、障害が発生した場合でも移行を続行できるように、ソースノードがメインノードと見なされます。
ステップ 4:終了
転送が行われると、宛先ノードは、OS イメージを受信し、移行トランザクションを実行したことをソースノードに通知します。これで、宛先ノードがプライマリーノードになり、ソースノードは元の VM を終了できます。
ステップ 5:完了
新しいプライマリーノードが確立すると、ライブマイグレーションが完了します。移行された VM は宛先ノードで実行され、操作は通常どおり続行できます。
Red Hat のライブマイグレーションのサポートを選ぶ理由
Red Hat の VM および仮想化ソリューションのポートフォリオは、ライブマイグレーションのプロセスをサポートできます。
Red Hat® OpenShift® Virtualization は従来の仮想マシンを移行するための統一されたスケーラブルなプラットフォームを提供します。Red Hat OpenShift の機能の 1 つである Red Hat OpenShift Virtualization により、コンテナのワークロードとともに仮想マシンのワークロードを実行および管理できるようになります。Red Hat OpenShift Virtualization を使用すると、これまで投資してきた仮想化テクノロジーを引き続き活用しつつ、Red Hat OpenShift のクラウドネイティブツールによって組織独自のペースでモダナイズを進めることができます。VM をコンテナとともに単一のプラットフォーム上にデプロイして管理できます。さらに、仮想化移行ツールキットを使用すると、現在の仮想化ソリューションから既存のワークロードを移行できます。仮想化移行ツールキットにより、仮想マシン上で実行されているワークロードにアクセスできるとともに、新しいクラウドネイティブ・アプリケーションの開発が可能になります。
Red Hat Ansible Automation Platform によって VM とそれを取り囲む IT インフラストラクチャのオーケストレーションを自動化することで、大規模な移行を加速できます。Red Hat OpenShift Virtualization と Red Hat Ansible Automation Platform を併用すると、 VM の移行が高速化され、仮想化環境の管理、運用、モダナイゼーションが容易になります。また、人的エラーの可能性が減り、移行と継続的な VM ワークロード管理全体の一貫性が向上します。
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