Red Hat の OpenJDK ビルド

概要

全世界で Java™ を実行しているデバイスは、推定 150 億台にのぼります。2019 年 1 月まで、最新の Java 仮想マシン (JVM) は無料で利用できました。しかし、Oracle はリリース頻度とサポートモデルを大幅に変更しました。本番ワークロードおよびパッチ用 Oracle JDK の無料提供終了に伴い、組織は、Oracle に料金を支払い Oracle JDK の製品サポートおよび更新を継続するか、OpenJDK を導入して 6 カ月ごとにアップグレードするか、もしくは代替となる OpenJDK 実装に移行するかの選択を迫られています。

Java 開発者の 70% が Oracle JDK JVM を使用しているため、Java コミュニティへの影響は極めて大きなものになります。Red Hat® の OpenJDK ビルドは、無償で利用できる Java Platform, Standard Edition (Java SE) のオープンソース実装です。これは Oracle JDK に代わる選択肢であり、組織は移行作業にほとんど、あるいはまったく労力を割くことなく、Java 環境を長期的に安定化および標準化できるようになります。

メリット

Red Hat の OpenJDK ビルドには、多くの機能とメリットがあります。

表 1. メリット

メリット 説明
オープンソース・イノベーション Red Hat は OpenJDK 運営委員会のメンバーであり、(Oracle に次ぐ) 第 2 のコントリビューターです。
コスト削減 OpenJDK のサポートは、Red Hat Enterprise Linux®、Red Hat Middleware、および Red Hat Application Runtimes のサブスクリプションに含まれています。スタンドアローンの Windows サブスクリプションも購入できます。
マルチプラットフォーム・サポート OpenJDK は Red Hat Enterprise Linux と緊密に統合されており、Windows でサポートされています。

アプリケーション管理
OpenJDK は、Java アプリケーションの管理、監視、プロファイリング、トラブルシューティングのためのツールスイートである Mission Control1 を内包しており、メモリリーク、デッドロックなどのアプリケーションの動作を理解するのに役立ちます。
長期サポート Red Hat は、OpenJDK バージョン 7、8、および 11 の長期サポートを提供しています。サポート期間は、特定のバージョンの Red Hat Enterprise Linux に主要なバージョンの OpenJDK が最初に導入されてから 6 年間、または、基盤となるバージョンの Red Hat Enterprise Linux のサポート終了日のいずれか早い方までです。
頻繁なリリース Red Hat は、OpenJDK 8 および 11 ディストリビューション向けに、年 4 回の更新と随時セキュリティ修正を提供します。

ライフサイクルサポート

Red Hat が提供する OpenJDK のディストリビューションはすべて、あらゆる Java ワークロードの開発および実稼働向けにサポートされています。このため、Windows または Linux ベースの環境での開発、テスト、およびデプロイを安心して行うことができます。JRE2 および JDK ディストリビューションは、rpm および zip ファイルで提供されます。Red Hat は、OpenJDK 8 および 11 ディストリビューション向けに、約 3 カ月おきに年 4 回の更新を提供します。

表 2. Red Hat Enterprise Linux のサポート対象バージョンとライフサイクル期間

OpenJDK バージョン Red Hat Enterprise Linux 5 Red Hat Enterprise Linux 6 Red Hat Enterprise Linux 7 Red Hat Enterprise Linux 8 サポート終了
6 (1.6) 5.3 6.0 7.0 -- 2016 年 12 月
7 (1.7) 5.9 6.3 7.0 -- 2020 年 6 月
8 (1.8) -- 6.6 7.1 8.0 2023 年 6 月
11 -- -- 7.6 8.0 2024 年 10 月

表 3. Windows のサポート対象バージョンとライフサイクル期間

OpenJDK
バージョン
Windows Server
2012 R2
Windows Server
2016
Windows 7、
8、10
サポート終了
8 (1.8) 2018 年 8 月 2018 年 8 月 2018 年 12 月 2023 年 6 月
11 2018 年 10 月 2018 年 10 月 2018 年 12 月 2024 年 10 月

利用権

Red Hat の OpenJDK ビルドに対するサポートは、以下のサブスクリプションに含まれているか、追加が可能です。

  • Red Hat Enterprise Linux
  • Red Hat Middleware
  • Red Hat Application Runtimes
  • Red Hat の Windows 向け OpenJDK ビルド (Red Hat Middleware 以外のすべての Java ワークロード用)

Oracle JDK に代わる選択肢

OpenJDK と Oracle JDK は、どちらも同じ Java SE 仕様の実装です。2017 年、Oracle は、Oracle JDK と OpenJDK に互換性を持たせることを目標に、それまでオープンソース化されていなかった Java SE ツールのオープンソース化に取り組みました。まだいくつか小さな違いはありますが、現在では OpenJDK 11 と Oracle JDK 11 は機能的に同等のものとなっています。これらのビルドは、商用バージョンの Java SE Advanced で別途提供されるいくつかの機能 (Advanced Management Console など) を除いてほぼ同じです。

Red Hat の OpenJDK ビルドも、OpenJDK プロジェクトからベースライン化されています。Red Hat が行う追加作業はすべて、OpenJDK コミュニティで最初に実装されます。つまり、お客様は認定済みの OpenJDK ディストリビューションでアプリケーションを実行できるのです。Red Hat のビルドは、Oracle の Java Technology Compatibility Kit (TCK) に合格しており、Java 仕様に準拠していることが保証されています。

Red Hat の OpenJDK ビルドの製品化プロセス

Red Hat は、OpenJDK の製品版である Red Hat の OpenJDK ビルドにフルサポートを提供しています。サポートには、脆弱性の開示、セキュリティ通知および修正、サービスレベル契約などが含まれます。

 

イメージコンテナ 図 1. OpenJDK の製品化プロセス

 

Red Hat の製品化プロセスには、機能の開発、セキュリティ、テスト、デプロイメント・アーティファクトの作成、製品統合、ドキュメント作成などの作業が含まれます。Red Hat はオープンソース・コミュニティに全力でコミットしており、OpenJDK プロジェクトの (Oracle に次ぐ) 第 2 の主要コントリビューターでもあります。Red Hat は長年にわたって多くのソリューションを実証し、製品化作業の大部分を OpenJDK のアップストリーム・プロジェクトに提供しています。

長期にわたる OpenJDK との協力関係

Red Hat と OpenJDK の関係は 2007 年までさかのぼります。これは、Red Hat が OpenJDK コミュニティにコントリビューションを行った初の主要なソフトウェアベンダーとなった年です。また、Red Hat は OpenJDK 運営委員会のメンバーでもありOracle のリーダーシップを引き継いで以降は、OpenJDK 8 および OpenJDK 11 プロジェクトの保守役を務めます。

 

イメージコンテナ 図 2. OpenJDK での Red Hat のリーダーシップ

Red Hat は OpenJDK 11 の Mission Control を配布しており、OpenJDK 8 のサポートに取り組んでいます。

JRE ディストリビューションは、バージョン 1.8 でのみ利用可能です。JRE は、バージョン 1.11 では個別にインストールされなくなりました。