概要
確約利用料 (Committed Spend) とは、ソフトウエアまたはクラウドプロバイダーが、一定期間内に特定金額以上の利用を確約する顧客に対し、各種クラウドサービスを割引価格で提供する契約形態を指します。確約利用料は、顧客が特定の期間内に購入することに同意した製品やサービスの価額を表す用語として、多くの業界で使用されており、合意した金額を支払うという顧客の約束と引き換えに、販売者は対象となる製品、テクノロジー、またはサービスを割引価格で提供します。
クラウド業界では、顧客がオンデマンドで使用または消費するリソースの量に応じてクラウドプロバイダーが請求する場合があるため、確約利用料は「クラウド費用」、「クラウドコミット」、「確約使用」、「消費コミットメント」などと呼ばれる場合もあります。Red Hat、Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、IBM Cloud、Google Cloud などの主要なソフトウェアプロバイダーやクラウドサービスプロバイダーは、長期利用の顧客に対する見返りとして、確約利用料や確約利用割引を提供しています。
対象基準と契約の詳細はクラウドプロバイダーによって異なりますが、ほとんどすべてのプログラムに、年間または複数年の契約期間と、クラウドの支出と使用状況に関する月次または年次報告の要件があります。また、顧客は、契約期間終了時点で使用されていない残りの契約分についても所定の金額を支払う義務があります。
確約利用料を活用するべき理由
確約利用料契約によって、企業は予算を最大限に活用し、既存のサブスクリプションやオンデマンド価格設定モデルでは通常利用できない競争力の高い取引を活用することができます。また、確約利用料契約は個々の顧客のニーズに最適なものになるようにカスタマイズできます。
顧客が確約利用料契約を結ぶと、支出額に応じた割引料金でソフトウェアやその他のサービスを利用できます。つまり、契約期間中の支出額が多いほど、全体の割引が大きくなります。また、確約利用料プログラムでは、確約額の一部を前払いした顧客がより高い割引枠を利用できるようにする特典も提供されます。
確約利用料割引は年間サブスクリプションとオンデマンド価格設定の両方に適用される場合があるため、使用中のクラウド・インフラストラクチャとワークロードに最適なソフトウェアとサービスを組み合わせて、さらなる価値を引き出すことができます。この戦略により、多くの顧客はクラウド・コンピューティングの柔軟性を活用して過剰支出とシェルフウェア (クラウドリソースのニーズが月ごとに変動することから年間または長期のサブスクリプションが十分に活用されず、未使用のまま放置されるソフトウェアのこと) を削減できます。
クラウド費用のオプション
多くの大手クラウドサービスプロバイダーは、それぞれのマーケットプレイスを通じて購入されるソリューションに対して確約利用料割引を提供しています。各社独自の製品に加えて、Red Hat® Enterprise Linux®、Red Hat OpenShift®、Red Hat Ansible® Automation Platform などの Red Hat 製品をクラウドマーケットプレイスから購入し、顧客のクラウド費用を活用することもできます。
すでにクラウドのユーザーである場合、あるいは IT インフラストラクチャの一部または全部をパブリッククラウドに移行するプロセスを開始したばかりの場合、以下に挙げられているような確約利用料プログラムを使用することで、消費量を節約したり、クラウドマーケットプレイスからサードパーティベンダーのソリューションを直接購入したりすることができます。
Amazon Web Services Enterprise Discount Program (AWS EDP):
AWS EDP プログラムは、1 - 5 年の期間で高額の支出を確約する顧客に確約利用割引を提供することで、長期的なパートナーシップを奨励するものです。AWS EDP の割引は合計支出額に応じて拡大し、AWS 確約利用料の支出期間が長いほど AWS の消費量と対象製品に対する割引額が増大します。
対象となる顧客は通常、AWS のサービスに年間 100 万ドル以上を投じてきており、契約期間中はそれと同じくらいか、それ以上の支出を予定しています。
Microsoft Azure Consumption Commitment (MACC):
MACC プログラムは、Azure の消費量と Azure コンソールまたはマーケットプレイスで入手できるソフトウェアに特定の金額を支出することを確約する企業に、Azure 確約割引を提供します。MACC 対象のオファーには従量課金制とサブスクリプション価格の両方が含まれており、マイクロソフトからコンソールを通じて購入するか、サードパーティベンダーから Azure Marketplace を通じて入手することができます。一部の Red Hat ソリューションでは、合計支出額を削減できます。
- Azure 上の Red Hat Enterprise Linux on Azure
- Red Hat Ansible Automation Platform on Azure
- Microsoft Azure Red Hat OpenShift
Google Cloud Committed Use Discount (GCP CUD):
Google Cloud の支出額ベースの CUD は、契約期間中に製品またはサービスに特定の金額を支出することを確約する場合に割引を提供します。支出額ベースの CUD は、サービスに応じて特定のリージョン内での使用またはすべてのリージョンでの使用のいずれかに提供されます。顧客には、サービスを全額利用したかどうかに関係なく、支出契約に応じて割引を適用した月額料金が請求されます。契約期間は 1 年間または 3 年間で、割引は契約期間内に購入した製品とサービスにのみ適用されます。対象製品には、Red Hat Enterprise Linux、Red Hat Ansible Automation Platform、Red Hat OpenShift が含まれます。
- Google Cloud 上の Red Hat Enterprise Linux
- Google Cloud 上の Red Hat Ansible Automation Platform
- Google Cloud 上の Red Hat OpenShift on Google Cloud
IBM Cloud Enterprise Savings Plan:
IBM Cloud Enterprise Savings Plan では、設定された契約期間中に IBM Cloud サービスに特定の金額を支出することを確約し、対象となる購入で割引を受けることができます。Enterprise Savings Plan アカウントを持っている顧客は、最初の契約を超えた超過消費や、契約期間終了後に発生したサービスに対する割引も受けられます。
Red Hat の Hybrid Committed Spend プログラム (HCS) とは
クラウドサービスプロバイダーはリソースと消費量に対して確約割引を提供しますが、Red Hat は Red Hat 製品の調達に対して確約割引を提供します。IT インフラストラクチャの一部または全部をパブリッククラウドに移行中の場合でも、オンプレミスの従量制のサービスを検討している場合でも、Red Hat は、お客様がどのソリューションを選択しても企業のクラウド投資を最大限に活用できるようにします。Red Hat の Hybrid Committed Spend プログラムは、必要なときに必要な場所で Red Hat 製品を購入し、デプロイできる柔軟性を提供します。Red Hat から直接購入することも、クラウドマーケットプレイスを通じて購入することもでき、Red Hat への合計支出額に基づいてボリュームディスカウントを受けることができます。
Red Hat やクラウドマーケットプレイスを通じて調達したサブスクリプションと毎月のオンデマンド購入を組み合わせて、合計支出額を削減することもできます。つまり、クラウドプロバイダーの確約利用料契約と Red Hat Hybrid Committed Spend の両方に対して、クラウドマーケットプレイスやコンソールで Red Hat 製品の調達を「二重に」使用することができます。これにより、ビジネスに最適なクラウド・ソリューションを選択できると同時に、クラウド関連予算から最大限の価値を引き出すことができます。