概要
IoT では大量のデータが生成され、それを使用できるようにするためには処理と分析が必要です。エッジ・コンピューティングは、コンピューティング・サービスをエンドユーザーや IoT デバイスなどのデータソースの近くに配置します。
これにより、データセンターやクラウドにデータを送り返すのではなく、デバイスが配置されているエッジで IoT データを収集して処理し、パターンを特定して、予知保全のための異常検出などのアクションをより迅速に開始できます。
データをリアルタイムですばやく分析する手段として、IoT デバイスでコンピュート能力を利用できることがますます重要になっています。
IoT およびエッジコンピューティングとは
IoT (モノのインターネット) は、物理的なモノをインターネットに接続するプロセスのことです。IoT とは、人手を介することなく、ネットワーク上でデータを送受信する物理 IoT デバイスまたはハードウェアの何らかのシステムを指します。
IoT デバイスには、電球などの一般的な家庭用品から医療機器などの医療資産、ウェアラブルデバイス、スマートデバイス、さらにはスマートシティの信号機に至るまで、あらゆるものがあります。
通常、IoT システムは、データの送信、受信、分析をフィードバックループで継続的に行うことで機能しています。人間または人工知能と機械学習 (AI/ML) のいずれかが、リアルタイムまたは長期にわたって分析を実施します。
エッジコンピューティングとは、ユーザーやデータソースに物理的に近い場所で演算処理を行うコンピューティングのことです。これにより、待ち時間が短縮され、帯域幅が節約されます。
コンピューティング・サービスをこれらの場所の近くに配置することで、ユーザーのエクスペリエンスは向上し、より高速で信頼性の高いサービスによるメリットを得られます。一方、企業は、レイテンシーによる影響を受けやすいアプリケーションをより適切にサポートすることが可能になり、AI/ML 分析などのテクノロジーを使用して傾向を特定し、より優れた製品とサービスを提供できるというメリットがあります。
エッジコンピューティングは、企業がリソースの共通プールを使用して多数の場所に分散する方法の 1 つであり、増加するデバイスとデータのニーズを満たすために中央のインフラストラクチャを拡張するのに役立ちます。
IoT ゲートウェイは、エッジからクラウド、中央データセンター、またはローカルで処理されるエッジシステムにデータを送信できます。
IoT とエッジの関係
物理デバイスまたはデータソースが実際に存在する場所により近いところでコンピュート能力を使えれば、IoT にとってはメリットになります。IoT センサーおよびデバイスが生成するデータをすばやく分析して、反応の迅速化や問題の緩和のために使えるようにするには、中央サイトに送信してから分析するのではなく、エッジで分析する必要があります。
エッジコンピューティングは、IoT デバイスのデータおよびコンピューティングのニーズに対応する処理とストレージのローカルソースであり、IoT デバイスとそれらのデバイスが接続されている中央の IT ネットワークの間の通信の待ち時間を短縮します。
エッジ・コンピューティングがなければ、IoT はネットワーク接続と、クラウドあるいはデータセンターからのコンピューティング・サービスに依存することになります。IoT デバイスとクラウドの間でデータを送受信すると、応答時間が遅くなり、運用効率が低下する可能性があります。
エッジコンピューティングは、低速のセルラー接続またはサテライト接続を介して大量のデータを送信するために必要なネットワーク帯域幅や、ネットワーク接続が失われた場合でもシステムがオフラインで動作し続ける能力など、他の問題に対処するのにも役立ちます。
エッジコンピューティングを使用すると、接続している IoT デバイスが作成する大量のデータからメリットを得られます。分析アルゴリズムと機械学習モデルをエッジにデプロイすることで、データ処理をローカルで実行して、迅速な意思決定に使用できます。また、エッジコンピューティングでは、データを集約してから中央サイトに送信して、さらに処理したり、長期間保存したりすることもできます。
エッジコンピューティングとクラウド・コンピューティング
クラウド・コンピューティング・モデルでは、コンピュートリソースとサービスは多くの場合、大規模データセンターで一元管理されます。クラウドは、多くの場合、IoT デバイスをインターネットに接続するために必要なネットワーク・インフラストラクチャの一部を提供します。
エッジデバイスは、デバイスと、一元化された場所にあるデータベースの間の通信を容易にするために、何らかのネットワーク接続を必要とします。そのネットワーク接続は通常、クラウドによって提供されます。
クラウドによって提供される通信は、エッジデバイスからクラウドを越えてデータセンターにデータを転送するだけの場合もあれば、データストレージ、データ処理、またはビッグデータ分析のために、行った決定のログをデータセンターに送り返すエッジデバイスの場合もあります。
IoT デバイスとエッジデバイスの違い
エッジデバイスは、ネットワークの先端部分 (エッジ) に設置されているリモートの物理ハードウェアであり、ネットワークの他の部分からの支援をほとんど必要とすることなくほぼリアルタイムでデータを収集、操作、処理するのに十分なメモリー、処理能力、およびコンピューティング・リソースを備えています。
IoT デバイスは、インターネットに接続された物理オブジェクトであり、データのソースです。エッジデバイスは、データが収集および処理される場所です。
オブジェクトが少ない待ち時間で決定を行い、ミリ秒単位でデータを処理するのに十分なストレージとコンピュート能力を備えている場合、エッジデバイスは IoT の一部と見なすことができます。
IoT デバイスおよびエッジデバイスという用語は、同じ意味で使用されることがあります。
IoT の実例
一般に、「スマート〇〇」と呼ばれるものは IoT を意味します。IoT の例には次のようなものがあります。
- 自動運転車
- スマートサーモスタット
- スマートホーム
- バーチャルリアリティと拡張現実
- スマートシティ
- インダストリアル IoT
- スマートウォッチ
IoT とエッジコンピューティングのユースケース
インダストリアル IoT (IIoT) は、工場の機械など、産業における IoT の使用を指します。工場で使用される重機のライフサイクルのことを考えてみてください。運用し続ける間に多くの人が使用し、さまざまな負荷を与えます。この機器はいつか故障することが想定されています。
IoT センサーは、故障や疲労の可能性が最も高い機械の部品に追加することができます。これらのセンサーからのデータを分析して予知保全に使用できるため、全体的なダウンタイムが削減されます。
自動運転車は、IoT とエッジ・コンピューティングの連携が必要となるユースケースの一例です。道路を走行する自動運転車は、自車のシステムを監視しつつ、同時に交通、歩行者、道路標識、停止信号に関するリアルタイムデータを収集して処理しなくてはなりません。
事故を回避するために車両をすばやく停止したり、車両の方向を変えたりする必要がある場合、車両とクラウドの間でデータを送受信して処理するのには時間がかかりすぎます。
エッジコンピューティングは、車両にクラウド・コンピューティング・サービスをもたらし、車両内の IoT センサーがデータをローカルでリアルタイムに処理して事故を回避できるようにします。
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Red Hat のエッジコンピューティング・ソリューションは、プロビジョニング、管理、オーケストレーションの自動化により、運用を単純化することを重視しています。ワークロードの各種ニーズ (コンピュート、ストレージ、ネットワーク) のそれぞれに対応できる共通インフラストラクチャの構築を支援します。
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